毎年好評いただいている年始の恒例企画「CEO特集」。今回はビューティ業界の34人のキーパーソンに、2024年を振り返ってもらうとともに、“可能性”というテーマのもとで25年以降のビジョンを語ってもらった。
ここでは各社の経営トップたちが語った“可能性”を分析し、大きく6つのカテゴリーに分けた。コメントには、ネクストステージを切り開く取り組みのヒントが。 新たな飛躍に向けて、各企業のトップはどのように動き、何を考えているのだろうか。(この記事は「WWDJAPAN」2025年1月27日号からの抜粋です)
6つの“可能性”の1つ目は「デジタル」。デジタル一辺倒というよりも、デジタルとリアルのシナジーを目指した動きが目立った。2つ目は「原点回帰」。次々と新たなブランドが誕生する化粧品業界では、類似ブランドが現れたり、同質化していったりは珍しくない。そこで、まずは自社のオリジナリティーやストロングポイントに立ち返り、戦略を再構築していく動きだ。3つ目は「海外市場」。グローバルに知名度と人気の高いKビューティ(韓国コスメ)をターゲットに、Jビューティの躍進を狙う取り組みに注目だ。4つ目は「サステナビリティ」。Z世代を中心に関心が高く、“サステナブルへの取り組みが見えない企業は採用に苦労する”などと言われ、企業の意識は上向いてきていたが、1月20日、アメリカの第47代大統領にドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が就任。環境問題への意識が低いとされる同氏が再び“世界で最も影響力のある人物”になったことで、今後の世界的な流れがどう動くか不透明になったことは否めない。
5つ目は「ブランド刷新」。時代に合わせて柔軟にブランドを変化させ、新たな躍進を狙う力強いコメントが聞かれた。6つ目は「新領域」。既存の事業領域を超え、新たなカテゴリーに踏み出す挑戦で、医療分野のように化粧品に近しいジャンルから、“地方創生”といった関連が薄そうに見えるアクションへの挑戦も複数聞かれた。
「海外市場」への本格進出といった飛躍から、「原点回帰」に見られる地盤固めまで、業界の経営トップのビジョンに注目してほしい。
1. デジタル
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リアルとデジタルのバランス重視でさらなる成長を
2025年1月にデジタル部門を発足し、秋からデジタルを活用したマーケティング施策を本格化させるアルビオンを始め、デジタルに可能性を見いだす企業が多かった。同社は26年には、EC販売を開始する予定。「コロナ禍の影響で廃業する化粧品専門店が相次ぐ中、近所に実店舗がないお客さまや、多忙な日々を送るお客さまにご不便をおかけしているのは本意ではない」と小林章一社長。あくまでも実店舗が主役で、ECはその補完という位置付けで、対面の接客を重視する姿勢は一貫して変わらないという。
リアルとデジタルのバランスについては、「少しずつデジタルの比率は高まってはいるが、どこで購入するかはお客さまの自由」と、エキップの赤堀真之社長。「昨年はブランドサイトとECを統合し、お客さまの利便性向上に努めた。リアルと自社ECや外部モールといったデジタルで情報を一元化し、より便利な購買体験の構築に挑戦したい」と意欲を示す。アイスタイルの遠藤宗社長兼COOは「当社が目指しているのはリアルとネット、いずれの空間と時間でもユーザーとコスメをつなぐこと。まだ店舗のトラフィックやデータを使ったCRMは伸びしろだらけ。25年からは、2〜3年かけてネットとリアルを横断して循環させる仕組みづくりに本腰を入れる」という。
一方で、デジタルに注力した学びを経て、リアルをより重視した姿勢を見せる企業も。ココチコスメは、24年4月に旗艦店をオープン。その取り組みについて森本俊樹 CEOは「ブランドとして大きな一歩だった。23年のデジタル広告施策の学びから、言葉やビジュアルだけでは伝わらない、実感を伴った体験を提供していきたいという思いが強まったことが発端だ」とコメント。同旗艦店は「ブランドを知ってもらうよいきっかけになっている」という。
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