インドネシアで開催中のジャカルタ・ファッション・ウイークで2日、日本人デザイナーによる3ブランドがショーを開いた。ショーを行ったのは、坂口英明による新ブランド「マヌカンズ ジャポン(MANNEQUINS JAPON)」「モトナリオノ(MOTONARI ONO)」「ソマルタ(SOMARTA)」の3ブランドで、各10〜15ルックを合同ショー形式で披露した。このプロジェクトは、経済産業省中小企業庁創業・新事業促進課のプロジェクトの一環として日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)が受託したもの。JFWOがジャカルタ・ファッション・ウイークに参加するのは2回目となる。
ユニークなのは3ブランドとも自身のコレクションにムスリム(イスラム)ファッションを象徴する、ヒジャブ(髪を覆うスカーフ)を絡めたコーディネートを取り入れたこと。ショーに先だって開いた記者会見では地元メディアから高い関心が寄せられた。2回目の参加となる「モトナリオノ」の小野原誠デザイナーは、得意のレース使いのワンピースなどにヒジャブをコーディネート。会見で「世界の全人口の1/3に近いイスラムは、見逃せないマーケット。ムスリムを僕らの新しい視点で提案したい」と語った。
同じく2回目の参加となる「ソマルタ」の廣川玉枝デザイナーは、「ジャカルタの女性はテキスタイルへの理解が深い。日本のグラフィック・デザインをジャカルタの女性に手にとって欲しく提案した」といい、宝石柄のデジタルプリントなどの服にヒジャブや得意の無縫製ニットのタイツやインナーを合わせることで肌を露出しないムスリム・ファッションの女性にアプローチした。
「マヌカンズ ジャポン」は、「ザ ドレス アンド コー ヒデアキ サカグチ(THE DERSS & CO.HIDEAKi SAKAGUCHI)」を休止した坂口デザイナーが、今年立ち上げた新ブランド。ショー形式での発表はこれが初となる。坂口デザイナーは今回のヒジャブを取り入れたスタイリングの発案者でもある。「シック、スポーティー、モダン、クリーンなど色々な要素の中にヒジャブも取り入れてハイブリッドした」という。
発表したコレクションはあくまで各ブランドの最新作やアーカイブからの構成で、ムスリム市場を意識してリ・デザインした訳ではないが、今回のショーが日本ブランドとジャカルタ女性の対話のきっかけになったことは間違いない。ムスリム・ファッションを専門に扱う雑誌「ヌール」のシリ・アルターリア・アリスジャバナ=ディレクターはショーの後、「イスラム教徒でない日本人がムスリム・ファッションを取り入れたことに非常に驚いた。体のラインや肌を見せる服は正直ビジネスとしては難しいが、中には売れそうなアイテムもあった。何より、このようなユニークな提案は大歓迎だ」と語っている。
【関連記事】
ジャカルタ・ファッション・ウイーク開幕 イスラムと若手で勢い増す