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高級EC「ネッタポルテ」、中国市場から3月20日に撤退 親会社YNAPの買収やECブームの下火などを背景に

INDEX
  • 「ネッタポルテ」とその中国事業について
  • YNAPが中国市場から撤退する理由
  • YNAPを買収した「マイテレサ」は中国事業を強化

ラグジュアリーEC大手ユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)は、中国大手EC企業のアリババ(ALIBABA)と設立した合弁会社フェンマオ(FENGMAO)を3月20日付で終了することを明らかにした。フェンマオは、YNAPが擁する高級EC「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」の中国事業として2018年に設立されたが、24年6月には近日中に終了するのではないかと複数の海外メディアが報じていた。

フェンマオの終了に伴い、中国市場における「ネッタポルテ」のECチャネルは全て閉鎖する。これにはアリババが運営するECサイト「Tモール(TMALL)」、ウィーチャット(微信、WeChat)上のミニプログラム、中国版インスタグラムの「シャオフォンシュウ(Xiaohongshu、小紅書)」、中国版TikTokの抖音(Douyin、ドウイン)などにあるショップが含まれるが、アフターサービスは4月22日まで提供するという。

「ネッタポルテ」とその中国事業について

YNAPは、コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)の子会社だったネッタポルテが、15年にユークス グループと合併して誕生。ウィメンズを中心とした「ネッタポルテ」、メンズの「ミスターポーター(MR. PORTER)」、リーズナブルな価格の「ユークス(YOOX)」に加えて、ディスカウントECの「アウトネット(THE OUTNET)」を運営している。リシュモンはYNAPの株式の49%を保有していたが、18年に残りの株式を買い付けて完全子会社化した。

ネッタポルテは13年に中国に進出し、15年に中国事業を設立。「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」「クロエ(CHLOE)」などを擁するリシュモンはその後、本格的に中国市場に進出するべく、18年にアリババと戦略的パートナーシップ契約を締結してフェンマオを設立した。

YNAPが中国市場から撤退する理由

中国では、「シャオフォンシュウ」などのSNSやライブ配信での販売が急激に台頭し、「Tモール」をはじめとするECは厳しい競争に直面。その後、コロナ禍が落ち着いて実店舗への客足が戻ったこともあり、中国でのECブームは下火となった。こうした状況を背景に、YNAPは資金やリソースをコア事業およびより収益性の高い地域に集中させるべく中国市場からの撤退を計画しており、フェンマオ事業の終了はその一環と見られている。それに加えて、リシュモンがYNAPを売却したことも影響しているだろう。

リシュモンは23年8月、YNAPの株式の47.5%を高級ECのファーフェッチ(FARFETCH)に売却することに合意。しかし、取引が成立する前にファーフェッチが経営破綻の瀬戸際にあることが判明し、同年12月に韓国の大手EC企業クーパン(COUPANG)が買収。これを受けてリシュモンは取引を中止した。その後、24年10月、ドイツの高級ファッションEC「マイテレサ(MYTHERESA)」を運営する持株会社MYTネザーランズ ペアレント B.V.(MYT NETHERLANDS PARENT B.V.)がYNAPの株式を100%取得した。

同取引は25年上半期に完了する見込みで、それを機にMYTネザーランズ ペアレント B.V.は社名をリュクスエクスペリエンス(LUXEXPERIENCE)に変更する。主力のECサイト「マイテレサ」の名称は存続する。

YNAPを買収した「マイテレサ」は中国事業を強化

「マイテレサ」は中国事業を強化するべく、24年7月に新たなグレーターチャイナ地域担当社長として、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のグレーターチャイナ地域EC担当ヘッドを務めていたデデ・チャン・ブリノーリ(Dede Chan Brignoli)を任命。同年9月には、中国市場での社名をメイリンシー(MEI LIN SHI)に変更したほか、ウィーチャット上のミニプログラムにショップをオープンした。同店はウィメンズ、メンズ、キッズウエアなど180以上のブランドを取り扱っており、商品は欧州にある「マイテレサ」の倉庫から出荷しているという。

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