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エディ・スリマンも注目するLAのポスト・パンク・バンド、オートマティック(Automatic)インタビュー

INDEX
  • アンチ・プロフェッショナリズムとミニマリズム
  • マッシヴ・アタックやポーティスヘッドからの影響
  • ラグジュアリー・ブランドとのコラボ
  • シネイド・オコナーのパンク精神

デモを聴いたLAヒップホップ/ビート・シーンの重鎮、ピーナッツ・バター・ウルフがほれ込み、彼が主宰するレーベル「Stones Throw」から2019年にデビュー・アルバム「Signal」をリリースしたLA在住のバンド、オートマティック(Automatic)。メンバーは、リード・ボーカル&シンセのイジー・グラウディーニ(Izzy Glaudini)、ボーカル&ドラムのローラ・ドンペ(Lola Dompé)、ベースのヘイリー・サクソン(Halle Saxon)の3人で17年に結成された。

1980年代のガールズ・パンク/ニューウェイブ・バンド、ゴーゴーズ(The Go-Go's)の曲から名前が取られた彼女たちのサウンドは、スーサイドやヒューマン・リーグを連想させるシンセ・パンク/エレクトロ・ポップにドリーミーでサイケデリックなフィーリングがミックスされた、いわく「アンチ・プロフェッショナリズムとミニマリズム」に貫かれた代物。そんな彼女たちに寄せられるラブコールは、ツアーにフックアップしたヤー・ヤー・ヤーズやテーム・インパラから、ショーの音楽制作を依頼したエディ・スリマンをはじめ、「ミュウミュウ(MIU MIU)」や「ジバンシィ(GIVENCHY)」といったラグジュアリー・ブランドまで、絶え間がない。2年前には「グッチ(GUCCI)」とコラボレーションし、彼女たちの楽曲を使ったキャンペーン映像が話題を呼んだことも記憶に新しい。

現時点で彼女たちの最新作になる2ndアルバム「Excess」(2022年)は、ムーディーでメロディックなエレクトロと幽玄なボーカル・ワークが耳を引く、いわばレトロ・フューチャリスティックなモーターリック・ポップの1枚。加えて、格差や気候変動など今の社会が抱える問題を、地元LAの現実を通して描写したシリアスでポリティカルなメッセージが印象的だ。すでにレコーディングを終えた次のアルバムが完成間近に迫る彼女たちは、昨年末に初めてのジャパン・ツアーを開催。東京でのライブ直前、イジーとローラに話を聞いた。

アンチ・プロフェッショナリズムとミニマリズム

——ニュー・アルバムの「Excess」がリリースされて3年近くがたちますが、作品のテーマやコンセプトについて改めて教えてもらえますか。

イジー・グラウディーニ(以下、イジー):「Excess」は、政治的な問題や世界情勢に対して、より意識的に向き合ったものだったと思う。COVID-19の時に制作したこともあって、世の中の不平等や矛盾について深く考えさせられました。つまり、なぜ何もかもが劣化して、こんなひどいことになったのかを考える以外、することがなかったというか(笑)。特にロサンゼルスという街は貧富の差が極端で、大邸宅が建ち並ぶ地域があるかと思えば、1ブロック歩くとテントとホームレスの掘っ立て小屋の街があるという光景は、今の社会が抱える問題を象徴しているように思います。そうした矛盾を目の当たりにして、音楽を通じて何かを伝えたいという思いを強くしました。

——サウンドについてはどうですか。1stアルバムの「Signal」と比べると演奏やプロダクションも洗練された印象を受けましたが、自分たちのどんなスタイルが打ち出されたアルバムだといえますか。

イジー:私たちはとても折衷的なバンドで、いろいろな音楽にインスピレーションをもらっています。トリップホップ、ヒップホップ、時にはクラシック・ロック、そしてマジー・スター、ニュー・オーダー、イエロー・マジック・オーケストラなど、影響を受けたものを挙げればきりがない。それで、それらの要素を全部混ぜ合わせて、自分たちだけのオリジナルなサウンドをつくっている。私たちのバンドがクールなところは、そうした影響を全て取り入れて、自分たちのものにできる“ミニマル”さだと思う。

——その“ミニマル”というところで言うと、ギター・レスであることもオートマティックの特徴の一つだと思います。

イジー:私たちがオートマティックを始めたころのアンダーグラウンド・シーンにはギター・バンドがたくさんいて、何か違うことをやってみたかったんです。周りのバンドはとても“男性的”で、過剰な感じがしたというか。もともと私はギターを弾いていて、それまでシンセに触ったこともなかったので興味を引かれたのもありました。私たちの音楽理念は、いわばアンチ・プロフェッショナリズムとミニマリズムのようなものです。面白い音楽をつくるのに技術的に優れている必要はない。シンセはとてもフレキシブルな楽器で、初心者に優しく、誰でもスイッチを入れてツマミをひねることでクールなサウンドをつくることができる。この先の作品ではギターを取り入れることもあるかもしれないけど、重要なのは進化し、新鮮であり続けることなんです。

——ボーカルをイジーさんとローラさんの2人で担当しているのは、どういう理由からだったんですか。

イジー:最初にジャムを始めた時から自然とそうでした。私たちの音楽はとてもシンプルでミニマルなので、2人の異なるボーカリストがいることで、曲のダイナミクスを高めることができる。それに、私たちは偶然にも正反対のタイプの声を持っていて。ローラは明るく、時にはパンクな声をしていて、私はもっと低音が効いていてすねたようなスタイルで、異なるエネルギーを組み合わせるのはクールだなって。

マッシヴ・アタックやポーティスヘッドからの影響

——「Excess」に収録されている「Automaton」はポーティスヘッドにインスパイアされた曲だそうですね。

イジー:ポーティスヘッドは私たちがやろうとしていることと似ていて、つまり、いろんなジャンルの音楽からたくさんの影響を受けています。サンプリングしたものをマッシュアップするDJカルチャーに近いというか。音楽に対する感性や、アイデアを組み合わせるセンスさえあれば、高度なテクニックはなくても、シンプルなビートやメロディから面白い曲はつくることができる。「Stones Throw」というレーベルが大好きな理由もそこにあって。あのレーベルの作品は、いろんな音楽の要素を混ぜ合わせて、独特な雰囲気を持った音楽をつくり出しているから。

ローラ・ドンペ(以下、ローラ):それに、「Excess」はダークでシネマチックな世界観を持った作品で、そこはマッシヴ・アタックやポーティスヘッドの影響も大きかったと思います。

——“シネマチック”と言えば、オートマティックはアルバムのジャケットやミュージック・ビデオ、ライブ中の映像演出も独創的です。アートワークのこだわり、またビジュアル面で影響を受けたアーティストを教えてください。

イジー:私たちのパフォーマン・スタイルはとてもストイックなので、プロジェクションや照明を使って、より魅力的なショーをつくるようにしています。ノワールで、ムーディーで、ちょっとSFチックなグラフィックが好きなんです。デヴィッド・リンチやアンディ・ウォーホル、フリッツ・ラングの映画、そしてLAで素晴らしいビデオやアートをつくっている友人たち――シルヴィー・レイクやアンバー・ナヴァロの映像作品から大きな影響を受けています。ちなみに、「Excess」のビジュアライザーはヤナ・パン(Yana PAN)が制作したもので、ヴァルター・ルットマンなどの1920年代のドイツのグラフィック・アーティストや、フリッツ・ラングのSF映画「メトロポリス」がインスピレーションになっています。

——LAには、あなたたちが所属する「Stones Throw」や「Leaving」といったレーベル、あるいは以前あった「Low End Theory」のようなパーティーに代表されるヒップホップやビート・シーンがあり、かたや、脈々と続くアンダーグラウンドでエクスペリメンタルなロック/ノイズ・シーンがあって。その二つのシーンが交差するところから面白い音楽が生まれているという印象があります。

ローラ:LAでは全てがつながっていて、私たちの音楽もいろんな要素が混ざり合って独自のスタイルをつくり上げている。だから「Stones Throw」と契約したんです。友達が何人かそこで働いていて、それでちょっとしたデモをつくって送ってみたら、ピーナッツ・バター・ウルフ(※「Stones Throw」の創設者)が気に入ってくれて。彼はポスト・パンクのバックグラウンドを持っていて、パンク・ミュージックの生々しいサウンドにこだわりがありました。それで私たちの音楽のパンクな部分に興奮してくれたみたいで、すぐに契約の話がまとまったんです。

イジー:私たちはドラムとベースが主体の音楽だから、リズムが前面に出ていて、スペースがたくさんある。そこは、ヒップホップのサンプリング・カルチャーやビートメイクに似ているところがある。私たちもドラムの音を細かく切り刻んだり、サンプラーを使って新しいサウンドをつくったりする。私たちはクラシックな訓練を受けたミュージシャンではないし、全て独学なんです。限られた環境の中で、クリエイティブに、自分たちの知っているやり方でやっていくしかない。それはある意味、ヒップホップのDIY精神に通じるものがあると思う。

ローラ:それに、私たちは女性でもある。だから、ちょっとしたアウトサイダーみたいな存在なんです。

——ちなみに、ローラさんのお姉さんはポカホーンテッド(Pocahaunted)のメンバーでしたよね。アンダーグラウンドなノイズ・シーンを代表するグループの一つで。

ローラ:2000年代は特に盛んでしたね。「Not Not Fun」とか。そう、あれは私たちが“生まれる前”のことで、直接その時代を経験したわけではないけれど、間違いなくインスピレーションを受けています。あのころは音楽シーンが今よりももっとエキサイティングで、DIY精神あふれるインディーズ・バンドがたくさん活躍していて。私はそういう音楽が身近にあったので、特に10代のころに聴いた音楽には大きな刺激を受けました。DIYの会場が街の至る所にあって、いつでも気軽にライブを観ることができた。この15年でだいぶ変わってしまったと思うけど、以前はもっと無邪気でパーティーみたいで、自由に音楽を楽しんでいたような気がする。今はよりシリアスで、ダークな雰囲気になったように感じます。

イジー:そして、とてもポリティカルになった――オバマの時代になってね。

ラグジュアリー・ブランドとのコラボ

——作品のリリースやライブと並行して、オートマティックはファッションとクロスオーバーした活動も盛んです。「セリーヌ」のショーのサウンドトラックの制作をはじめ、「ミュウミュウ」、「ジバンシィ」、「グッチ」といったラグジュアリー・ブランドとコラボレーションされていますが、どんなところに面白さを感じていますか。

イジー:全てブランドの方から声をかけてくれたんです。私たちの方からブランドのために音楽をつくるとか、何かを売り込むとか、そういうことを考えたことはなくて。でも、自分たちの曲がランウエイで流れるのはクールだし、とても新鮮です。自分たちの音楽を表現する手段の一つとして、ファッションはすごく面白いと思う。「ミュウミュウ」は素晴らしいブランドだし、「セリーヌ」はとてもクール。特にエディ・スリマンは音楽とファッションをクロスオーバーさせて、つねに新しい何かを生み出そうとしている。単なるブランドのデザイナーではなくて、スタイルやカルチャーを大切にしている人なんです。

今は企業が大きく関わっていて、商業的な要素が強くなった。だから面白くないと感じる部分もある。でも、もし私たちの音楽に心から共感してくれて、それに応えてくれるなら、大歓迎です。単に私たちの音楽を商品として扱おうとするような行為は、クソくらえだね(笑)。

——ちなみに、エディ・スリマンとはどんな形で知り合ったんですか。

イジー:私たちのバンドのベーシストのヘイリーが彼と知り合いで。彼女は以前、彼のモデルをやったことがあったんです

エディは、私が10代のころから好きだったミュージシャン、例えばガールズのクリストファー・オウエンスと一緒に仕事をしてきて。最近だと(テーム・インパラの)ケヴィン・パーカーもそう。そういえば前に、彼がLAのヘイリーウッド・パラディアムでやったファッションショーに行ったことがあって。イギー・ポップが来ていて、ストロークスやジョーン・ジェットのライブもあったりして、あれは最高でした。

ローラ:私たちの共通の友達が何人かモデルとしてランウエイを歩いていて。自分たちの身近なコミュニティーの人たちが、あんな大きなファッションショーに出ている姿を見るのはとてもクールで刺激的でした。異なる世界が一つにつながって、新しい何かが生まれていくような感覚があって。

——せっかくなので、2人が好きなブランドや、お気に入りのワードローブについて教えてください。

ローラ:「ミュウミュウ」は大好きなブランドです。それと、「ミュグレー(MUGLER)」の昔のコレクション。あと、90年代の「ヒステリックグラマー(HYSTERIC GLAMOUR)」もよく着ています。着飾ることは、単なる自己表現じゃなくて、私たちにとってショーの一部なんです。その曲の世界観に入り込むことができて、エネルギーが湧いてくるというか。

イジー:それに、私たち3人はビンテージや古着のお店を見るのが大好きなんです。LAでは「グッドウィル」(※アメリカの有名スリフトストア)にもよく行くし、デザイナーの服を安く見つけるのは楽しい。クールな気分になるのにお金がかからないのは最高(笑)。特にヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)やティエリー・ミュグレー(Thierry Mugler)など、パンクの精神や美学を持ったデザイナーに憧れます。

(東京に来る前に)大阪に行った時は、デザイナーズ・ブランドの古着がたくさん置いてあるお店で、みんな夢中になっちゃって(笑)。つくりがしっかりしていて、長持ちするもの、そして見た目もかっこいいものを持つようにするのは大事なこと。個人的には、プリーツレザーを着るのが好きなんです。私みたいに面倒くさがりな人は、飲み物やブリトーのソースをこぼしても簡単に落とせるから(笑)。

——例えば、オートマティックの活動において、音楽とファッション、そして政治的なメッセージのバランスについてはどんなふうに考えていますか。

イジー:それについては時々考えることがあって。例えば、私が大好きなクラッシュには、政治的なメッセージを込めた音楽をつくりながらも、同時に楽観的なところがあり、ファッションやスタイルにもこだわる“本物”のかっこよさがありました。だから思うんです、政治的なテーマを扱っているからといって深刻になりすぎたり、シニカルになったりする必要はないって。音楽をつくるときには、楽しさや遊び心が大切だと思う――それってつまり、人生を謳歌するということだから。パンクは、ただ単に「何もかもが最悪だ」って現状への不満を叫ぶだけじゃなくて、世の中をもっと良くしたいという強い願いを込めた音楽だと思う。“革命的楽観主義”とでもいうか、物事を変えるために何かを信じる気持ちが必要だと思う。だから私たちも、政治的な問題を扱う時はただ暗くて絶望的な感じじゃなくて、聴いた人にインスピレーションを与えるような音楽をつくりたい。ファッションもそのための重要な要素の一つだと思っています。たとえ気候が悪化して、世の中が大変な状況でも、人生は楽しくあるべきだと思うから。

ローラ:ヴィヴィアン・ウエストウッドはまさにその良い例だと思う。彼女は、ファッションを通して社会問題に対する強いメッセージを発信しながらも、同時に人々を魅了するようなデザインをつくり上げた。つまり、楽しく、そして美的なものでなければいけなない。そうやって“境界線”を押し広げることが大切だと思います。

シネイド・オコナーのパンク精神

——先ほど「Excess」のテーマに関連してLAの貧富の問題について話してくれましたが、そうしたLAという都市の文化や風景が自分たちの作品や活動に与えている影響については、どう捉えていますか。

イジー:LAは、全てが過剰で、カートゥーンみたいな“つくり物”の都市なんです。サイケデリックで、ものすごくロマンチックで美しいんだけど、同時に、浅はかで恐ろしくてくだらない。そこが魅力的なところでもあり、ただ、それに抗っているような感覚が自分の中にはあって。映画に出てくるようなきらびやかな場所もあれば、ホームレスが何百人、何千人もいるような場所もある。そのギャップがすごくて、実際、そうした不合理な光景を目にするのは悲しいし、とてもつらい。家賃もクレイジーだし……。

毎日そこで生活していると、だんだん慣れてきてしまうんです。まるで夢と現実が入り混じったような……その雰囲気全体が私たちの音楽に影響を与えているのは間違いないと思います。「シュールレアリスム」というのは、まさにLAを表現するのにぴったりな言葉だと思う。「Excess」では、そうしたLAの光と影をそのまま表現したかったんです。

ローラ:世の中には、華やかでキラキラしたものがたくさんある。でも、その裏側には、目を背けたくなるような現実がある。その対比こそが、LAという街の日常であり、それが私たちを突き動かすエネルギーにもなっていると思います。

——そうした音楽を通じて社会と向き合うアクチュアルな姿勢に関して、自分たちのロールモデルになったアーティストを挙げるなら誰になりますか。

イジー:シネイド・オコナー、クリネックス(Kleenex)、ブロンディ、デビー・ヘイリー(ブロンディ)、ジーナ・エックス、マジースター、スージー・スー、サバーバン・ローンズ(Suburban Lawns)……私たちは女性だから、自然と他の女性アーティストに共感し、インスピレーションを受けることが多いんだと思います。それに、私たちが活動しているようなジャンルでは、女性アーティストが先駆者として道を切り開いてきた歴史がある。特に77年から82年のパンク・シーンの女性アーティストたちは、まさにその代表格だと思う。だけど、その時代の音楽の世界では、女性であることは大きなハンディキャップで、ある意味、とても“危険”だったと思う。ただ女性であるというだけで、多くのことと闘わなければならなかったから。

——シネイド・オコナーはどんなところに共感しますか。

イジー:彼女は、自分であることを貫き、自分の信じる道を真っすぐ突き進んだアーティストでした。そして、ローマカトリック教会内の性的虐待について声を上げたことで、世間から激しいバッシングを受け、まるで中世の魔女狩りのような扱いを受けた。本当に狂っている……でも、彼女は決してひるまなかった。ジャンヌ・ダルクのように、自分が正しいと思うことのために闘った。ボブ・ディランのコンサート(※1992年10月、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで開催された、ボブ・ディランのデビュー30周年を祝うコンサート)で何千人もの人がブーイングを浴びせる中、堂々と歌い続けた彼女の姿は(※予定していたボブ・ディランの曲をやめ、アカペラでボブ・マーリーの「WAR」を歌った)、まさにパンクの精神そのものでした。彼女は、世間の目を気にせず、自分の心の声に従った。私にとって彼女は、まさに真のパンク・アイコンなんです。

ローラ:彼女の声はとても力強く、それにあわせてクールな態度とスタイルを持っていました。

イジー:でも、社会は彼女が自分たちの望む姿に沿わなかったから、彼女を引き裂いた。なぜ丸刈りなのか、なぜドレスを着ないのか……そんなくだらない質問ばかり浴びせて。でも彼女は、そんな世間の期待に応えることなく、それに男性に受け入れられるかどうかを気にすることなく、アウトサイダーであること、政治的であることを貫くことで音楽業界の女性たちのために多くの扉を開いてくれた。彼女を愛しているミュージシャンは本当にたくさんいます。R.I.P.。とても悲しい。

——ローラさんにとっては、ミュージシャンとして活動する上でお父さん(※バウハウス(Bauhaus)のドラマーだったケヴィン・ハスキンス)の存在も大きなものがあったのではないでしょうか。

ローラ:私が父から受けた最も大きな影響は、彼の音楽に対する素晴らしいセンスと、ミニマルだけどインパクトのあるドラミングだと思う。

音楽と父に関する私の最も古い記憶は、父と母が親しい友人たちを招いてディナー・パーティーを開いている間、小さな子どもだった私はいつもリビングで遊んでいたこと。マッシヴ・アタックやデヴィッド・ボウイなど、父がパーティー中にかける音楽が大好きでした。音楽がその空間を盛り上げ、父とその友人たちがパーティーを楽しんでいる姿は、私の印象に強く残っています。

——ちなみに、次の新しいアルバムはどんな感じになりそうですか。

ローラ:次のアルバムでは、「Excess」のテーマをさらに掘り下げ、戦争についてももう少し言及したものになると思います。政治的な出来事に対して、人々がどんな反応をし、どう行動するのか。例えば、ある人は怒り、ある人は悲しみ、またある人は無関心を装うかもしれない。そんな、人々の複雑な感情や選択について歌っています。ソーシャルメディアや身近な人々の反応を通じて、同じような経験をしている人が世界中にたくさんいることに気づかされました。

——サウンドについてはどうでしょう?

ローラ:ライブで演奏するような、生のエネルギーをスタジオに持ち込みたいと思っていて。だから「Excess」とはまた違った、ダイナミックなサウンドになると思います。音の一つ一つが際立っていて、普段の私たちのサウンドをさらに昇華させたような感じかな。

イジー:ローレン・ハンフリー(Loren Humphrey)という新しいプロデューサーと一緒に制作していて、彼が全曲共同プロデュースという形で参加してくれています。ニューヨークのダイヤモンド・マインドというスタジオでレコーディングして、彼の家で一緒にミックスしました。全てアナログ機材で音を重ねていって、プラグインはあまり使っていない。そういう意味ではオールドスクールな感じというか、テープで録音したような温かみもありつつ、ちょっとパンクな要素も加わっていて……言葉では表現しにくいんだけど(笑)、生々しくてエッジの効いたサウンドになっていると思います。

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