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特集 CEO2025 ファッション編

【クイーポ 岡田敏社長】3つの事業でバッグのディストリビューターを目指す

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  • PROFILE: 岡田敏/社長
  • ライセンス、インポート、オリジナルの3本柱に OEMやODMの機能を拡充
  • 実現の可能性はゼロじゃない私の夢

PROFILE: 岡田敏/社長

岡田敏/社長
PROFILE: (おかだ・さとし)1960年富山県生まれ。82年、小杉産業(現コスギ)に入社。90年クイーポに入社。経理部・総務部配属後、営業本部長を経て、2009年に社長就任。岡田國久・創業者の意志を受け継ぎ、ファッションとエコロジーの融合を軸とした経営を行う PHOTO:KAZUO YOSHIDA

国内バッグメーカーの大手クイーポは、ライセンスビジネス全盛だった1990年代にオリジナルブランド「ゲンテン」をスタート。エコとファッション性を両立したブランドは、ビジネスモデルにおいても、ソーシャルグッドなブランディングにおいても先駆的存在となった。そんな会社が見通す、2025年のバッグ業界、そして会社の姿とは?

ライセンス、インポート、オリジナルの3本柱に
OEMやODMの機能を拡充

WWD:バッグ業界、そしてクイーポの2024年は?

岡田敏社長(以下、岡田):市場の二極化はますます進行し、売れるアイテムも多様化が進んでいる。バッグ業界は、企業やブランドごとの好不調が鮮明になっている印象だ。クイーポは新事業の推進に伴う新しい顧客の獲得と、既存事業の活性化で、売り上げは23年に比べて2ケタ増。為替も含めて外部環境は厳しいが、アフターコロナは成長を続けている。コロナ禍で推進したDXと職務の効率化で、構造改革やブランド・販路の見直しを進めることができた。当時から百貨店の平場が将来的に減ることは予測していたので、直営の強化とオリジナルブランド「ゲンテン」の活性化、そしてECを含むDXに取り組んできた。今の売り上げは、百貨店で全体の半分、直営店で2割、ECで2割、そのほかの事業で1割だ。

WWD:かつての主力だったライセンスブランドも堅調か?業界全体では、残存者利益を奪い合っている印象だ。

岡田:一世を風靡した「ユナイテッド カラーズ オブ ベネトン」で、我々はライセンスビジネスの良さも怖さも知った。今はいずれも順調だ。四半世紀以上続ける「アナ スイ」や「ダックス」は、企画担当者が独創性やクリエイティビティーを追求する一方で販売員の声を聞き、同質化することなく独自性を保っている。一方の「クレイサス」は、完全にマーケットイン。「今、求められているもの」を常に研究して、我々のモノ作りで品質を担保している。「ランバン オン ブルー」は、ランバン グループと提携する伊藤忠商事がブランドを育み、ライセンシー各社と共に元気だ。

WWD:とはいえ、かつて販路の中心だった百貨店の平場は減少している。

岡田:それでも地方などに目を向ければ、平場を大事にしている百貨店は今も多い。だが百貨店が消滅した県が増えていることを考えると、今後は専門店と深く取り組んだり、インポーターのように自社ブランドを集積したセレクト業態などを検討したりの必要があるだろう。

WWD:インポーターとしての役割も加速している。

岡田:「ゲラルディーニ」は、軽量素材中心だが、しっかり戦えている。軽くて扱いやすい“ソフティ”のバッグは、高齢社会が進行する中でますます重要になるだろう。レザーアイテムも売れており、今年はすでに2店舗の拡大が決まっている。「フォレ・ル・パージュ」は18世紀からの歴史と、アイコニックな“エカイユ”のモチーフでインバウンドに人気。東南アジアのファンが日本橋三越本店に大挙してくださっている。韓国ブランドの「ジョセフアンドステイシー」で20代を、「RSVP」で30代の高感度層を捉えたい。今後も新たな年齢層にリーチできそうな、独特の素材を使ったブランドがあれば、積極的にインポートしたい。ゆくゆくはインポートブランドを集積して、新しい時代の百貨店のコーナーを作りたい。

WWD:インポートが主体の平場は、7万〜10万円くらいのバッグを欲する百貨店の需要に応えそうだ。

岡田:構造改革の一環で、インポートブランドを担う事業部が立ち上がっている。

WWD:「ゲンテン」は、昨年25周年を迎えた。

岡田:日本にサステナブルなんて言葉がない頃から、エコロジーとファッションの両立を目指してきた。幸い、得意先が早々に賛同して下さって、ナイロンバッグ全盛の時代、若い世代には新鮮で、年配にはなつかしいバッグとして支持を集めた。タンニンなめしのレザーの研究を続け、「経年変化」という言葉を使った第一人者だと自負している。先代の岡田國久は常々、「『ゲンテン』で大海に波紋を投げかけたい」と話していた。エコロジーという言葉はサステナブルに変わったが、結果彼の言葉通り、世の中の多くのブランドは地球環境とファッション性を両立するようになった。上代を抑えるために構えたタイの自社工場を含め、25年前からサステナブルなブランドとして先行投資してきた「ゲンテン」を日本発信のラグジュアリーブランドにしたい。海外のラグジュアリーブランドに絶対勝てないのは、歴史だけ。それ以外は、「ゲンテン」ならではのラグジュアリーを定義して、課題を一つずつクリアしていけば、絶対に勝てると思っている。付加価値を追求して高価格帯の商品を作ったり、環境意識が高い若い世代にアピールしたりの努力を続け、「ゲンテン」を常に輝きを持ったブランドに誘いたい。

WWD:ライセンス、インポート、そしてオリジナル、数千円から十数万円まで、さまざまなブランドを取り扱う。

岡田:目指すのは、バッグのディストリビューター。ここにOEM、ODMの機能も加え、バッグのことならクイーポに相談しようという存在になりたい。

実現の可能性はゼロじゃない私の夢

『先代が夢見たゲンテン村』

先代が夢見つつも形にできなかった「ゲンテン村」の準備を進めたい。美術館や博物館を周り感性を磨いて、次の3代目が「ゲンテン村」を実現できる土台を作る。

COMPANY DATA
クイーポ

創業は1965年。ハンドバッグを中心としたファッションアイテムの企画・製造・販売を手掛け、創業60周年を迎えた。70年代には日本で初めてライセンスというビジネススタイルを始め、80年代からは数々のブランドと契約を結んで日本のバッグシーンをリードした。現在は「ゲンテン」などのオリジナルと、「アナ スイ」をはじめとしたライセンスブランドのほか、「フォレ・ル・パージュ」や「RSVP」「ジョセフアンドステイシー」などのインポートブランドを扱いタイに自社工場を構える。従業員数は200人


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クイーポ(代表)
03-3268-9111