ビジネス
連載 齊藤孝浩の業界のミカタ 第69回

ナイキ、最高益の裏に潜む成長のゆがみ DtoC戦略の功罪を探る

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企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回はスポーツ企業最大手ナイキの財務諸表を読み解く。(この記事はWWDJAPAN」2025年1月13日号からの抜粋です)

今回は2024年10月にCEOが交代したナイキ(NIKE)を分析します。前期24年5月期はかろうじて微増収微増益。25年5月期の上半期に至っては2ケタ近い減収となり、24年10月、デジタル戦略を推進してきたジョン・ドナホーCEOが5年弱で退任し、ナイキ生え抜きのエリオット・ヒル氏が後任に就きました。この交代劇の背景には、表面的な好決算と成長鈍化という、相反する状況が存在していたようです。

24年5月期の業績は、一見順調に映ります。売上高8兆円、営業利益1兆円と過去最高を記録し、営業利益率も13%を維持。過去10年間の年平均成長率は6.3%と、安定成長を続けてきました。買収による成長を遂げるLVMHや、2ケタ成長を続ける「ザラ(ZARA)」(インディテックス)、「ユニクロ(UNIQLO)」(ファーストリテイリング)と比べれば控えめな数字ですが、純粋な事業成長としては評価できる水準ではないでしょうか?

ナイキ連結 販路別売上高の推移

しかし、25年5月期に入ると状況は一変。第1四半期では売上高が前年同期比10%減、第2四半期も同8%減と急激な減速に見舞われ、特にナイキダイレクト(直販)の落ち込みが顕著に。直販のデジタル売上高は第1四半期で同20%減、第2四半期で同21%減と大幅な減少を記録しています。
そこには、外部環境の変化と内部戦略のゆがみという2つの要因があります。

外部環境では、「オン(ON)」や「ホカ(HOKA)」といった新興ブランドの台頭が市場構造を大きく変えています。特にパフォーマンスランニング市場では、これらのブランドが高価格帯でも強い商品力と独自のブランドイメージで若い世代の支持を獲得し、ナイキのマーケットシェアを侵食しています。

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