「トム ブラウン(THOM BROWNE)」は、2025-26年秋冬コレクションを現地時間11日にニューヨークで発表した。ニューヨーク・ファッション・ウイークでの「トム ブラウン」のショーといえば、背景に敷かれた壮大で詩的なストーリーも注目ポイントだ。今回は、自由を望む2羽の“鳥”(演者は人)を主役にした物語で、ルールに縛られないマキシマルなプレッピースタイルを表現した。
会場の中央に登場した2羽の鳥(演者は人)の周りには、折り紙で作られた2000羽の鳥のインスタレーション。2羽は自由に飛び回る鳥たちを見て、「こんなふうに自分らしくあれたら、なんてすばらしいだろう」と思いを馳せるところからショーは幕を開ける。
ランウエイは、自由を楽しむ鳥たちの楽園に見立てた。モデルたちの目元には、鳥の翼のような、躍動感のある大胆なフォルムのアイメイク。ショルダーラインやアームホールが極端に誇張されたジャケットやコートをまとい、ボトムスはパンツもスカートもあり、ミニ丈からフロアに擦るほどのマキシ丈まで幅広い。ギンガムチェックシャツの上から、ウインドウペーン、レジメンタルストライプ、さらにヘリンボーンツイードと、ルールに縛られることなく幾重にも重ねた柄×柄のレイヤードも見応えがある。
色鮮やかな鳥の模様からインスピレーションを得たと思われる、大胆な色柄のオンパレードだ。スパンコール、ブークレ糸、シルクリボン糸を組み合わせた赤・白・青・銀のツイードや、一着当たり3500個ものスワロフスキークリスタルを施したドレス。そのエメラルドグリーンのスワロフスキークリスタルを盗むカササギやサギを、シルクのインターシャ編みで施し、ユーモアを添えた。
「トム ブラウン」といえば、細身、短丈のパンツ、トリコロール柄のスーチングスタイルがアイコン。今回のランウエイでの表現はそういったリアルクローズの提案とはそぐわないものの、ユニフォーム(正装)のルールからの逸脱を楽しむ無邪気さ、ルールに縛られない自由を楽しむブランドのアティテュードは通底している。
パリやミラノのランウエイが華やかな装飾性を強めている中、ニューヨークは――それはリアルクローズに強いニューヨークらしさでもあるが――クワイエット・ラグジュアリーのムードがまだまだ主流だ。その中で、色柄からディテール、スタイリングまで自由でマキシマルな「トム ブラウン」の存在感は一層引き立っていた。