「フェンディ(FENDI)」が2025-26年秋冬コレクションを発表し、1925年創業のブランドは華々しく、100周年のアニバーサリーイヤーをキックオフした。
ショー会場は、リニューアルして面積は1600平方メートル超えと倍以上になったミラノ本社。往年のディスコのVIPルームようにグラマラスでゴージャスな空間を設え、メンズとウィメンズ全84ルックを発表した。クリエイティブ・ディレクションを担ったのは、フェンディ家3代目で現在はアクセサリーとメンズのアーティスティック・ディレクターを務めるシルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)。今回は昨秋退任したキム・ジョーンズに代わって、ウィメンズも手掛けている。
シルヴィアはショーに先駆けて、そして「フェンディ」のアイコンロゴのFFが「FUN FUR(毛皮で、楽しく)」という意味を持つことを踏まえ、「今回のファッションショーに名前をつけるとしたら、トリプルF。フラッシュバック(flashback)、そしてファスト・フォワード(fast forward)よ」と語った。「鮮明・鮮烈に過去を思い出し、未来に向かって爆速する」、そんなイメージなのだろう。
コレクションは、まさにトリプルFだった。
ファーストルックは、毛皮の工房だった祖業を思い出させる総毛皮のコート。ハイカラーが特徴で、「フェンディ」は“ペカン”と呼ぶストライプ模様が浮かぶ。まるで貴族のローブのようなハイカラーで力強い。序盤は、ファーをたっぷり使う。メンズでも毛皮のチェスターやロングストール、ウィメンズではペプラム裾のボディコンシャスなニットドレスの上にショート丈のファーブルゾンを羽織った。前任のキム・ジョーンズが目指した、ジャケットを中核としたクワイエットなリアリティ路線とは一線を隠し、シルヴィアが描く「フェンディ」の女性像はグラマラス。過去をフラッシュバックすることで、ここ数シーズンのイメージを一掃したかのようだ。ジャケットにラップスカートなどのフォーマルスタイルでも、ネップなど表面に特徴のある生地を選んで主張。ディップダイでグラデーションに染めたリブ編みのポロニットや、シャギーなモヘアのアンサンブル、毛足の長いウールで作ったパンツなど、主張のある、そしてクラフツマンシップを感じさせる生地を選び、レトロなカラーパレットとスタイルながら力強い印象を残した。
ファスト・フォワードは、メンズとウィメンズの境界線を廃した現代的なジェンダー志向や、軽やかな素材使い、その源泉となる進化し続けるクラフツマンシップで表現しているのだろう。中盤以降は随所にレースが現れ、ファーやシルクサテンと組み合わせたランジェリードレスに変わったり、官能的なブラウスに仕上げたり。メンズでもスパンコールなどの装飾を散りばめたカーディガンの下にはレースのポロシャツを合わせた。レースやシフォンと自由自在に組み合わせるべく、ファーは薄くなめし、毛を刈り込んで、パンチングを加えることで軽やかに。ランジェリードレスにも組み込んでいる。シェブロン柄や水玉のファーコートは、象嵌細工のように小さいファーパーツを組み合わせたもの。“ピーカブー”などのバッグにもファーをあしらった。
シルヴィアは、FFロゴに通じる持ち前のファンな要素にグラマラスやセクシーなどを加え、改めて「フェンディ」の多様で多彩な世界を表現した。ウィメンズの後任デザイナーは、一度シルヴィアがリセットし、白紙に戻した「フェンディ」の広大なキャンバスを手に入れ、101年目の歴史を紡ぐことになるのだろう。後任デザイナーの発表が待たれる。