モンクレール・グループ(MONCLER GROUP)の2024年12月期決算は、売上高が前期比4.2%増の31億890万ユーロ(約4849億円)、EBIT(利払前・税引前利益)は同2.5%増の9億1630万ユーロ(約1429億円)、純利益は同4.5%増の6億3960万ユーロ(約997億円)の増収増益だった。
ブランド別では、主力「モンクレール(MONCLER)」の売上高が同5.2%増の27億730万ユーロ(約4223億円)と増収。これを地域別で見ると、下半期に中国本土の業績が力強く回復したアジアは同6.1%増の13億7900万ユーロ(約2151億円)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)は同4.3%増の9億4930万ユーロ(約1480億円)、南北アメリカは同2.1%増の3億7900万ユーロ(約591億円)といずれも増収だった。販売チャネル別では、売り上げ全体の86%を占める小売りが同7.8%増の23億3190万ユーロ(約3637億円)、卸は同8.3%減の3億7540万ユーロ(約585億円)だった。
21年2月に傘下に収めた「ストーンアイランド(STONE ISLAND)」の売上高は、同2.3%減の4億160万ユーロ(約626億円)だった。地域別で見ると、やはり下半期に業績が回復した中国市場や、円安およびインバウンド需要の影響で引き続き好調の日本を含むアジアは同17.7%増の1億520万ユーロ(約164億円)と好調だったものの、EMEAは同6.5%減の2億6890万ユーロ(約419億円)、南北アメリカは同19.4%減の2750万ユーロ(約42億円)と減収。販売チャネル別では、小売りは同20.9%増の2億890万ユーロ(約325億円)、卸は同19.1%減の1億9270万ユーロ(約300億円)だった。なお、売り上げに占める小売りの割合は、23年度の42%から52%へと大幅に増加している。
会長兼CEOのコメント
レモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「当社は24年の複雑かつ不安定な環境下においても、踏みとどまる強さや回復力を発揮し、素晴らしい結果を上げることができた。『モンクレール』と『ストーンアイランド』は、小売りにおいていずれも(現地通貨ベースで)2ケタ成長となり、グループの売上高は30億ユーロ(約4680億円)を突破。営業(EBIT)利益率は29.5%と昨年度の30%と同水準を維持し、当社のビジネスモデルの強さを明確に示した。25年もマクロ経済の先行き不透明感が続いているが、市場がダイナミックに揺れ動く中でも、うまく舵取りできるものと確信している。当社の豊かなヘリテージ、イノベーションに対する情熱、従来の枠を超えていく野望により、今後も持続的に成長し、長期的な価値を創出していく」と語った。
LVMHからの間接的な出資について
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は24年9月26日、ルッフィーニ会長兼CEOの持株会社であるルッフィーニ パルテチパツィオーネ ホールディング(RUFFINI PARTECIPAZIONI HOLDING以下、RPH)と提携し、RPHが保有する投資会社ダブルR(DOUBLE R)の株式の10%を取得したことを明らかにした。ダブルRはモンクレールの株式の約15.8%を保有している。
アナリスト向けの決算説明会で、ルッフィーニ会長兼CEOは同取引について、「持株会社レベルでの投資であり、経営上の安定性をもたらしてくれた。しかし、当社は引き続き完全に独立していることを強調しておきたい」と述べた。また、同取引により、LVMHはダブルRの取締役会のメンバー2人と、モンクレールの取締役会のメンバー1人を任命する権利を獲得している。しかし、LVMHは「(モンクレール・グループの)事業戦略の策定には携わらない」こともあり、シナジー効果については「特に期待していない」と話した。
M&Aは視野に入れず、傘下の2ブランドに注力
現金および現金同等物を含む純金融資産は、23年の10億3000万ユーロ(約1606億円)から13億ユーロ(約2028億円)に増加。これを活用して買収などを行う予定はあるかという質問に対し、ルチアーノ・サンテル(Luciano Santel)=グループ・チーフ・コーポレート&サプライ・オフィサーは、「(資産が多いのは)うれしい悩みだが、当社はM&A戦略を策定していない」と回答。「『モンクレール』と『ストーンアイランド』には、まだまだ大きな可能性がある。この素晴らしい2つのブランドの開発に引き続き注力したい」と述べた。
中国市場の業績が回復した理由は?
中国市場の景気停滞により、打撃を受けているラグジュアリーブランドも多い。そうした中、「モンクレール」と「ストーンアイランド」はいずれも24年下半期に同市場での業績が回復している。これについて、同社は「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」が10月に上海で開催した大規模なイベントが成功を収めたことを要因の一つとしつつも、それだけではないと説明。ロベルト・エッグス(Roberto Eggs)=グループ・チーフ・ビジネス戦略&グローバルマーケット・オフィサーは、「現地チームを通じて中国の消費者について理解を深め、それに基づいて時流に合うカプセルコレクションを発売したり、イベントを開催したりしてきた。また、『モンクレール』は、アウターを専門とする数少ない、もしくは唯一のラグジュアリーブランド。ほぼ競合がいないのも大きな強みだろう」と話した。