「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」がニューヨーク現地時間の2月11日に2025-26年秋冬コレクションを開催した。
今シーズンのテーマは“デガジェ・シック(洗練された上品さ)”。会場となったチェルシー地区にあるターミナル・ウェアハウスは、1990年代を象徴するナイトクラブ、「トンネル・ナイトクラブ」があった場所だ。ブリックスタイルの内装の天井からは大きな日本製のランタンが吊るされ、至る所にアートピースのような調度品やミッドセンチュリーの家具が飾られている。アットホームな印象を与えるこの内装は、先日マディソン・アヴェニューにオープンした同ブランドの店舗の内装ともリンクする。
コレクションの前日、ショールームで行われたメディア向けのカンファレンスでマイケル・コース(MICHAEL KORS)は自身のビーチハウスやアパート、ミューズとなるセレブリティの写真が貼られた今季のムードボードを指差しながらこう話した。「これらは私の家の延長だ。マディソン・アベニューにオープンした店舗もそうだし、明日のコレクション会場も同様。(インテリアデザイナーの)ジョージ・ナカシマやイサム・ノグチのような美しいラインを保ちながら、温もりを感じさせるもの。混沌とした世界だからこそ、人々に温もりや心地よさを感じてもらいたい。同時に、袖を通した時に自信が持てる服。手に触れた時に贅沢さを感じるような、特別で、時代を超えて価値が届くものを届けたいという考えが、コレクションの出発点となった」。
アメリカン・ファッションの
快適さと上質な素材が融合
ムードボード上のローレン・ハットンやユマ・サーマン、シャロン・ストーンなど、コースのミューズたちの写真を一瞥してこう続ける。「彼女たちの写真は70年代のものだったり、2000年代のものだったり。最近のものもある。不思議なのはどれを見ても彼女たちがタイムレスだってこと。シックでありながらリラックスしている。アメリカのファッションについて考えた時、この国のファッションは”快適さ”を求めるところから始まった。着心地がよく、長く愛せて、時代を超えて生き続けるものを求めている。だから、デザインはクラシックな要素に遊び心を加えて解釈することから始めた。つまりネオクラシックってこと」。
レイヤードと流麗さで
「魅せる」センシュアル
クラシックなメンズ仕立てのジャケットやコートには、シルクジョーゼットのシャツやウールのスカートといった、ソフトな素材で作られたアイテムを合わせることで女性らしさを加えた。「断片的なプロポーション」を意識したという今季は、アシンメトリーなシェイプにすることでモデルがランウェイを歩いた際、風になびくようなエレガントさを演出。トレンチの概念を再構築したコートはストラップがリボンのように揺れ、ロングヘアのシアリングコートやバッグも動きに合わせて軽やかに揺れるなど、柔らかさにフォーカスした。
ディテールではグレンチェックのトロンプルイユのコートやジャケットの一部にビジューの刺しゅうを施すなど、洗練された手仕事も健在だった。カラーパレットもタイムレスなブラックはもちろん、定番のキャメルやブラウンに加え、ダークグリーンやトープも華を添えた。そうした色味が乗ったダブルフェイスのメルトンコートやウールカシミアのコートやポンチョは、まさに快適さとエレガントさを兼ね備えている。スパンコースのドレスにはフラットシューズを合わせたり、スポーティーなランジェリーとテーラードを合わせたりと、いい塩梅で抜け感を出した。
前シーズン、「若い層も大統領選の投票に行くように」とカンファレンスの最後に述べていたコース。「政権が変わったことで女性の服装は変わるのか?」との問いにも答えた。「政治的立場に関係なく、パワフルな女性の多い社会だから、間違いなくパワードレッシングが見られるでしょう。自分たちの装いについてもきちんと考えるし、テーラードはなくならない」。