アーバンリサーチは1月30日、長崎県壱岐市(いきし)と「エンゲージメントパートナー協定」を締結した。同日アーバンリサーチの大阪本社で締結式を開いた。壱岐市が2022年に開始した「エンゲージメントパートナー協定」制度は「双方のビジョンに共感しより良くなるために貢献し合う状態を宣言すること」とし、目的要項を明確にした一般的な官民の連携協定よりも長期的かつ変容性の高い協力関係の構築を目指すというもの。アーバンリサーチは33件目のパートナー企業でアパレル分野では初。
壱岐市が2019年に主催した「SDGsフェス」にアーバンリサーチが出店したことをきっかけに交流が生まれた。本協定の下、まずは市民との対話や現地調査からはじめ、アーバンリサーチのリソースを活かせるニーズを探るという。国が定める「SDGs未来都市」に認定されている壱岐市のビジョンに沿って、衣類をはじめとする資源循環に向けての助言や、日本のモノ作りに着目した「ジャパンメイドプロジェクト」を通した地域産業との連携なども視野に入れる。またアーバンリサーチが長野県茅野市のキャンプ場で開催している「タイニーガーデンフェス」といった実績も背景に、壱岐市でのイベント開催などを通じて地域を盛り上げていく考え。
壱岐市は福岡県博多から船で1時間程度の距離に位置し、豊かな自然資本に恵まれた地域。人口は約2万人で、年間の観光客数は約50万人。篠原一生市長は、「壱岐市にはさまざまな文化資産があるものの、プロモーションの軸を確立できていなかった。アーバンリサーチには、市の魅力をアップデートすることに一緒に取り組んでもらえると期待したい」とコメントした。篠原市長は“カルチャーターミナル イキ”の標語を掲げ、島の文化発信に力を入れている。
一方、アーバンリサーチの竹村圭祐社長は「ファッションを軸にしたさまざまな経験やアクティビティーを提供できる企業を目指している。この取り組みを通して当社が目指す事業の展開にプラスになると考えた」と話した。今後、各地方の店舗をより地域性を反映させた店にしていこうというのが竹村社長の考えだ。その中で九州エリアのコミュニティーとつながる拠点として活かしてくことも狙いの1つだという。
昨今、ファッション企業と地方行政が協力してまちおこしに取り組む事例が増えている。セレクトショップ企業においてはビームスが先駆的に地方の魅力発掘に取り組む。24年にはユナイテッドアローズが茨城県境町と、デイトナ・インターナショナルが静岡県静岡市と包括連携協定を結んだ。人口減少や少子高齢化が共通の課題に挙げられるなか、ファッション企業に「これまでにない発想と解決策」が求められている。