昨秋にはサヴィル・ローに旗艦店を設け、今春ロンドン・メンズ・コレクションにやってきた「アレキサンダー・マックイーン」。テーマは、当然、サヴィル・ローだった。ランウェイに飛び出してきたのは、コンケーブ・ショルダー(肩の周りで急速に盛り上がる力強いショルダーラインのこと)でロング丈、ウエスト周りは非常にタイトなジャケットを基軸とするサヴィル・ローの3ピース。序盤はピンストライプの3ピースばかりで、ブランドの古里に帰ってきたことを印象付けた。
ただ、「アレキサンダー・マックイーン」は、サヴィル・ローだけのブランドではない。そこで、クリエイティブ・ディレクターのサラ・バートンは、2013年春夏シーズンのウィメンズトレンドとも言える、「オプティカルアート」と「ジャポニズム」の流れをスーツスタイルにプラス。「オプティカルアート」については、スーツスタイルにおいて伝統的な模様のピンストライプを、ジャケットやパンツのみならず、シャツにもプラス。ジャケットとシャツのストライプの幅を変えることで不思議な視覚効果を生みだしたり、スーツの背面だけストライプを複雑に切り返したりして、伝統的なフォーマルスタイルをモードにアレンジしている。「ジャポニズム」の筆頭は、着物に似た袖を持つ、大きな大きなマキシ丈のトレンチコートだ。
後半は、メゾンの技術を駆使した、パッチワークによるサヴィル・ロー。フランネルからシルクウール、ベロアにいたるまで、複数の色に染め上げた生地を複雑につなぎ合わせ、パッチワークながら完璧なシルエットのサヴィル・ローに仕上げている。完成したスタイルからは、「マックイーン」が元来持っていた「狂気」は感じられないが、女性ディレクターによる「エレガンス」は十二分だ。