日本百貨店協会によると、2024年の全国百貨店売上高は前年比6.8%増の5兆7722億円だった。コロナ前の19年の5兆7547億円を5年ぶりに上回った。ほぼ近しい「5.7兆円」という数字ではあるが、中身を検証すると百貨店市場は5年間でかなり変化している。(この記事は「WWDJAPAN」2025年2月24日号からの抜粋です)
❶ インバウンドの存在感増す
回復を支えているのは訪日客の旺盛な消費だ。24年の訪日客による免税売上高は、19年比87.7%増の6487億円に急伸した。全国百貨店売上高の11%を占める。大都市の百貨店ほど訪日客が多い。免税売上高の割合は松屋銀座本店で49%(24年3〜8期)、三越銀座店で41%(同4〜9月期)、大丸心斎橋店で45%(同3〜8月期)に上昇した。
19年の訪日客数3188万人に対し、24年は過去最高の3686万人(政府観光局)。記録的な円安(年平均で19年は1ドル110円、24年は同152円)が押し上げ要因になり、“安い日本”に世界中から観光客が集まる。彼らは主にラグジュアリーブランドや時計・宝飾品といった高額品を買いあさる。コロナ前は化粧品や日用品をまとめ買いする“爆買い”が話題だったが、消費傾向は様変わりした。これが客数以上に客単価を跳ね上げた。
一方、大多数の国内客の売上高は19年に比べて2.0%減。食品や光熱費の値上げが生活を圧迫し、中間層の足が百貨店から遠のいた。だが富裕層を対象とした外商の売上高は右肩上がりで伸びている。
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