1993年から上海在住のライターでメイクアップアーティストのヒキタミワさんの「上海日記」は、ファッションやビューティの最新トレンドや人気のグルメ&ライフスタイル情報を、ベテランの業界人目線でお届けします。2回目に取り上げるのは、高感度な上海っ子でトレンドとなっているビンテージ古着ブームを牽引する「ターミナル69(TERMINAL69、住所:徐汇区太原路167号B1)」を紹介します。意外な名前の由来と新展開も!?
名前の由来はなんと日本のVシネマ
上海の中心地に佇むアーカイブショップの「ターミナル69」は、1980~90年代のデザイナーズブランドを扱う独特なビンテージファッションの美学とサブカルチャーが凝縮されたスペースだ。ショップオーナーは北京出身の女性の通称69(リウジウ)。ちなみに店名の由来は1995年放映の日本のVシネマ「淫殺の虜」(監督:中上登美夫監督、主演:水谷ケイ)の中のキャラクター女性型サイボーグT-69からだとか。彼女のニックネームもこれしかり。
2015年に淘宝(タオバオ)でオンラインストアとしてスタートしたこのショップだが、「アイテムを実際に手に取ってもらいたい」という69の強い思いから、19年上海に約200㎡の実店舗をオープン、その後2度の移転を経て、昨年6月に現在の店舗へと再スタートを切った。
日本やヨーロッパ各地のビンテージ市場で高い評価を受けるアイテムを厳選し、希少な一点ものを揃えるセンスはもちろん、彼女のクリエイティビティと独自の視点が生み出すその空間は、上海のサブカルファッションシーンを牽引している。店内には「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」、「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」、「マルタン・マルジェラ(MARTIN MARGIELA)」、「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」など、アートピースのような個性と存在感を放つコレクションがずらりと並び、その数は5000点にも上る。
売れ筋は3000元(約6万3000円)前後
顧客層は地元のアーティストやファッションを学ぶ学生が中心で特に奇抜なデザインのアイテムが人気。価格帯は3000元(約6万3000円)前後が売れ筋だという。その他、雑誌やアーティスト、フォトグラファーへの貸し出しも意欲的に展開し、新たなクリエイションの発信地としても機能している。
「ターミナル69」は単なるショップの枠を超え、これまで多彩なイベントを開催してきたが、服で埋め尽くされた空間では表現の幅に限界があり、より自由にアイディアを具現化できる場を求めていた。そんな69の思いを形にしたのが、ショップに隣接してオープンした昭和レトロ全開のバー「交感天使」だ。パートナーの重美(しげみ)と共に手掛けたこの空間は、ショップとリンクしながらも独自の香りと世界観を放つ特別な場所となっている。
ちなみに69と重美の出逢いは14年「豆瓣」というサブカルやマニアの集まる異色なSNS上でのこと。お互いの趣味が一致し、北京の69と成都の重美はネット上で親睦を深めていった。そして17年、2人は東京で初対面、69自らのショップに重美をモデルに起用するなどお互いのセンスを認め合い、晴れてバーを開く運びとなる。バーの話は次回に続く・・・。