2025年に「開業する主な商業施設」と「閉店する主な商業施設」を紹介する。2020年に山手線の新駅として誕生した高輪ゲートウェイ駅には、JR東日本グループが総力を上げて開発した新しい街「高輪ゲートウェイシティ」が完成し、中核の商業施設として「ニュウマン高輪」が開業する。一方、新宿駅で長年親しまれてきた「新宿ミロード」が再開発に伴い閉店する。
「松本パルコ」が閉店(2月28日)
長野県松本市の松本パルコは1984年8月にオープンした。商圏の若者の支持を集め、96年には増床も行っていた。店舗面積は2.2万平方メートル。だが、後発のショッピングセンターとの競合激化もあって売上高は後退していた。ピークである97年度の約95億円に対し、直近の23年度は40億円と全国のパルコの中で最小規模だった。
松本市では後述する井上百貨店も閉店を控える。また1月13日にはイトーヨーカドーの南松本店も閉店する。大型の商業施設が相次いで3店も閉店するため、関連する離職者は210人以上と報道されている。ハローワーク松本では従業員を対象にした就職面接会を開くなど対策を講じる。
「新宿ミロード」が閉店(3月16日)
小田急電鉄の子会社・小田急SCディベロップメントが運営する新宿ミロードは、「新宿駅西口地区再開発計画」の着工に伴って閉館する。小田急新宿駅直結で、甲州街道から見上げた際の台形のシルエットが印象的な新宿ミロードは1984年に開業。20歳前後の若者ファッションに強いファッションビルだった。
新宿駅西口地区再開発計画は小田急電鉄、東京メトロ、東急不動産による大型プロジェクトで、22年秋に閉店した小田急百貨店本館はA区、新宿ミロードはB区に位置する。新宿ミロードでは先行してモザイク通りと2階店舗の営業を23年3月に終了している。跡地に29年竣工予定の商業施設の詳細は明らかになっていないが、新宿ミロードのノウハウを生かすことを予定している。
「グラングリーン大阪 ショップ&レストラン 南館」が開業(3月21日)
大阪・梅田の再開発エリア「うめきた」に、新しい施設「グラングリーン大阪 南館」がオープンする。南館の店舗面積は1.6万平方メートル。ファッション関連ではカフェ併設の「ロンハーマン」、国内最大規模の「CFCL」のほか、「ナイキ」「ザラ」「カフェキツネ」「マーガレット・ハウエル ショップ アンド カフェ」などが入る。ショップ&レストランとは別に南館では、宿泊施設「ホテル阪急グランレスパイア大阪」、都市型スパ「うめきた温泉 蓮 ウェルビーイング パーク」も話題だ。またヒルトンの最上級ホテル「ウォルドーフ・アストリア」が日本に初上陸する・
グラングリーン大阪は三菱地所、オリックス不動産、積水ハウス、阪急電鉄など9事業者が参画し、官民連携で進められてきたプロジェクト。緑とイノベーションの融合拠点をまち作りの目標として掲げる。24年9月には先行してグラングリーン大阪の北館とうめきた公園の一部が開業した。野球場ほどの広さがある芝生広場は、梅田にはなかった開放感のある緑の空間として市民の憩いの場になっている。
「ミナモア」が開業(3月24日)
JR西日本グループの中国SC開発が広島駅に新しい駅ビルを開く。地下1階から地上7階の店舗面積2.5万平方メートルに約185店舗が出店する。「ユナイテッドアローズ」「ジェラート ピケ」「イル ビゾンテ」「アーバンリサーチ」「無印良品」「ラグタグ」「ユニクロ」などのファッション関連も充実している。
施設名には瀬戸内海を表す「ミナモ(水面)」と、「ミナ(みんな)」が「モア(もっと)」好きな場所になるという意味を込めた。
「ニュウマン高輪」が一部開業(3月27日)
JR東日本グループが約6000億円を投じて開発する「高輪ゲートウェイシティ」(東京都港区)は、車両基地の跡の広大な敷地に商業、オフィス、住宅、ホテル、文化などの機能を持った新しい街を作る巨大プロジェクトだ。2020年に誕生した山手線・高輪ゲートウェイ駅に直結する。高輪ゲートウェイシティは品川駅からも程近いため、新幹線や羽田空港など国内外からの来街者を見込む。グローバルに開かれた最先端の街を目指している。
その商業部分を担うのが、ルミネが運営する「ニュウマン高輪」だ。店舗面積は6万平方メートルで、ニュウマン新宿やニュウマン横浜を上回り、ニュウマンとしては最大になる。3月の一部先行開業、秋、来年春の3段階に分けてオープンし、ファッションや飲食を中心にあわせて約200店舗が出店する見通し。現時点でテナントの顔ぶれは明らかになっていない。車両基地跡にできる新しい街だけに商業地としてのポテンシャルは未知数だが、ファッション企業だけでも新宿や横浜に負けない顔ぶれになると言われている。高輪ゲートウェイシティが全面開業すれば1日に約10万人が訪れる場所になる。
「井上百貨店」が閉店(3月31日)
松本駅前で営業する地場の百貨店、井上百貨店が閉店する。呉服店として1885年に創業し、百貨店に業態転換してからは県内の商業施設では初のエスカレーターを設置するなど、松本市民にとっては何世代にもわたり親しまれてきた百貨店だった。いったん閉店し、新しいショッピングセンターとしての再出発を目指す。
「三井ショッピングパーク ららぽーと安城」が開業(4月)
名古屋市から南東に30kmの安城市(愛知県)に三井不動産のららぽーとが開業する。愛知県内のららぽーとは、名古屋みなとアクルス(2018年開業)、愛知東郷(20年開業)に続く3つ施設目だ。
店舗面積6万平方メートルに約210店舗が入る。大規模な店舗としてはスーパー「西友」、愛知県生まれの総合アミューズメント会社「コロナワールド」が出店する。3階には18店舗で構成するフードコート、飲食店13店舗を集積したレストランフロアができる。
「ワンビル」が開業(4月24日)
福岡市の大規模再開発プロジェクト「天神ビッグバン」の一環として、天神の福岡ビル、天神コア、天神ビブレの跡地に「ワン・フクオカ・ビルディング」が開業する。西日本鉄道が開発・運営し、通称を「ワンビル」と名づけた。地上19階・地下4階の建物のうち、地下2階から地上5階までが商業施設になる。店舗面積は1.6万平方メートルで、約120店が入る。
「シャネル」の3フロア構成の大型ブティックのほか、カフェ併設の「メゾンキツネ」や「ナイキ」「スノーピーク」、そして東京・青山の「スパイラルガーデン」がカフェ併設で九州に初進出する。1階には24年2月末に閉店したコンチネンタルカフェロイヤルの後継店として、「THE CONTINENTAL ROYAL&Goh」が入る。天神地下街と直結する地下1階の飲食ゾーン「天神のれん街」(7店舗・425席)、フードコート「IITO TENJIN」(6店舗・380席)も話題だ。
「三井アウトレットパーク岡崎」が開業(秋)
4月のららぽーと安城に続き、愛知県に同じ三井不動産による「三井アウトレットパーク岡崎」が開業する。店舗面積約5万平方メートルに、海外ブランドからスポーツ・アウトドア、キッズまで、バラエティー豊かな約170店舗が入る。東名、新東名および国道1号線などから近く、広域からのアクセスに優れ、名古屋鉄道本線・本宿駅からも徒歩圏内のため、多くの集客が見込める。三井不動産にとっては、三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島(三重県桑名市)に続く、東海エリア2施設目のアウトレットモールになる。
番外編:西武池袋本店リニューアル・グランドオープン(夏)
夏に予定されている西武池袋本店のリニューアル・グランドオープンは、改装ではあるものの売り場は全面的に刷新される。大手百貨店の戦略転換として注目度が高い。百貨店区画の面積は従来の約半分の4.8万平方メートルに縮小し、ラグジュアリーブランド、化粧品、食品の3カテゴリー中心の店舗に生まれ変わる。親会社の米投資会社フォートレス・インベストメントグループの主導のもと、残りの約半分の区画はヨドバシカメラに変わる。
品ぞろえも空間演出も高級感を追求し、個々のブランドの世界観を表現できる旗艦店に力を入れる。改装前は消化仕入れとテナント契約の割合が7対3だったが、改装後は3対7へと逆転する。