PROFILE: 中内康裕/三村小松法律事務所 弁護士

「パリコレ詐欺」について問題提起した後藤洋平「朝日新聞」編集委員のインタビュー記事を「WWDJAPAN」が2月3日号に掲載したところ、SNSなどを中心に大きな反響があった。その反響の多くが、「パリコレ」という言葉の意味を誤認させるような使い方を問題視する声だった。多くの人が問題点を認識する「パリコレ問題」は、法規制が可能なのか。知的財産や広告規制に詳しい2人の弁護士に見解を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年2月17日号からの抜粋です)
「パリコレ」という言葉の著名性が
差し止めのカギになるか
WWD:中内弁護士は、パリ・ファッション・ウイーク(以下、PFW)に正式に参加しているブランドが主催団体のフランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(通称:サンディカ)と交わす契約をチェックすることもあるそうだが、どういった内容が盛り込まれている?
中内康裕弁護士(以下、中内):SNS掲載時の規定なども盛り込まれていますが、契約書の大半は、ショーで起用するモデルの労働時間や年齢に関する規定など、いわゆるウェルビーイングに関する内容です。モデルだけでなく、ヘアメイクなど、ブランド外のプロフェッショナルを起用する際の規定も盛り込まれています。
WWD:「PFW」という名称は、サンディカが商標権を保有している。あるドライヤーメーカーは一時期、自社商品に関するプレスリリースなどに「パリコレ(PFW)で採用」と記載していた(※現在は表記を修正している)。このように、いわゆる“公式スケジュール”に参加していないブランドが「PFWに出た」「PFWで採用された」とうたうと問題になる?
中内康裕弁護士(以下、中内):商標出願する際は、登録する商標を使う商品やサービスが属する「区分」を指定する必要があります。サンディカは、「PFW」を雑誌や新聞などの印刷物が該当する16類、広告業や被服小売業、職業のあっせんなどが該当する35類、そしてファッションショーの開催などが該当する41類の区分で登録しています。したがって、他者がこれらの区分内で「PFW」という名称を無断で使用すると商標権の侵害になり、サンディカから使用の差し止めを求められた場合は使用を中止する必要がありますし、裁判で損害が認められれば賠償しなければいけません。
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