沖縄は野菜やフルーツにとっては非常に過酷な環境だ。強い紫外線や海風にさらされることはもちろん、沖縄本島北部では赤土が特長の〝国頭マージ″、南部では石灰岩土壌である〝島尻マージ″など、場所によって土壌環境が異なることや、保肥力に乏しい土壌が多いことも挙げられる。
ただ、そんな厳しい環境下にあるからこそ、ここで栽培される野菜には非常に高い栄養価があることも事実。ゴーヤーや紅芋、島ラッキョウなどは全国的にも有名だが、そのような島野菜が強い紫外線や厳しい暑さにも負けない、強く健康的な肌や身体を育んできた。そこで今回は初心者でも取り入れやすい、沖縄産のスーパーフードをピックアップ。温州みかんの10倍のポリフェノールをもつ柑橘類「シークワーサー」と、森のミルクと呼ばれるほど栄養価が高い植物「モリンガ」を紹介する。
シークワーサーのパウダー状にした“スーパーフルーツパウダー(シークワーサー)”を発売しているのは、国産オーガニックコスメや食品を扱っているブランド「フルーツルーツ(FRUITS ROOTS)」だ。全国各地の無農薬フルーツを厳選しているが、県内では北部・大宜味村にある自然栽培のシークワーサーを採用している。
その栄養価について生産農家の石垣和樹Reスタート沖縄 生産企画部長は「シークワーサーは琉球大学やOIST(沖縄科学技術大学院大学)の論文により、レモンやカボスよりビタミンCが豊富。さらに、さまざまな健康効果が期待できるポリフェノール、ノビルチンが温州みかんの10倍も含まれていることが判明しています。また、大宜味村は長寿の村と呼ばれていますが、シークワーサーは長寿食の一つとして、昔からよく食されています。いまでも刺身と食べるときに、醤油とシークワーサーで食べたり、喉がイガイガするときに果汁を飲んだりと重宝されています」。
こちらの農園では無農薬はもちろん、肥料にも薬品を使わない自然栽培ながら、さらなる栄養価を引き出すために、原子状炭素水を活用している。「原子状炭素水は酸性土壌の還元化や水質浄化作用があり、野菜やフルーツの生育が良くなります。さらに果皮が強く厚くなることから、虫が噛みにくくなり害虫被害が減りました。このように自然農法を発展させることで、より健康効果の高い野菜やフルーツを育んでいます」。
続いて、栄養価の高さと多様な用途から「生命の木」とも呼ばれているモリンガを「自然栽培 モリンガティー」として発売しているのが、国産オーガニックブランドの「アムリターラ(AMRITARA)」。沖縄県南部・南風原(はえばる)町の自然栽培モリンガを採用している。そのきっかけとなったのが、「モリンガファームさんご園芸」を主宰する赤嶺彰弘さんとの出会い。
「赤嶺さんはもともと観葉植物を扱っていたそうなのですが、3人の孫がアトピーで悩んでいたことから自然栽培の野菜を育て始めたと。ただ、沖縄は赤土の土壌でどんな農作物も栽培するのは大変と言われていましたが、〝奇跡のリンゴ″で知られる木村明則さんの講演会の話を参考にしたところ、モリンガ栽培が順調に進捗したそうで。現在は広大な農園を営んでいらっしゃいます」(勝田小百合アムリターラ代表)。
その後、モリンガを取り入れた食生活を続けたことにより、3人の孫のアトピー症状が落ち着いたという。「そんな話に感銘を受けて、『アムリターラ』でもお茶として取り扱わせていただくことになりました」。
モリンガはプルーンの82倍の鉄分、牛乳の16倍のカルシウム、さらにアミノ酸、ベータカロテンなど90種もの栄養素を含有しており、国際連合でも飢餓を救う食物として摂取が推奨されているほど。ただ、自然栽培では除草剤も使えないため、除草作業も手作業で行わなければならず、広大な畑を何週間もかけて手入れしていくという。手間も時間もかかるが、だからこそ土壌菌が作物を生き生きと育ててくれる。「自然栽培は作物の可能性をいかんなく引き出してくれます。沖縄の赤土は作物にとってはいわば〝断食状態″になるかもしれませんが、そのぶん生命力は強くなるはず。その力をアンチエイジング効果として私たちは活用したいと考えています」。
モリンガ、シークワーサーともに深く濃い緑色の葉や果皮が印象的だが、それは植物色素により強烈な紫外線から自らを守るためであり、それゆえに抗酸化力が強くなると考えられている。いずれも亜熱帯性の植物だがこれらの植物がすくすく育つのは、沖縄は亜熱帯気候で真冬でも10℃以下にはならないから。そう考えると、沖縄がスーパーフードの宝庫といわれることにも合点がいく。今後、他の食材も取り上げていくが、まずはこのモリンガとシークワーサーから、沖縄スーパーフードの美力を体感してほしい。