PROFILE: 室賢治/社長

GARDE(ギャルド)はラグジュアリーブランドや百貨店、ホテル、オフィスなどの空間デザインとブランディングを手掛ける企業。特にラグジュアリーブランドの店舗設計においては国内トップシェアを誇り、世界11都市に事業拠点を構える。2025年に創業40周年を迎えた。
25年夏、西武池袋本店の
改装オープンも手掛ける
WWD:自社の強みをどう分析しているか。
室賢治社長(以下、室):世界の一流企業と数多く取引しており、信頼を得ている点が強みだ。ファッションでは、いわゆる3大コングロマリットを中心にインポートラグジュアリーブランドの店舗設計を80ブランド以上手掛けており、日本でトップシェアを誇っている。24年は新たな海外トップブランドとの新規契約もあり、可能性がより広がった。ほかにもGAFA系企業のオフィス、世界大手ホテルチェーン、レジデンスなどの内装設計を手掛けている。
WWD:シェアナンバーワンを維持する秘訣は。
室:ラグジュアリーブランドは、ジャパン社および本国のヘッドクオーターと信頼関係を築くこと。そのために常々意識していることが、顧客第一の姿勢とサービスのクオリティー向上だ。一流企業はジャンルを問わず、クオリティーを維持することが彼らのブランディング向上に何よりも直結する。当社は語学力と技術力に長けた少数精鋭のスタッフで、クオリティーを高めることを徹底している。
WWD:世界11都市に拠点があることも大きな特徴だ。
室:アジアから北米、欧州、中東まで主要都市にオフィスを構えている。24年11月には新たにインドネシアのジャカルタに拠点を作った。現地の建築事務所との提携で始動し、すでに依頼がかなり増えている。中国経済がここ1〜2年減速している一方で、コロナ禍以前から力を入れているASEANには大きな可能性を感じている。個人の消費意欲が高く、再開発投資案件も多い。
WWD:空間デザインにおいて重視していることは。
室:日本のミニマリズムの哲学だ。特に商業の空間においては、環境が語りすぎると本来の主役である商品が死んでしまう。ホテルも装飾過多は疲れるし、最近は長期滞在が主流なので、なおさら宿泊客の心を整えるミニマルな空間とホスピタリティーが求められている。機能性を残しながらミニマリズムを追求して削ぎ落とすアプローチは、技術力がないと安っぽくなってしまうため、難易度が高い。だからこそ、われわれの武器になっている。
WWD:24年の業績を振り返ると。
室:かなりの増収増益を達成した。多くのブランドが出店を加速し、さらにトップブランドは大型化と路面化が顕著だったことがその要因。売り上げ好調を背景に各社出店意欲が旺盛だったが、この傾向は日本に限られており、訪日客の恩恵に依る部分も大きい。日本人の購買が伴っていない状況を危惧しているブランドも少なくない。百貨店も本店や旗艦店の売り上げが絶好調のため、ブランド店舗の増床案件が続いた。25年も当社の業績は堅調が続くと見ているが、デベロッパーは建築コスト高騰で新規開業や改装を絞っている。楽観はしていない。
WWD:西武池袋本店の25年夏の改装オープンが業界内外で大きな話題だが、同店の設計も手掛ける。
室:西武池袋本店は内外装を担当している。私自身が百貨店の店舗デザイン部出身のため、百貨店の改装や出店は得意分野の1つ。これまで阪急うめだ本店の大規模改装や寧波阪急の立ち上げなどもご一緒してきた。VIPルームなど、顧客向けサロンの案件依頼も引き続き多い。
WWD:この1月には、新規事業としてニューヨークにアートギャラリーも開設した。その意図は。
室:創業40周年を記念する事業の一つとして、チェルシーに常設のギャラリーをオープンした。当社は空間デザインを本業としつつ、アーティスト支援にもこれまでも力を注いできた。09年には建築家やアーティストの社会的地位向上を目指した非営利団体ADF(青山デザインフォーラム)を設立し、創作活動をサポート。ホテルやレジデンスを設計する際、数多くのアートを施主に購入してもらうこともあり、現代アーティストとのネットワークが構築できている。ニューヨークに新設したギャラリーを通して、施主と作家をつなぐ場を提供したい。(観光名所でもある空中庭園の)ハイラインに直結する好立地で、240㎡のスペースにコンテンポラリーアートを展示する。このエリアはアジアの若手コンテンポラリーアーティストに限定したギャラリーが少なく、チャンスがあると期待する。ホテルやレジデンスだけでなく、ファッションブランドからも店内を飾るアートの問い合わせは多く、本業との親和性が高い事業だ。
WWD:改めて、25年の注力ポイントや戦略は。
室:空間デザインにおいては、長年仕込んできた大きなビジネスがいよいよお披露目できそうだ。ブランド店舗の大型化の流れは24年と同様に続くと見ている。取引先に対して顧客満足度を高め、ブランド価値向上に貢献して収益を上げていく。また、当社の認知度を上げる努力も強める。人材不足がますます深刻になる中で、人や働く環境に投資し、ここで働きたいとより強く思ってもらえる企業の姿を目指していく。
実現の可能性はゼロじゃない私の夢
宗教文化が息づく建築空間に身を置いて、都市では味わえない体験がしたい。きっかけは、昔観た映画の「セブン・イヤーズ・イン・チベット」。高山病などのリスクを伴い簡単には行けないような場所で瞑想をしたら、価値観が変わりそうだ。
1985年にギャルド21として創業。97年にミラノオフィスを開設し、イタリアブランドの日本市場出店をサポート。その後、ニューヨークやロサンゼルス、パリ、シンガポールなどに順次オフィスを開設すると共に、現地で法人登録。現在、世界11都市に拠点を構える。2018年に社名をGARDEに変更。20年に不動産仲介・売買サービス事業部を開設、23年に観光・地方創生事業、メタバース事業開始、24年エコバディスのサステナビリティ審査でシルバー取得
GARDE
03-3407-0007