「トリー バーチ(TORY BURCH)」は現地時間10日、2025-26年秋冬コレクションをニューヨークで発表した。春夏に引き続き、クラシックとアメリカンスポーツウエアの融合がテーマ。素材・シルエットでひねりや遊びを加え、トリー・バーチが考える「現代女性のためのクラシック」を体現した。会場はニューヨーク近代美術館(MoMA)だ。
「女性たちは、自分だけの“クラシック”を定義している」。
「トリー バーチ」の近年のコレクションは、そういったデザイナー自身の考えがしっかりと息づき、また手応えを得ながら前進しているように思える。
リアルクローズから逸脱しない
“アクセシブル・モード”
袖口を大胆に広げたバンカーシャツ、袖を切り込み、ねじり、肩でピン止めしたカーディガン。シャツドレスは身体に沿うように、螺旋状のシルエットを描く。立体的なカットアウトドレスはコーデュロイ素材で仕立てた。根底にはベーシックがありながら、窮屈なルールは感じさせない。
「トリー バーチ」は15年にスポーツウエアラインの“トリー スポーツ コレクション”を立ち上げた。そのエッセンスはメインコレクションにも滲み出ている。コロナ禍でのコンフォートウエアへの関心の高まりも、トリーに影響を与えたようだ。躍動的なシルエットや機能美が、「トリー バーチ」のクリエイションを一段引き上げた。
波打つようなラッフルスカートを合わせたジャケットスタイルは、ハリのある素材もあいまって、見た目は至極コンフォート。ジップアップのフリースはニードルパンチしたウールのニュアンス感が、ニットドレスはスパンコールがトロンプルイユ(だまし絵)のように浮かびあがる仕掛けが面白い。スウェットパンツとラグビーシャツは、日本製のやわらかいジャージー素材で仕立てている。
シルエットや素材は遊びが利いている。だがさじ加減の妙で、リアルクローズの範疇からは逸脱しない。多くの女性が挑戦できそうな“アクセシブル・モード”だ。海外ファッションメディアやジャーナリストも、クラシックを再解釈しながら一皮、二皮と剥けていくコレクションを、中世ヨーロッパの「ルネサンス」になぞらえ、“トリッサンス”と形容・評価している。
ランウエイの進化を
日本の売り場でも表現を
とはいえ、売り上げの主軸を担うのはバッグだ。昨年末の発売からスマッシュヒットしている“ロミー”はコニャックスエードとフェイククロコの新素材で登場した。シグネチャーの“エレノア”は「枕のように」柔らかいレザーで再構築し、新鮮味を加えた。新作の“ピアスバッグ”はその名の通りバッグが大きなピアスを取り付けたようなユニークなデザイン。程よいアクセントが、日本市場でも受け入れられそうだ。
アクセシブル・ラグジュアリーの一角をなすブランドとして、日本でも高い人気・知名度の「トリー バーチ」。だがウエアの取り扱いは一部の店舗に限られ、ショーの世界観が消費者には伝わりにくいのは残念だ。日本ではよくも悪くも、フェミニンで育ちの良さそうな、グッドガールなイメージが強い。まずはポップアップなどの形で積極的にウエアを訴求し、新しい世界観を見せることができれば、顧客の幅もより広がるだろう。