PROFILE: 榮倉奈々/俳優

14歳でモデルデビューし、以来俳優としても活躍し続けてきた榮倉奈々がファッションブランド「ニューナウ(NEWNOW)」を立ち上げたのは2023年10月。スタイリストの上杉美雪とともに始動した。
「約20年の芸能活動を経て、これまでとは異なる世界で勉強したいと思った。何か新たなチャレンジをしたいと思っていた当時、今回の撮影にも参加していただいた美雪さん、ヘアアーティストのKENICHIさんと話し、『このチームなら、アパレル事業ができるのでは』と熱い気持ちが生まれた」。榮倉は最高経営責任者(CEO)、上杉はクリエイティブ・ヴィジョン・ディレクターを担当し、2人でブランドの世界観を生み出す。子どものころから自分で何かを成し遂げたいと思う気持ちが強かったと言う榮倉は「私も美雪さんも、好きな女性像は“自立していて、洗練された女性”。だからこそ、頑張っている女性がより美しく見える服を届けたい」。
ブランド名は、“常に時は流れていて、その瞬間を、新しい今を、常に生き続ける”という上杉の哲学を反映し、過去にとらわれず前進する女性をイメージしたもの。「自立した女性の支えであり、仲間でもあるー『ニューナウ』は自分自身の魅力を引き出し、タイムレスに受け継いでいける存在でありたい」と語る。(この記事は「WWDJAPAN」2025年1月20日号からの抜粋です)
NEWNOW
by NANA EIKURA
BRAND HISTORY
2023年 1月 ブランド立ち上げ準備を開始
2023年 5月 ランドエヌケーを創設し、CEOに就任
2023年 10月 「ニューナウ」立ち上げ
2024年 6月 ジェイアール名古屋タカシマヤで初のポップアップ開催
2024年 11月 六本木・イセタンサローネでポップアップ開催
現在チームを構成するのは榮倉と上杉のほか、ファッションブランド「コート(COATE)」の福屋千春デザイナーやEC担当ら十数人。各分野のプロフェッショナルが集結した少数精鋭で運営する。「品質には自信があるからこそ、端的に“芸能人のブランド”として見られないよう、自分が前に出ていくべきか葛藤が続いた。それでも商品に注目してもらうには私が前に出て責任を持って紹介することが最善だと考え、今につながっている」。

受注会やSNSでのアプローチをチームで試行錯誤しながらも、売り上げは右肩上がりと順調だ。ブランドの知名度を押し上げたのはファーストシーズンから手掛ける“ペインターパンツ”。シルエットにこだわり、都会的な洗練さとアクティブさを兼ね備えた商品はブランド随一の支持を誇る。「パンツがきれいなブランドでありたい。“ペインターパンツ”は公園にも、ホテルディナーにもはいて行ける。どんなシチュエーションでも、自分自身が主役になれる服を提案したい」。さらに「自然にあるものよりも人工物の量が上回ったといわれる中で、モノを作り出すことへの責任を強く感じる」と語り、一部の商品は製造プロセスでは染料や化学繊維を使用せず、水の使用量も抑えるなど、環境への配慮も怠らない。しかし「サステナビリティ活動の一環として受注生産を選択したが、経営とのバランスを取るのは難しい」と経営者としての苦悩を明かした。
「ニューナウ」を通じて
得られた自分自身の変化
25年春夏コレクションのテーマは“Every Wear”。より幅広い世代が気負わず着られる、日常に溶け込むようなアイテムをイメージした。「今振り返れば、最初のコレクションはかっこよくしたい気持ちが強かったのだと思う。新作ではより日常で着やすい服を追求していこうと思い、伸縮性や着心地にフォーカスした服を増やした」。今後はライフスタイルアイテムも展開するという彼女にブランドの展望を尋ねると「家族で楽しめるセレクトショップのような形を目指す。世界観を崩さないため小規模体制でありたいと思う気持ちもあるが、現実を考えたら人手が足りない。世界観を崩さずに規模を拡大すべく、いい仲間づくりも意識的に行っていきたい」と語った。
最後に、ブランド立ち上げから1年がたった今の心境を聞いた。「やっぱり私は、これまでに知らなかった世界にいるんだなと思う。ただ、この仕事を通じて、すごくいい経験をさせてもらっているし、自分自身がニュートラルな場所に帰ってきたように思える。ブランドを通じてさまざまな職業の人と対話し、人生が豊かになった。店頭でお客さまと商品を選んですごく喜んでもらえたこと、『困ったらいつでも頼って』と言ってくれるアパレル業界のかっこいい先輩たちがいることー俳優業で感じてきたものとはまた違う、助け合いや温かさを感じる瞬間にたくさん出合うことができた。そして何より、サポートしてくれる家族への愛がさらに深くなったと感じる。このブランドで得る経験はきっと、演技にもいい影響をもたらすのだと思う」。
STYLING : MIYUKI UESUGI(SENSE OF HUMUOR)
HAIR : KENICHI(SENSE OF HUMOUR)
MAKEUP : RIKA MATSUI(AKA)
PROP STYLING : YUNA SHIBATA