

良品計画が展開する「無印良品」は、1980年に誕生して以来、「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」という3つの視点を守りつつ、本当に必要なものを本当に必要な形で提供することを目指し、商品の本質を追求するものづくりを続けてきた。顧客生活に寄り添うブランドになり、「これでいい」と納得して選ばれることを哲学とする。
食料品、化粧品、家具などさまざまなラインアップをそろえる中で、衣料品と生活雑貨にのみ「MUJI Labo」という別ラインが存在する。「無印良品」が考えるベーシックな日常着を生み出すために、核となる素材選びとそれに合うデザインを “実験”し、最新の成果を商品として発表するラボ(実験室)のような存在だ。レギュラーの「無印良品」と比べると生産数は少ないが、その分、素材やデザインにこだわりを持つ人に納得してもらえるような仕上がりになっている。
「MUJI Labo」は2005年に始まり、「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」を手掛けるアングローバル社(現TSI)との共同企画や、「N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)」の尾花大輔デザイナーをデザイン・ディレクターに迎えるなどリニューアルを繰り返してきたが、24-25年秋冬シーズンに再び体制を一新。「無印良品」の商品開発の強みを理解する社内メンバーでデザインすることで、サプライチェーンの強みを最大化するべく、原料や産地の調査担当者とデザイナーが二人三脚で取り組むチーム編成となった。ブランドの世界観を表現する店舗として「無印良品 代官山」も24年10月に開いた。
全てのはじまりは素材から
リニューアル後2シーズン目である25年春夏コレクションは、“和紙”“コットン(ループウィール編み機)”“リネン&ラミー”が素材のキーワード。カラーパレットは黒、生成り、白、グレー、ベージュなどの定番色で構成しており、普段使いしやすいだけでなく、素材の表情が分かりやすいという良さもある。「『MUJI Labo』ではない他ブランドのお気に入りの一着を引き立てる土台としても活躍するだろう」と企画担当者。全85型のうちユニセックスアイテムはわずかで、男女それぞれの身体構造にフィットする商品を展開するためにウィメンズとメンズを分けている。
ウィメンズアイテムのこだわり

「MUJI Labo」2025年春夏コレクションから

「MUJI Labo」2025年春夏コレクションから
ウィメンズでは、和紙混のカルゼ生地を使用したジャケット(1)とパンツ(2)のワークウエア風セットアップや、和紙とポリエステルを撚り合わせた糸で編んだシャツワンピース、経糸にシルク、緯糸にリネンを配して滑らかな肌触りをかなえたリネンシルクブラウス(3)など、肌離れの良さと通気性の高さを兼ね備えた春夏シーズンにふさわしい素材使いが魅力だ。特に和紙は、「驚くほど軽く、汗をかいても清涼感がある」と企画担当者は太鼓判を押す。ラミー地のタックスカート(4)は、職人の手仕事で細かくタックを取り、シワになりやすい性質を解消するデザインにした。

1.“婦人 和紙混カルゼジャケット”(9990円)
2.“婦人 和紙混カルゼパンツ”(9990円)

3.“婦人 リネンシルク長袖ブラウス”(9990円 ※4月下旬発売予定)
4.“婦人 ラミータックスカート”(1万2900円 ※2月中旬発売予定)

1.“婦人 和紙混カルゼジャケット”(9990円)

2.“婦人 和紙混カルゼパンツ”(9990円)

3.“婦人 リネンシルク長袖ブラウス”(9990円)
※4月発売予定

4.“婦人 ラミータックスカート”(1万2900円)
※2月中旬発売予定
メンズアイテムのこだわり

「MUJI Labo」2025年春夏コレクションから

「MUJI Labo」2025年春夏コレクションから
メンズでは、ウィメンズ同様に和紙混の生地によるセットアップとプルオーバーの他、リネンにウールを混紡してソフトな風合いを持たせたジャケット(5)とストレートパンツ(6)も登場。ループウィール編み機で空気をたっぷりと含ませながら編み立てた長袖Tシャツ(7)やスウェットプルオーバー(8)、タンクトップは、ふっくらとした風合いで、1枚で着ても様になる肉厚なボディーが特徴だ。また、スーツスタイルに合わせやすいシャツ類を、ポプリンやコットン、リネンシルクで仕立て、選べる楽しさを演出した。

5.“紳士 リネン混ウールジャケット”(1万5900円)
6.“紳士 リネン混ウールストレートパンツ”(1万2900円)

7.“紳士 昔ながらの製法で編み立てたミニ裏毛クルーネック長袖Tシャツ”(4990円)
※2月中旬発売予定
8.“紳士 昔ながらの製法で編み立てたスウェットフルジップパーカ”(7990円)
※3月中旬発売予定

5.“紳士 リネン混ウールジャケット”(1万5900円)

6.“紳士 リネン混ウールストレートパンツ”(1万2900円)

7.“紳士 昔ながらの製法で編み立てた
ミニ裏毛クルーネック長袖Tシャツ”(4990円)
※2月中旬発売予定

8.“紳士 昔ながらの製法で編み立てた
スウェットフルジップパーカ”(7990円)
※3月中旬発売予定
素材第一のクリエイションとは?

盛喜一郎/良品計画 衣服・雑貨部 大型店企画Labo担当 (左)
PROFILE:(もり・きいちろう)アパレル企業で18年勤務し、ショップの販売員やMD、営業、生産を経験する。2018年に良品計画へ入社。生活雑貨のMDを経て、その後店舗販売職に3年間携わる。22年から「MUJI Labo」のMDを担当する
樋口直人/良品計画 産地開発部産地開発担当課長(右)
PROFILE:(ひぐち・なおと)1997年、良品計画に入社。各地の店舗で販売員として経験を積んだ後、店長やエリアマネージャーとして勤務。2007年に衣服・雑貨部で商品開発に携わった後、海外事業部でロンドン駐在や黎明期の中国事業に携わる。現在は産地開発部でグローカル素材の開発を担当する
PHOTO :TAMEKI OSHIRO

盛 喜一郎/良品計画 衣服・雑貨部 大型店企画Labo担当 (左)
PROFILE:(もり・きいちろう)アパレル企業で18年勤務し、ショップの販売員やMD、営業、生産を経験する。2018年に良品計画へ入社。生活雑貨のMDを経て、その後店舗販売職に3年間携わる。22年から「MUJI Labo」のMDを担当する
樋口直人/良品計画 産地開発部産地開発担当課長(右)
PROFILE:(ひぐち・なおと)1997年、良品計画に入社。各地の店舗で販売員として経験を積んだ後、店長やエリアマネージャーとして勤務。2007年に衣服・雑貨部で商品開発に携わった後、海外事業部でロンドン駐在や黎明期の中国事業に携わる。現在は産地開発部でグローカル素材の開発を担当する
PHOTO :TAMEKI OSHIRO
「MUJI Labo」のデザイナーは、素材探しを専門で行う社内部署と連携しながらコレクションを製作する。“素材にこだわったものづくり”とは世間でよく耳にする言葉だが、具体的にどんな内容なのか。担当者2人に聞いた。
「良品計画は2年前に素材のプロフェッショナルを集めた産地開発部を新設し、世界中の産地を直接巡って原料を探し出す試みを始めた。既存の商品のアップグレードではなく、“ゼロイチ”でのものづくりを重視しているため、われわれが探しているのは特定の国や地域では日常的に使われているが、まだ世に出ていないものや、業務用でしか使われていないものだ。例えばカシミヤであればモンゴルまで探しに行くし、ベストな原料が見つかれば、それらを用いてどんな糸や生地を作れるかというレシピまで編み出してしまう。『MUJI Labo』のデザイン室は良品計画の産地開発部がリサーチした素材をもとに、『今回はどんな実験をしよう?』とデザインに取り掛かる。」
2025年春夏の注目3素材

ループウィール編み機を用いた“紳士 昔ながらの製法で編み立てたスウェットフルジップパーカ” (7990円)

ループウィール編み機を用いた“紳士 昔ながらの製法で編み立てたスウェットフルジップパーカ” (7990円)
「無印良品」は、オーガニックコットンを日本に浸透する前からアイテムに採用するなど、素材に注目して川上起点で考えるものづくりが強みの一つ。産地開発部が25年春夏の“実験”のためにセレクトした素材を取り上げたい。サプライチェーンを知った上での素材選びであり、トレーサビリティーも担保している。
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雑貨アイテムも充実
「MUJI Labo」の小物は「無印良品」のアーカイブをもとに、細かな点まで配慮。共同開発により他ブランドの知見を取り入れたアイテムもある。ブランドのレガシーを引き継ぎ、新たにアップデートしようとする意思を感じる2アイテムをピックアップ。
レザーローカットスニーカー

“レザーローカットスニーカー”(1万9900円)

“レザーローカットスニーカー”(1万9900円)
「カンペール(CAMPER)」との共同開発で生まれた。「MUJI Labo」の産地開発部が、歴史ある生産背景を持つブランドとして「カンペール」に注目。足を締め付けない木型や、アッパーのレザー(牛革)ファブリックとラバーソールを手仕事で接着させる「バルカナイズ製法」を採用した。今回特別に、クッション性を保ちながらも軽い履き心地をかなえるオリジナルソールを共同開発。ゴム製のシューレースも含めてストレスフリーな牛革スニーカーに仕上がった。3月中旬発売予定。
アルミハードキャリーケース

“アルミハードキャリーケース”(大サイズ9万9000円、小サイズ7万9000円)

“アルミハードキャリーケース”(大サイズ9万9000円、小サイズ7万9000円)
2017年発売のアルミハードキャリーケースをリバイバルした。60リットルの大サイズと34リットルの小サイズをそれぞれシルバーとブラックの2色で500個限定販売。プロダクトデザイナーの深澤直人による約10年前の名作の復刻を望む声が多数寄せられたことが背景にある。双輪のキャスターが滑らかな動きと安定性を実現する他、ボディーとハンドルのカラーをそろえてミニマルな印象を持たせた。機能性とデザイン性を兼ね備えている。3月発売予定。
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無印良品 代官山
03-5422-3250