3年ほど前のメンズ再始動から、マネキンに洋服を着せたプレゼンテーション、モデルが舞台をグルグルと歩くミニショーとスケールを徐々に拡張してきた「フェンディ(FENDI)」が、久しぶりにランウェイショーを開催した。
コレクションは、「フェンディ」のアイデンティティでもあるファーと、最近磨きをかける技術革新とクラフツマンシップ、それにキャッチー&シュールの全てを盛り込んだ、今シーズンのベスト。特に幾何学模様にインスパイアされ、ファーを寄木細工のようにはめ込むことでデザインを描くカプセルコレクション「バッグ バグス」を効果的に用い、メンズで台頭する「カワイイ」系の世界にも潜入。「マルニ」や「カルヴェン」「ケンゾー」、フィレンツェで全貌をお披露目した「ヌメロ ヴェントゥーノ」などがけん引する世界観に、ゴージャスでポップ、そしてちょっぴりシュールというアイデンティティで殴り込んだような印象を受ける。
ショーは、ファーとニットをニードルパンチで横方向につなげたプルオーバーから幕を開けた。序盤は最新技術の応用をふんだんに見せつけ、まるで複数の生地をパッチワークしたような模様を織りで描くツイードや、チェックのライナーをボンディングしたマッキントッシュ風のギャバジンなどで今シーズン広がりを見せるAラインのシルエットを描いた。「フェンディ」のITバッグである「セレリア」のステッチワークを取りこんだレザーのブルゾンもある。
そこに、時々加えたのが「バグス コレクション」のアクセサリーなどだ。様々な色をパーツに切り出し、それをつなげることでデザインを描く「バグス コレクション」は、たとえばポンポン付きのキャップやシャーリングのブルゾン、もしくはドクターズバッグのようなアクセサリーのライナーなどに登場。毛足の長いゴージャスなファーだけでは得ることのできない親近感を与えてくれる。
ニードルパンチで描いたおぼろげなチェック柄、ピリング加工で表現した凹凸、そしてダウンで作ったビッグボリュームのモッズコートなど、今シーズンのトレンドもほとんど全てが詰まっている。久々のランウェイでいきなりポールポジションを獲得したような印象だ。