1月23日(現地時間)、第97回アカデミー賞のノミネート作品が発表され、映画「エミリア・ペレス」が最多12部門・13ノミネートを獲得した。同映画の日本公開は3月28日を予定している。
「エミリア・ペレス」は、主演女優賞にノミネートされたカーラ・ソフィア・ガスコン(Karla Sofia Gascon)が主演を務め、助演女優賞にノミネートされたゾーイ・サルダナ(Zoe Saldana)やセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)らが出演。第82回「ゴールデン・グローブ賞」では、作品賞、非英語作品賞、助演女優賞(サルダナ)、歌曲賞を受賞した。
サンローラン プロダクションが共同制作
同映画は、アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)「サンローラン(SAINT LAURENT)」=クリエイティブ・ディレクターの指揮する映画制作会社、サンローラン プロダクション(SAINT LAURENT PRODUCTIONS)が共同プロデューサーで、多くの衣装がヴァカレロのアーカイブから使用されている。また、「ゴールデン・グローブ賞」でもサルダナが「サンローラン」のカスタムドレスを着用していた。
「エミリア・ペレス」は、カーラ演じるメキシコの麻薬カルテルのリーダー、マニタスが、サルダナ演じる弁護士のリタに女性として生きるための新たな生活を用意してほしいと極秘の依頼をし、“エミリア”として新しい人生を歩む、というストーリーだ。ジャック・オーディアール(Jacques Audiard)監督は、ヴィルジニー・モンテル(Virginie Montel)をアーティスティック・ディレクターと衣装デザイナーに任命した。
モンテル長くは制作に関わっており、当初、サルダナのキャラクターが男性として描かれていたと記憶している。モンテルは、「しかし、結局は女性の映画になった」と話し、ダンスナンバーの多いミュージカルに携わる機会が最初からあったという。「普通の映画にはない多くの可能性を広げることになるのは歌とダンスだ」と語る。
モンテルは、「自分たちが何をしていくかについて、既に本当にとてもいいアイデアがあった」、「音楽があって、ダンスがあったし、リタがテーブルの上で踊るシーンがあるので、衣装には慎重にならなければいけないことも分かっていた」と明かした。
サルダナとゴメスは同映画でそれぞれ「サンローラン」を着用している。サルダナは赤いベルベットのスーツを含む鮮烈なルックを披露し、ゴメスは、同ブランドのプリントブレザーや、スイスのシーンではファーコートを身につけた。
モンテルはゴメスの衣装について、「私たちは最初、セレーナをもっとギャングガールのようにしたかった。私たちは「ナルコス」(コロンビアの麻薬組織と麻薬取締捜査官の戦いを描いたドラマシリーズ)よりもラップミュージックにもっと影響を受けていた。(映画の)後半では、セレーナはスイスに4、5年いることになり、その間、もっとヨーロピアンなスタイルを持つことになる」と語った。
ジェンダーアイデンティティーの変化を強調
またモンテルは、ガスコンが、マニタスと後のエミリアとして着る衣装には、衣服を通してジェンダーアイデンティティーの変化を見せるよう努めたと言う。
モンテルはエミリアの衣装について「私たちは、ガスコンをかなりフェミニンにしたかったので(ガスコンの衣装は)とても物柔らかいものを選んだ。彼女には、色、柄など持たせたいものが多かったが、時々やりすぎてしまうこともあったから、結局、トーンダウンさせることにした。彼女にはそれでも多くの色と柄を持たせたけれど。彼女の(衣装は)やりすぎずに、本当にエレガントでフェミニンになった」。
一方、マニタスの衣装については、「ガスコンは元々マニタスというキャラクターだったから、彼女が演じた2つのパートにはつながりがあった。マニタスはサッカー選手のようなスタイルからラッパースタイルになって、そしてロングヘアにジュエリーをつけていた。私たちは彼女に、フェミニンでありながら、ラップを引用している部分を持たせたかった。彼女はとても大きな『カルティエ(CARTIER)』のリングや金歯のように歯にジュエリーをつけ、髪も長かった。女性の視点でマニタスを見つけていくのはより興味深いこといことだった」と話した。
「サンローラン」のシグネチャースーツも登場
リタのワードローブの中でひときわ目を引くのは、重要なダンスナンバーで着用された赤いベルベットのスーツだ。「皆が赤いスーツのことを話している。デビッド・ボーイ(David Bowie)による曲のようだ」と話すモンテルは、赤いスーツを探すつもりで「サンローラン」のアーカイブを見て回ったが、すぐに見つかったため、そのスーツがどのコレクションのものかを思い出せないほどだという。「赤が欲しかったの。そしてスモーキングジャケットは、本当に『サンローラン』のシグネチャー」とモンテルは言う。
各キャラクターのスタイルは劇的に変化するが、モンテルはその挑戦を歓迎する。「映画の前半から後半にかけて大きな変化がある。映画は、常に移り変わるもの、エミリアのように」と語った。