ユニリーバ(UNILEVER)はこのほど、ハイン・シューマッハ(Hein Schumacher)最高経営責任者(CEO)の退任を発表した。2023年7月の就任から、2年にも満たない任期となった。同社は退任の理由を明らかにしていないが、「双方の合意により」CEOおよび取締役を退任し、5月31日付で退社する。フェルナンド・フェルナンデス(Fernando Fernandez)常務取締役兼最高財務責任者(CFO)が3月1日付で後任を務める。この動きにより同社の株価は2.3%下落し、25日の終値は43.8ポンド(約8365円)となった。
イアン・ミーキンス(Ian Meakins)会長は、「シューマッハCEOは当社の戦略をリセットした。彼が明確にした焦点や、会社にもたらした規律、24年に達成した業績に感謝している。重要な生産性向上プログラムの導入と、アイスクリーム事業『ベン&ジェリーズ(BEN&JERRY'S)』の分離を主導し、いずれも軌道に乗っている」と述べる。シューマッハCEOは、「ユニリーバを率いることができて光栄だった。真の進歩を短期間で達成したことを誇りに思う。明確な戦略、ポートフォリオの整理、強力なチームにより、ユニリーバが今後ますます前進していくことを楽しみにしている」とコメント。同社は、25年の見通しや中期経営計画に変更はないとしている。
ハイン・シューマッハCEOの貢献
シューマッハCEOはオランダ出身で、以前はオランダの乳業最大手フリースランド・カンピーナ(FRIESLANDCAMPINA)のCEOを務めていた。ユニリーバではアラン・ジョープ(Alan Jope)前CEOの後を継ぎ、会社の構造と優先事項の再編成にあたり、より効率的な会社作りに着手。シューマッハCEOの指揮の下でアイスクリーム事業の分離を決め、ウクライナ紛争を理由にロシアから撤退した。再建計画は実を結び始めているという。
CEO交代に関する投資家の意見
ユニリーバの24年12月期の純利益は、処分損と生産性向上プログラムの加速に伴うリストラ費用の増加により、前期比10.8%減の64億ユーロ(約1兆176億円)となった。米投資会社ジェフリーズ(JEFFERIES)は、投資家らはフェルナンデスのCEO就任を喜ぶだろうと推測。「フェルナンデスの直接的なアプローチが支持される一方で、同氏のやり方をいささか破天荒と見る向きもあるだろう」と分析する。シューマッハCEOは、アクティビスト(物言う投資家)として知られるネルソン・ペルツ(Nelson Peltz)のひいきにより選ばれたとの意見が多かった。
既報の通りペルツはユニリーバの取締役に就任し、現在上場企業として取り引きされている英製薬大手グラクス・スミスクライン(GSK)の一般用医薬品(大衆薬)事業を買収しようとして失敗したジョープ前CEOの解雇に尽力した。シューマッハCEOは、ペルツの“お気に入り”だったようだが、今後はユニリーバの古株が同職を務める。ジェフリーズによればCEOの交代により、取締役会は戦略、特にM&A戦略を自由に見直すことができるようになるという。
RBCキャピタルマーケッツ証券会社は、「シューマッハCEOの退任には全く驚かなかった。彼の退任は、社外CEOの任命に腹を立てていたユニリーバ内部関係者の勝利であり、古いユニリーバの文化が再びその姿を表した証拠とも読み取れる」と報告書に記している。「シューマッハCEOは、『ユニリーバを変える』というコミットメントを持った外部の人間として社内で反感を買ってしまったのではないかというのが、われわれが思い付く最もまともな予測だ。フェルナンデス次期CEOは同社に37年間在籍しており、変革者としてはより受け入れられやすいだろう」。
フェルナンデス新CEOは24年1月にCFOに就任する前、同社で最も急成長している事業の一つであるビューティ&ウェルビーイング部門のプレジデントを務め、成功を収めた。同氏はラテンアメリカ・プレジデント、ブラジルCEO、フィリピンCEOを歴任し、ユニリーバで最も業績のよい複数の市場を率い、優れた人材を育成しながら高い業績を上げたという。フェルナンデスは、「ユニリーバは今後、成長性の高い市場での存在感を高め、トップ30のパワーブランドにおいて圧倒的な機能的・感覚的優位性を提供することに焦点を当てる」と述べた。
本文中の円換算レート:1ポンド=191円、1ユーロ=159円