3月2日開催の東京マラソンを前に、ランニング関連ブランドのポップアップやイベントが相次いでいる。その中でもひときわおしゃれなアプローチが目立つのが、東京・虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの「セレクト バイ ベイクルーズ(SELECT BY BAYCREW’S)」内で行われている、米ボストン発ランニングブランド「トラックスミス(TRACKSMITH)」のポップアップイベント(2月26日〜3月3日)だ。3月1日には皇居外周を走るソーシャルランイベントも開催予定で、約300人のファンから出走エントリーがあったという。
「トラックスミス」は2014年に、ボストンでマット・テイラー(Matt Taylor)現CEOが立ち上げたブランド。“スポーツのアマチュア精神”を尊重し、“Runners Deserve Better(ランナーにはもっと価値がある)”といったコンセプトのもと、ランニング中や走った後のウエア類を企画、米国のカレッジ感覚が漂うトラッドムードが持ち味だ。これまでに、日本の駅伝のタスキを着想源にしたデザインの“EKIDEN”記念コレクションを発売するなどし、国内外で高感度なランナーから注目を集めている。
「ランニングシーンが変わってきた」
「ランニングは、昔はかっこいいものではなくて単なるスポーツだったが、今はシーンが変わってきている。ファッションやライフスタイルとランニングがクロスオーバーし、走ることがカルチャーになりつつある。ランニングは人のアイデンティティーにもなり得るものになった」と話すのは、「セレクト バイ ベイクルーズ」でのポップアップに合わせて来日した、「トラックスミス」のラッセル・アシュフォード(Russell Ashford)リテールディレクター。「コロナ禍のリモートワークで自宅にこもっていた人たちが、ランニングによって外に出て、人と会いコミュニケーションをするという人間の本質的な活動を取り戻したことで、今世界中でランニングが盛り上がっている」と続ける。実際、ニューヨークでは目下、ランニングクラブが次々と生まれ、ランニングの一大ブームが起こっているといった報道を見ることも多い。
テイラーCEOは、「ノア」のCo-ファウンダー/クリエイティブ・ディレクターのブレンドン・バベンジン(Brendon Babenzien ※彼もランナーだという)と長年親交があり、バベンジンが手掛け、日本ではベイクルーズが運営する「ノア(NOAH)」とこれまでもポップアップを何度か行ってきた。今回のポップアップも、「トラックスミス」と「ノア」を掛け合わせた企画で、フーディーなどのコラボ商品も販売。店頭のVMDも、「トラックスミス」と「ノア」のミックスコーディネートを打ち出している。また、ポップアップでは、「トラックスミス」が世界のメジャーマラソン大会向けに作っている記念コレクションのうち、東京マラソン向けのタンクトップやショーツなどもそろう。フーディー(4万4220円)を購入した客には、チェーンステッチで好みの刺しゅうを入れるカスタマイズサービスも行っている。
8月にトレランコレクションも発売
ポップアップは26日にスタートし、自身や家族などの東京マラソン出走のために来日している海外客を多く含むブランドファンが訪れているという。1日に行うソーシャルランイベントのエントリー者も、海外客が多い。東京マラソン当日と翌日には、完走者向けに、ゴールタイムをポスターにスタンプするサービスも予定。東京だけでなく、ボストンやシカゴ、ニューヨーク、ロンドンなど、世界のメジャーマラソン大会それぞれでイベントを実施しているという。
「トラックスミス」を立ち上げたテイラーCEOは、プーマ勤務時代にウサイン・ボルト(Usain Bolt)と組んだ製品開発などを担当し、その後、ボルトのアプリゲーム開発プロジェクトなどにも携わっていた人物。「トラックスミス」は現在、ボストン、ニューヨーク、ロンドンに直営店があり、日本では卸やポップアップのみで展開。「3月にはレース用シューズを発売し、8月にはシューズを含むトレイルランニングコレクション、12月には高クッション性でリカバリーを意識したシューズの発売を予定する」とアシュフォード リテールディレクターはブランドの今後の予定を明かす。「ブランドとして規模は大きくしていきたいが、ランナーのためのブランドという軸はぶらさずに進んでいく」。