「グッチ(GUCCI)」のクリエイティブ・ディレクターとCEOの同時退任は、2004年にトム・フォードとドメニコ・デ・ソーレ元CEOが同ブランドを去ったときと同様、業界人にとってはショッキングな出来事なのではないか。「グッチ」は今、ブランドの新たな方向性を定める岐路に立っている。「エルメス(HERMES)」のようにクラシックで安定したブランドか、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「プラダ(PRADA)」のように常に話題性の高いブランドか、どちらのタイプを目指すにせよ、フリーダを継ぐ後任クリエイティブ・ディレクターの人選が鍵になる。
現在、後任の最有力候補とされているのが、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(以下、LVMH)傘下の「ジバンシィ バイ リカルド ティッシ」のリカルド・ティッシ=アーティスティック・ディレクターだ。だが、「ジバンシィ」との契約が15年10月に満期を迎えるまで、LVMHが例外を設けないかぎり、リカルドの他グループ・ブランドへの移籍は難しいだろう。またLVMHが、グループきっての有名デザイナーを手放しはしない、という考えからリカルドの就任説を否定する声も挙がっている。
他の後任候補には、13年1月にケリンググループが株式51%を取得した、最も話題性の高いロンドンブランドの一つ「クリストファー・ケイン」のクリストファー・ケインや、毎シーズン安定的にハイレベルなコレクションを提案し、レザーグッズのデザインで豊富な経験を持つ「ボッテガ・ヴェネタ」のトーマス・マイヤー=クリエイティブ・ディレクターが有力候補だが、かつて「サンローラン」のクリエイティブ・ディレクターで「エルメネジルド ゼニア」を手掛けるステファノ・ピラーティや「アルチュザラ」のジョセフ・アルチュザラ、「エミリオ・プッチ」のピーター・デュンダス=アーティスティックデザイナー、「ヴァレンティノ」のマリア・グラツィア・キウリ=クリエイティブ・ディレクターらの名も挙がっている。