2月6〜11日に開催された2025年秋冬シーズンの「ニューヨーク・ファッション・ウイーク(NYFW)」では、ストリートの雰囲気漂うニューヨークらしいリアルなメイク提案から、赤いアップリケや存在感大のフェザーアイラッシュをメイクに取り入れた斬新なルックが登場した。業界の第一線をけん引し続けるトップヘア・メイクアップアーティストらが手掛け、今季のハイライトとなった4ブランドのヘアメイクを紹介する。
COACH
“ミニマルメイクで個性を讃える”
「コーチ(COACH)」は、クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)が今季のテーマに“新世代が解釈するアメリカンクラシック” を掲げた。メイクをリードしたパット・マクグラス(Pat McGrath)は、クリーンな肌に焦点を当て、モデル一人一人の個性を生かすミニマルでスーパーナチュラルなメイクに仕上げた。マクグラスは「自分自身の肌で輝くことを恐れない、若者の個性を讃えるメイクを目指した。作り込み過ぎず、ミステリアスだけどストリート感のあるクールなルック。それがスチュアートが求めるものだった」とバックステージで明かした。ベースメイクには、「パット・マクグラス ラボ(PAT MCGRATH LABS)」の“スキン フェティッシュ サブライム パーフェクション ファンデーション”を使用し、肌全体にできるだけ薄く塗布。ありのままの素肌の美しさを生かすため、コンシーラーはさりげなく仕込む程度だった。目の形を強調するようにマスカラはまつ毛の根本のみにオン。まぶたにはそれぞれのスキントーンに合わせたトープカラーをのせ、目元に深みをプラスした。リップはコンシーラーで赤みを抑え、無色のリップバームで程よい艶感に整えた。何人かのモデルはアイキャッチなパステルカラーのサングラスを着用し、遊び心のあるルックを完成させた。
COURTESY OF PAT MCGRATH LABS
MARC JACOBS
“次元を遊ぶ紙人形メイク”
NYFWの幕開けを担った「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」2025年春夏コレクションもマクグラス=メイクアップアーティストがリードを手掛けた。マクグラスといえば、2024年の「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」“アーティザナル”コレクションで披露した“陶器人形メイク”が話題をさらったが、同ショーではおとぎ話に出てきそうなフォルムを誇張したルックに呼応するように、リップとチークの代わりに円形に切り抜いた赤のフェルト地を貼り付け、“紙人形”を彷彿とさせるユニークなメイクを打ち出した。「メイクを2次元的な平面から、3次元的な立体へとシフトさせた。ルールから逸脱し、“メイクアップの抽象化”を図った」という。実際のメイクは最小限にとどめ、素肌の美しさにフォーカス。「パット・マクグラス ラボ」の保湿化粧水“ディヴァイン スキン ローズ 001 ザ エッセンス”で肌を整えてから、ファンデーションとコンシーラーで極めてナチュラルなベースを作り上げた。さらに、顔の凹凸を強調するように頬骨、まぶた、鼻筋に沿って“スキン フェティッシュ ハイライター バーム デュオ”をのせ、ランウエイの眩い照明の中でも骨格が美しく映えるよう仕上げた。
THOM BROWNE
“躍動感溢れるフェザーアイルック”
「トム ブラウン(THOM BROWNE)」は、今にも羽ばたきそうなカラフルなフェザーアイラッシュが際立つメイクで、ファンタジックなコレクションの世界観を盛り上げた。メイクを手掛けたのはイサマヤ・フレンチ(Isamaya Ffrench)。昨シーズンに引き続き、DIYまつ毛エクステキットを提供する「ラシファイ(LASHIFY)」とコラボし、ボリューミーなつけまつ毛“エッジ エックス ゴッサマー ラッシュ”を使用した。さらにその上に10cmほどある長くカラフルな羽毛を1本ずつ専用のグルーで丁寧に重ねた。「美しい鳥にインスピレーションを得た。まぶたにペイントすることも考えたが、立体的にすることで魔法のようなメイクに仕上げたかった」とフレンチ。目元を強調するため眉毛は完全にオフし、アイブロウレスに。何人かのモデルには、束感のある“チェリー スタックス 18mm”をまつ毛に装着し、リップに同メゾンのネクタイを思わせるストライプペイントを施すことで遊び心を覗かせた。ヘアはジェームズ・ペシス(James Pecis)がリードを手掛け、折り鶴にインスパイアされたパネル状のヘアピースを後頭部に装着したダイナミックなヘアスタイルを完成させた。さらに、ルックとリンクする色鮮やかなカラーを頭頂部にペイントし、ファッションとの一体感を演出した。
TORY BURCH
“洗練された現代版クールトーンアイ”
今季“現代女性のためのクラシック”を体現した「トリー バーチ(TORY BURCH)」。メイクをリードしたダイアン・ケンダル(Diane Kendal)は、コンシーラーでベースを整えた後、頬骨、鼻下、眉上、唇の上にハイライトを重ねて輪郭を強調した。これにより、「顔全体に華やかな立体感を与えた」とケンダル。目元に採用した淡いアイスブルーやグレーのアイシャドウは、1990年代のクールトーンメイクとしてTikTok上で盛り上がり、近年カムバックしているトレンドでもある。これを眉頭から眉尻にかかるように、まぶたの広域に大胆にのせた。リップはほとんど無色のニュートラルに仕上げ、フレッシュな質感を大切にした。ヘアのリードを務めたのはグイド・パラウ(Guido Palau)。「ザラ(ZARA)」の “ライト ヘア バーム”でヘアに適度な潤いを与えつつ、シンプルなセンターパートに仕上げた。手を加え過ぎないエフォートレスで洗練されたスタイルで、しなやかで芯のある現代女性のイメージを表現した。