ルックホールディングス(HD)は3月28日付で、次期社長に専務取締役の渋谷治男氏(60)が就任する。多田和洋現社長(同)は代表権を持つ会長となる。17日に開かれた同社の2024年12月期決算会見では、多田氏が15年からルック、18年からルックHDを率いてきた10年間を振り返った。
社長交代について問われた多田氏は、「僕が就任してからもう10年が経つ。そろそろバトンタッチするのに適切なタイミングだ。経営における意思決定のパターン化を防ぐことは(社長交代の)目的の一つ」と説明した。社長としての10年間の成果については、「就任直後は、かなり厳しい経営状態だったが、ある程度経営を安定させることができたと思う」と述べた。
ターニングポイントは、19年の伊イルビゾンテの子会社化だった。「100億円を超える大型投資だったが、結果的に当社の収益性にとってかなりのプラスになった」と手応えを話す。「イル ビゾンテ」については、子会社化する以前から国内販売権を取得(10年)して展開してきたが、それを現場で主導したのが多田氏だった。それだけに、「グループに迎え入れることができたことへの喜びもひとしおだった」という。「そして新型コロナという危機を、人員、給与のカットを一切することなく乗り切ることができた」と振り返った。
30年来の“戦友”
多田氏と次期社長の渋谷氏は同い年で、ルックでは約30年来の“戦友”。まだ同社が百貨店アパレルビジネスを主力としていた頃から、黎明期のインポートビジネスを担う「ブティック事業部」に所属し、事業拡大に向けて二人三脚で仕事をした。00年代以降、百貨店市場の縮小に伴い、同社はライフスタイルブランドを含めたインポーター(輸入販売事業)へ本格的にビジネスモデルを転換。05年に「マリメッコ(MARIMEKKO)」の独占販売権を取得、08年に「アー・ペー・セー(A.P.C.)」の日本法人を設立、10年に「イル ビゾンテ」の国内販売権を取得するなど、成長性のある海外ブランドの目利きをしながら、今に続く収益の礎を作った。その中心にいたのが多田氏と渋谷氏だった。
当時の経験から、多田氏は「彼(渋谷氏)にはグループを引っ張っていくだけの経験、人格、リーダーシップ、そして海外パートナーとの交渉力がある」と全幅の信頼を寄せる。「当社グループのポテンシャルを考えれば、まだまだ企業価値を向上できるはず」との期待に、渋谷氏も「阿吽の呼吸で経営を舵取りしていきたい」と応えた。
24年12月期は韓国苦戦
なお、ルックHDの24年12月期通期連結業績は、売上高が前年同期比1.3%減の547億円、営業利益が同17.5%減の25億円、純利益が同21.7%減の19億円だった。主力の韓国事業が冬物販売で苦戦し、同2.5%の減収。国内事業は同2.0%の増収となるもカバーしきれなかった。25年12月期予想はおおむね前期並みを見込み、売上高が前期比横ばいの550億円、営業利益が同2.7%増の26億円、純利益が同3.9%増の20億円を計画する。