2014年春夏パリ・オートクチュール・コレクションの期間中、「ヴィオネ(VIONNET)」が同シーズンのデミ・クチュールを発表した。デミ・クチュールとは、店頭で販売するプレタポルテではあるものの、さらに良い素材とテクニックを駆使した最高級ライン。同ラインを手掛けるのは、フセイン・チャラヤンだ。
チャラヤンの「ヴィオネ」は、ブランド創設者のマドレーヌ・ヴィオネに敬意を評するバイアス(布を斜め方向に裁断すること。縦もしくは横よりも生地がたわみ、ドレープが生まれやすい)のドレスで幕を開けた。シルクオーガンジーのドレスは、ヌードやホワイト、淡いパステルカラー。軽やかな素材を5枚重ね、一枚一枚を同心円状にくり抜くことでダーツの的のようなデザインを加える。工業的なアプローチを得意とするチャラヤンとは思えない、静かな幕開けだ。
しかし、以降はチャラヤンらしさが備わってくる。2つ目のパートは、カラフルなワイヤーを忍ばせたビニールチューブを時にベルトのように、時にストラップのように使用。これに布を絡ませることで、アシンメトリーなドレープドレスを生み出していく。不規則なプリーツも特徴だ。さらにはシルクオーガンジーを丁寧にたたみ、その上から細い繊維をたたきつけることで電流が走る様子を描いたアブストラクトモチーフを表出。これを総プリーツのテントラインのドレスなどに変えていく。
フィナーレは、未完のドレスの上にパターンをプリントしたプルオーバーのドレス。「パターンそのものをデザインとした」とコンセプチュアルな志向もそのままだ。多少、「ヴィオネ」というより「チャラヤン」だったが、クリーンなスタイルに工業的アプローチを加えたのはユニーク。さらに「ヴィオネ」らしい永続性が加われば、最高級プレタの新ジャンルになりそうだ。
【ヴィオネ?2014年春夏パリ・オートクチュール?全ルック】