ファッション
連載 中高生のファッション育 第9回

社員の温かさに触れ、販促グッズも考えて「コーチ」をもっと好きになる 中高生の「ファッション育」Vol.9

INDEX
  • タペストリーは温かい社風
  • 歴史とこだわりを学ぶと愛着も深まる
  • 再来店を促す販促グッズを議論
  • 「認知」に終わらない体験が重要

中高生のためのファッション育プロジェクト「フューチャー・ファッション・インスティテュート(FUTURE FASHION INSTITUTE、以下FFi)」は、「ファッション育」を通じて子どもたちの感性を磨き、未来の業界を担う人材やセンスを生かして働く子どもの育成を応援している。展示会への訪問や業界人へのお仕事インタビューなどを重ねるメンバーは、自らの体験をシェアして友人に刺激を提供。FFiはポジティブなループを通して、子どもたちが「未来の自分」を思い描き、夢に一歩近づくことを願う。今回は「コーチ(COACH)」や「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」を擁するタペストリー・ジャパン(以下、タペストリー)を訪れた。FFiの大学生メンターがリポートする。

タペストリーは温かい社風

タペストリーでのプレ・インターンシップは、“夏休みスペシャル”ということで5時間にわたり開催された。FFiからの参加者は、中高生14人とメンターの大学生2人。メンバーの中には、会社訪問自体が初めてという子もいた。オフィスに着くと、社員の皆さんは花道を作って大歓迎!メンバーは照れくさそうな笑みを浮かべて入室したが、緊張がほぐれたような表情だった。ご案内いただいたカフェスペースは、「会社内?」と思うほどオシャレ。バルーンやウェルカムボードで飾り付けられたスペースからは、「コーチ」で働く皆さんの明るさや優しさが感じられた。「何年生?」「どうして参加しようと思ったの?」などの問いかけからも、温かな社風が垣間見えた。

歴史とこだわりを学ぶと愛着も深まる

和やかな雰囲気になったところで簡単な自己紹介の後、リテール担当のまいまいさんによる“コーチ学”がスタートした。中高生や大学生にとって「コーチ」は、親が大切にしていたり、記念日に親から贈られたりと「身近な背伸びブランド」の1つ。実際当日は、「お母さんから借りてきた」や「譲り受けた」「お誕生日に買ってもらった」など、「コーチ」のバッグを持参してきた子も。そんなブランドの歴史、象徴的なアイコンやロゴ、レザーのこだわりなどをクイズを交えながらレクチャーしていただき、メンバーは「このタグ、私のバッグにもついてる!」や「このレザーの痕もナチュラルマーキング(天然皮革に元々付いていたキズやシワ)だね」など、知的好奇心を刺激された様子だった。「知ってる」と思っていた知られざる歴史や製作者の思いにこの時期から触れると、理解だけではなく、ブランドやアイテムへの愛着も深くなる。

再来店を促す販促グッズを議論

「みなさんのことを知ったり、私たちのことを知ってもらったりのランチにしたいと思います!」という、プレ・インターンシップを企画してくださったびっきーさんの音頭で、ビュッフェスタイルのランチが始まった。この間も社員のみなさんとのコミュニケーションは続き、すっかりニックネームで呼び合う関係に。午後は、チームに分かれて社内クルーズに出発。「フリーアドレス」という言葉を知らなかったメンバーたちは、毎日好きなスペースを予約して働けること、電話ボックスのような個室やマッサージチェアーまであること、そして役職によってはガラス張りの景色のよい部屋が用意されていることなど、グローバル企業ならではのオープンな雰囲気に興味津々だった。

FFiメンバーらしさが最も表れる「ワークショップ」では、グループに分かれて「販促グッズ」のアイデアを出し合った。まずはマーケティングのまりさんが「マーケティングってどんなお仕事?」「販促グッズって何?」をレクチャー。続いてどんな「ウェルカムギフト」をお渡しすれば、もっと「コーチ」のファンになってもらえるか?リピートしてもらえるか?を真剣に議論した。「費用はかかりすぎないほうがいいから……」や「コレクター心をくすぐるほうがいいよね?」など、終始ワクワクした様子で意見をどんどん出すメンバーたちと、「なるほど!」「思いもつかなかった!」と褒め上手な「コーチ」の皆さん。プレゼンテーションタイムでは、それぞれのグループが中高生らしい発想を披露し、フィードバックをいただいた。FFiは、この「インプット」→「アウトプット」を大切にしている。プレゼンテーションが得意ではないメンバーも、自分たちの思いを自分たちなりの言葉で伝え、社会で活躍している大人に評価してもらうことで大きな刺激や自信となっている。

「認知」に終わらない体験が重要

最後は、少人数でのキャリアインタビュー。同じ目的をもって集まっている企業内でも、職種はさまざまで、それぞれが欠かせない役割を担っている。学生時代の専攻やこれまでのキャリアなど、自身の今後の参考にするメンバーも多い。真摯に答えようとしてくださる社員の皆さんの様子が印象的だった。中高生にとって、「働く」はまだまだ身近とは言えない。しかし憧れる会社で活躍している大人の言葉は、一足先に「キャリア」について考えるきっかけになる。

「コーチ」でのプレ・インターンシップについては、「5時間があっという間だった!」という声が多かった。FFiメンバーにとって一番印象に残ったのは、「社員の皆さんが楽しそう!」だったこと。プライドを持ってポジティブに働く大人の方々は、目指す姿であり、働くことに期待を持たせてくれる存在だ。今回参加したメンバーは、これから「コーチ」の商品や店舗、広告を見るたびに、学んだ歴史やアイテムへのこだわりと共に、イキイキと楽しく働いていらっしゃる社員さんの姿を思い出すに違いない。

参加した学生のリポートから(学年はプレ・インターンシップ当時)

私はまだ「将来のなりたい像」が漠然としていたけれど、たくさんの意見交換を通して少しずつ明確になった。また言語化したやりたいことを理解・共感してもらえる喜びを学んだ。自分になかった新たな視点も得ることができた。(めい/高校3年)

職場にいる人が楽しく仕事しているように感じた。私も、自由で元気な雰囲気の会社で働きたい。(kano/高校1年)

やりたいことがわからなくても、いろいろなことに視野を広げる必要性を学んだ。(るるこ/高校1年)

「コーチ」の明るく楽しそうな社員を見て、私も楽しくなった。(AO/中学2年)

「コーチ」のスタッフの「経験を大切に」という言葉が印象に残った。(リマ/中学3年)

「コーチ」というブランドにとても興味を持った。今までは名前を知っている程度だったが、皆さんとたくさんお話をして、自分が思っている何倍も楽しそうに仕事している社員さんを見て、イメージがすごく変わった!私がやりたいことについて、「向いていると思うよ!」など背中を押してくれて、自信に繋がった!ありがとうございます!(秋山寿/高校2年)

“コーチ学”で学んだ「皮」と「革」の違いは特に面白かったので、友達や親戚に伝授したい。さまざまなバックグラウンドを持ったみなさんのお話を聞いて、将来に対する視野が広がった。「そんな選択肢もあるんだ」という驚きは、大学受験や自分の目標を考える上ですごく良い刺激。また、「やりたくないことをやる」のではなく、「やりたいことを今から経験することが大切」という言葉にも勇気をもらった。「何も得られなかったら、どうしよう?」という不安を払拭し、「新しい経験ができるんだ」「成長できるかもしれない」と一歩を踏み出せる。(Eri/高校2年)

「コーチ」を知らない人に知ってもらうためのアイデアを考えることがとても楽しかった。私自身「コーチ」はよく知らなかったが、説明を聞くといろんなアイデアが出るし、そのアイデアが会社を変えるかもしれないと想像できる。飽き性な私の進路について質問をしたら、性格をふまえて、まずはいろいろなことに挑戦する大切さを教えてくれた。(りん/高校1年)

「経験が大事」という言葉をいただき、自分もやりたいことができるようにもっと頑張ろうと思った。(ななか/高校2年)

自分で商品を考案するのは初めての経験だったが、メリットやデメリット、コストなどさまざまな要素を検討する過程は楽しかった。(えな/高校2年)

「若いうちにたくさんの経験を積んでおくこと」「自分がやりたいと思っていることを仕事にすることが、必ずしも正解とは限らない。人から与えられた仕事が自分に合っている場合もある」という言葉をいただき、響きました。(FFi大学生メンター/小穴睦子)

今までは企業の方針などを伺う機会が多かったが、今回は自分たちでアイデアを考え、発表する形式だった。新しい体験はとても楽しく、アウトプットすることでより自分の案が具体化、言語化できて、良い経験だった。(FFi大学生メンター/新関桜子)

関連タグの最新記事

最新号紹介

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。