判決を受けてパナソニックは、「控訴審では、ダイソンが実験をやり直して結果を追加で提出し再審理を求めるとともに、当社に対しては当社の実験結果をダイソンにも開示するよう求めた。しかし、実験結果は非常に重要な営業秘密であり、競合他社に開示することによる当社事業への影響は計り知れない。営業秘密保護の観点から可能な範囲で実験結果を提出した結果、裁判所には当社の広告表示が実験結果により裏付けられていることを十分ご理解いただくとともに、ダイソンが提訴時に行った実験及び控訴に際してやり直した実験のいずれも不適切なものであったことが確定するに至ったと考えている。」とコメント。一方のダイソンは「今後もユーザーの皆さまに寄り添い、科学的根拠にもとづく広告を展開していく」とコメントしている。
ダイソンは、「ナノケア」“EH-NA0G”のナノイー技術が髪への影響や潤い、保護に与える影響に関する複数の広告表示は不正確であり、公正な競争を阻害すると主張。具体的には、「EH-NA0Gで使用されている高浸透技術により『水分発生量が従来の18倍』になる」「EH-NA0Gは『髪へのうるおい、1.9倍』を与える」など、「ナノケア」に関するいくつかの広告表現を挙げた。その裏付けとして、一審では独立した第三者機関による実験結果を証拠として提出したが、その内容や結果が信頼性に欠けると判断され、「ナノケア」の広告が品質について消費者を誤認させると裏付けるには不十分として、ダイソンの請求をいずれも棄却した。これを受けてダイソンは、追加の検証試験の結果を控訴審で提出した。対してパナソニックは裁判において、一貫してダイソンが提出した実験は不適切であると主張。パナソニックの代理人である松田知丈弁護士によると、裁判所は、ダイソンが追加で提出した検証試験の結果を踏まえても、不適切な点があり、ダイソンの請求はいずれも理由がないと判断し、ダイソンの主張を退けたという。
髪質に与える影響を測定する統一的な基準や規格は業界に存在せず、企業において適切な方法で実験を行うことが必要になる。パナソニックによると、裁判所は、パナソニック側が実施している実験は科学的に相当と認められる方法により行われたこと、そしてその実験はパナソニックの表示内容を裏付ける内容であると認めたという。
松田弁護士は、「ダイソンが提訴時や控訴時に、『複数の広告表示が不正確であって消費者に誤解を与える』『一部の広告表示が消費者に誤解を与えるものであることを引き続き懸念している』といった情報発信を行ったことは、公正な市場競争の観点から消費者の商品選択に影響を与えかねないものだった。また、ダイソンが提訴および控訴の根拠としたダイソン側の実験結果がいずれも不適切だったにもかかわらず同社の営業秘密の開示を求めたことも非常に問題のある対応だったと考えている」とコメントしている。