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特集 CEO2025 ビューティ編

【イプサ 小田淳社長】肌・心・体への新領域 次世代の「イプサ」が始動

INDEX
  • PROFILE: 小田淳/社長
  • 「美的生命力」を引き出す取り組み強化
  • 実現の可能性はゼロじゃない私の夢

PROFILE: 小田淳/社長

小田淳/社長
PROFILE: (おだ・じゅん)1994年に資生堂に入社。97年にイプサの事業戦略本部で海外事業戦略の立案・オペレーション推進業務を担当。その後、2007年に資生堂に戻り経営企画部や国際事業企画部などを経て、15年にGPB事業本部事業戦略部兼グローバル事業推進部でSHISEIDO・CPBブランドの事業戦略の策定や事業マネジメントを担当。18年1月より現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

独自理論に基づく先進的な肌測定で一人一人に最適な美容法(レシピ)を提案しているイプサは、“ザ・タイムR アクア”や“ME(エム・イー)”などが百貨店の売り上げ上位に常にランクインするロングセラー製品を有する。一方でイノベーションを取り入れた新製品開発も精力的に行う。2025年もその技術力で、「肌に良いだけのスキンケアブランド」からの脱却を目指す。

「美的生命力」を引き出す
取り組み強化

WWD:2024年も話題の製品を続々と投入した。

小田淳社長(以下、小田):24年の売り上げは日本やアジア、中国を含め計画通りに着地した。期間中の大きなトピックスは24年2月にブランド最高峰化粧水“エッセンスローション アルティメイト”を発売したこと。化粧水は、ブランド内で長年売り上げNo.1のポジションをキープし続けている“ザ・タイムR アクア”や、拭き取り化粧水の“リファイニングローションe”など人気製品が多く、スキンケアや化粧水=「イプサ(IPSA)」というイメージが定着している。そこから「ベスト・オブ・ベスト」の化粧水を投入することで、そのイメージをより強めていきたいという考えのもと開発した。発売後は幅広い層に受け入れられ、他製品に比べてリピート率も高い。月を追うごとに販売数量が伸びて売り上げをけん引している。

WWD:ブランドの強みである肌測定器「イプサライザー」による測定・分析もスキンケアの売り上げの後押しになっているのか。

小田:創業当時から人が美しくなろうとする力「美的生命力」を引き出すことを目指し、店頭では肌のスペシャリストであるレシピストによるヒアリングと、「イプサライザー」の測定・分析を基に、お客さまに合わせたお手入れ方法「レシピ」を提案している。より楽しみながら肌測定をしてほしいという思いもあり、昨年からは“心の状態”の可視化にもチャレンジ。新測定として心の状態やライフスタイルを数値化・分析し、ライフスタイルに寄り添うアドバイスを提供している。こうした測定・分析は、コロナ禍を経てますます大事だと実感している。来店者の3〜4割は「イプサライザー」を試し、男性の利用も増加している。この領域は今後も大切にしていく。

WWD:メイクカテゴリーの売れ筋は?

小田:9月にはファンデーションをリニューアルし、“クリーム ファウンデイションe”を発売したところリニューアル前と比べて3〜4倍の伸びを記録。それと共にリキッドファンデーションも高い支持を得ており、課題だったベースメイクカテゴリーが活性化できている。ポイントメイクは、フェイスカラー“デザイニング フェイスカラーパレット”やリップカラー“リップオイルe LE”の限定色を発売し好評だった。現在の売り上げ構成は、スキンケアが7割でメイク類が3割。割合は現状のままキープし、全体の売り上げを伸ばしたい。そのためにスキンケア以外のアイテムもさらに充実させていくことは今年のテーマでもある。

WWD:展開店舗が多い中国の状況については。

小田:この2年間は厳しいというのが本音だ。いくつか理由はあるが、中国の経済自体が減速していることや、需要が高価格帯と低価格帯の製品に集中して消費が二極化したこと、中国のローカルブランドが台頭してきたことなどが大きい。そんな状況下でも“ザ・タイムR アクア”は根強い人気があったほか、ハリ感の不均一性に着目したクリーム“バウンス インテンス クリーム”やリキッドファンデーションが寄与。24年後半はプラスに戻り、25年以降のベースが出来上がったという手応えを得ることができた。店舗は選択と集中の段階で、ピーク時の100店舗を現在は約40店舗にまで絞った。強みであるオフラインの体験強化により質を向上させ、1店舗あたりの生産性は上がっている。日本や香港、台湾ですでに好評を博している“エッセンスローション アルティメイト”を12月に中国でも発売したが、例えば、「朝は“ザ・タイムR アクア”、夜は“エッセンスローション アルティメイト”を」というような日本でも成功したマーケティングは中国でも通用する。そういった良い事例を国を超えて展開するといういい流れも生まれてきている。訪日客にどこでも「このブランド見たよね」という印象を残すことは大事だ。

WWD:25年に目指すことは。

小田:次世代の「イプサ」をスタートさせる、そんな重要な1年になる。「イプサ」は肌への安心感や着飾らないシンプルさ、肌測定などが評価されている。もちろんそこは進化させつつ、肌・心・体のバランスと調和がとれた状態に導いたり、気持ちが下がっている自分をも受け止めて寄り添えたりするブランドにならなければいけない。肌・心・体については長年研究してきたエビデンスの蓄積ができているため、そのサイエンスの視点を盛り込みながら、ただ肌を良くするだけのスキンケアブランドから1歩抜け出す。そこで、1年をかけて構想したビジョンを5月に発表する予定だ。「スキンケアにとどまらずその先にチャレンジ」する新領域として、インナーケアではない新しいアプローチをスタートさせるので期待してほしい。

実現の可能性はゼロじゃない私の夢

『ハーフマラソン出場』

23年に足をけがし、続けていたジョギングを長らく休んでいた。「運動と美肌の関係性」に着目した美容液“イプサ セラム アクティブ”の発売を機に、ジョギングを再開。今年の終わりにはハーフマラソンへの出場を目指す。

COMPANY DATA
イプサ

1986年に資生堂の子会社として設立。設立と同時に誕生したブランド「イプサ」は、スキンケア、ベースメイク、ポイントメイクを日本、アジアの6つの国と地域で展開する。ブランド名の由来はラテン語で「自ら」「自発的な」を意味し、スキンケアは独自の肌測定とカウンセリングによって、レシピスト(美容部員)と共に一人一人に合わせて最適な美容法「レシピ」を作り上げていくのが特徴。ロングセラーアイテムは“ザ・タイムR アクア”や“ME(エム・イー)”など

TEXT : WAKANA NAKADE


問い合わせ先
イプサ
03-3405-2432