半年前のプレタポルテに呼応したかのように、2025年春夏オートクチュール・コレクションは、“クワイエット・ラグジュアリー”の終焉を印象づけた。こと有力メゾンは改めてクチュールの本質に立ち返って、夢に傾倒。デザイナーはクチュールに強い思いを込め、夢を華麗に、鮮やかに印象付ける花や色、そして光を多用した。主要ブランドのコレクションを一挙に紹介する。(この記事は「WWDJAPAN」2025年2月10日号からの抜粋です)
「ディオール(DIOR)」
DESIGNER/マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)
トピアリーのようなドレスで
ディオールやサンローランに敬意
未来は気にせず今を謳歌したものの、クチュールへの敬意を表して過去には目を向けた。コルセットやクリノリン、ムッシュ ディオール(Monsieur Dior)が1952-53年秋冬クチュールで発表した“ラシガール”を着想源とした彫刻的なヒップラインなどの立体的なシルエットに、チュールやシフォンで作った花のほか、織り込んだ花の形にカットしたレースなどを絡め、トピアリーのようなドレスに仕上げた。“ラシガール”シルエットを描いた際に多用したモアレ生地のコートや、シフォンのベビードールドレスには、後継者イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)の“トラペーズ”ラインを採用。会場の壁のように動植物が共生する楽園のイメージを描いた。
「シャネル(CHANEL)」
DESIGNER/デザインチーム
女性の1日&半生を
虹色でカラフルに描く
多くの人が「虹がかかった」と評したコレクションは、「愛は色を持つ」というココ・シャネル(Coco Chanel)の言葉を借り、さまざまな色と戯れた。女性の半生や1日もなぞらえているようなコレクションは、生まれたばかりの夜明けのようなピュアホワイトでスタート。次第にパステルやビビッドカラーに染まり、やがて日没とともに黒が増える。フィナーレは、ウエディングだ。結婚するまでの半生だからこそ、ツイードのセットアップはミニ丈でフレッシュ。インナーにはシフォンのブラウス、ジャケットルックの合間にも同素材のドレスを挟んで、あくまでも軽やか。マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)のデビューは10月のプレタポルテなので、次回のクチュールもデザインチームだ。
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