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エルメス、24年も2ケタ増収で着地 “ラグジュアリー減速”の中でも強さを発揮

INDEX
  • アクセル・デュマCEOのコメント
  • ウォルマートが販売した“バーキン”の模倣品について言及
  • 関税が引き上げられれば「価格に転嫁せざるを得ない」
  • ブランド買収による“コングロマリット化”の予定はないと明言
  • 好業績を受けて全従業員に71万円の特別ボーナス

エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL以下、エルメス)の2024年12月期決算は、売上高が前期比13.0%増の151億7000万ユーロ(約2兆4120億円)、営業利益は同8.8%増の61億5000万ユーロ(約9778億円)、純利益は同6.8%増の46億300万ユーロ(約7318億円)の増収増益だった。

地域別の売上高は、フランスが同13.6%増の14億4700万ユーロ(約2300億円)、フランス以外のヨーロッパは同18.1%増の21億4700万ユーロ(約3413億円)だった。いずれも現地の顧客および観光客による需要が好調だった。北米が好調な南北アメリカは同14.5%増の28億6500万ユーロ(約4555億円)だった。日本以外のアジア太平洋地域は、景気停滞が続く中国市場を抱えているものの、同6.0%増の66億4800万ユーロ(約1兆570億円)で着地。円安によるインバウンド消費と現地顧客の需要の両方が好調だった日本は、同14.0%増(現地通貨ベースでは22.5%増)の14億3700万ユーロ(約2284億円)だった。

カテゴリー別での売上高は、主力のレザーグッズが同16.4%増の64億5700万ユーロ(約1兆266億円)、衣料・アクセサリーが同13.6%増の44億500万ユーロ(約7003億円)といずれも2ケタ成長を維持。シルク・テキスタイルは同1.9%増の9億5000万ユーロ(約1510億円)、香水・ビューティは同8.7%増の5億3500万ユーロ(約850億円)と増収だったが、景気回復が遅れている中国市場の影響を受けたウオッチは同5.6%減の5億7700万ユーロ(約917億円)だった。

アクセル・デュマCEOのコメント

アクセル・デュマ(Axel Dumas)最高経営責任者(CEO)は、「経済上および地政学上の先行き不透明感がさらに増している中、24年も安定した業績を残せたことは、エルメスのビジネスモデルの強さを示している。また、機敏に対応してくれたチームに心から感謝する。事業のバランスおよび雇用主としての責任を維持しつつ、今後も当社の基本的な価値観である高い品質、クリエイティビティー、サヴォアフェール(受け継がれる職人技や美意識)をいっそう追求していく」と語った。

同氏は「エルメス」の強さの秘訣として、忠誠心の高い顧客の存在が大きいと指摘。「現地の顧客を大切にした小売り戦略や、(品質に対する)高い信頼性が成功の要因だと考えている」と述べた。

ウォルマートが販売した“バーキン”の模倣品について言及

同氏はまた、アナリスト向けの決算説明会で、米小売最大手ウォルマート(WALMART)が24年12月にEC上で販売し、「エルメス」の“バーキン(Birkin)”にデザインがそっくりだとしてSNSなどで大きな話題を集めた60~300ドル(約9120~4万7000円)のバッグについて言及。「当社は模倣品対策に真剣に取り組んでおり、模倣品に対しては弁護士らと共に全力で闘う」と“公式の回答”を示した上で、「個人的には、当該のバッグに対するメディアの注目度の高さに苛立ちを覚えつつも、購入した人々の心情は理解できる」と話した。「当該のバッグを本物だと思って購入した人は誰もいないだろう。品質の差は一目瞭然で、混乱を招く余地はない。『エルメス』に敬意や憧れを抱きつつも手が届かないので、ひとまず手の届くもので夢を見たいという人々の気持ちには胸を打たれる部分もある」。なお、当該の商品は完売しており、現在ウォルマートのオンラインストアには掲載されていない。

関税が引き上げられれば「価格に転嫁せざるを得ない」

ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が行う可能性がある、欧州製品に対する関税の引き上げについては、「懸念事項だ」と回答。これに備えて、在庫を予め米国内に集めるなどの対策は取っていないため、関税が引き上げられた際には価格に転嫁せざるを得ないだろうと説明した。一方で、米国の顧客は他国との価格差を比較することに慣れており、「エルメス」の商品を入手するために旅行することを厭わない得意客も多いため、過剰な心配はしていないと付け加えた。

なお、米国ではロサンゼルスの山火事やフロリダ州のハリケーンの影響で休業している店舗もあるが、業績への長期的な影響はない見込みだという。

以前から期待されている「エルメス」のオートクチュールについては、開発に時間をかけていることから、26年後半~27年前半の発表になるのではないかとの見解を示した。また、ビューティ部門におけるスキンケア商品のローンチについては、まだ商品開発の段階にあるとし、発表時期については明らかにしなかった。

ブランド買収による“コングロマリット化”の予定はないと明言

同氏はまた、競合他社のようにブランドを買収して“コングロマリット化”する予定はないと明言。「『エルメス』の運営をどうすべきはよく分かっているが、それ以外のブランドについてもそうだとは言い難い。また、ほかのブランドに『エルメス』のビジネスモデルを当てはめても、成功するとは思えない。当社の場合、ブランドの買収は逆効果となるだろう」とし、引き続きジュエリーやシューズの工房に投資して垂直統合を進めていくと述べた。

好業績を受けて全従業員に71万円の特別ボーナス

ラグジュアリーセクターは、23年から需要が世界的に“正常化”し、24年には減速傾向となっている。ラグジュアリー市場をけん引するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)の24年12月期決算は、売上高が前期比1.7%減の846億8300万ユーロ(約13兆4645億円)、営業利益は同16.2%減の189億700万ユーロ(約3兆62億円)、純利益は同17.3%減の125億5000万ユーロ(約1兆9954億円)と減収減益に。不調が続く「グッチ(GUCCI)」を擁するケリング(KERING)も、24年12月期の売上高は同12.1%減の171億9400万ユーロ(約2兆7338億円)、営業利益は同50.2%減の23億1200万ユーロ(約3676億円)、純利益は同62.0%減の11億3300万ユーロ(約1801億円)と大幅な減収減益だった。

両社と比較すると、ラグジュアリー市場が減速する中でも増収増益を維持したエルメスの強さが際立つ。こうした好業績を受け、同社は従業員全員に4500ユーロ(約71万円)の特別ボーナスを支給するという。なお、同社は24年にもやはり4000ユーロ(約63万円)の特別ボーナスを支給している。

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