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トラベルライター間庭がハコ推し! 今こそ行くべき“サティパホテル”「ホテルグランビナリオTSURUGA」

INDEX
  • ズボ蟹を求めて敦賀まで 駅前の機能的なホテルに宿泊
  • 嫌味のない洗練と心地よさは 無駄を省いたミニマムさゆえ
  • 朝から色とりどりの海鮮丼! 敦賀湾の「旬」を味わう喜びも
  • 北陸の温泉旅館やウェディング… おもてなしをビジネスホテルでも

旅の質が重視される今、心から満足できるサティスファイドパフォーマンス=サティパのいいホテルが求められている。出張帰りに立ち寄った福井県敦賀市にある「ホテルグランビナリオTSURUGA」では朝ご飯になんと海鮮丼を提供。実にハコ推ししたくなる、機能と快適を両立させた駅前ホテルだった。

ズボ蟹を求めて敦賀まで
駅前の機能的なホテルに宿泊

京都、長浜、木ノ本と琵琶湖畔を北上する予定があったため、ならば「そうだ敦賀、いこう」とばかり、福井県の敦賀へ。湖北にある木ノ本からは電車で4駅、25分とちょっと足をのばせば寄り道できる距離。しかも北陸新幹線と接続し、かえって楽なルートかもしれない。

敦賀まで足をのばしたのは1年で約2カ月、冬にしか食べられないズボ蟹が目的だ。ズボ蟹と呼ばれる水ガニは、脱皮したての蟹。半透明の殻はまだ柔らかく、手でも簡単に裂け、まだゆるい殻から簡単にズボッと身が抜けることからズボ蟹というのだそう。身は瑞々しく、輸送が難しく足が早いため、市場にはあまり出回らない。しかも安価!そのおいしさに目覚めて以来、用事を見つけてはこんな寄り道をしている。

「ついで旅」「寄り道旅」は撮影後など、荷物が多いこともあるので、駅前の宿を拠点に。今回、宿泊した「ホテルグランビナリオTSURUGA」も気になっていたのだが、満室だったりして、なかなか泊まれなかった。とにかくロケーションがいいのだ。

JR在来線とのアクセスがよく、港へとつながる西口から徒歩0分、2024年、北陸新幹線金沢~敦賀間延伸に伴い、開業した「オッタ(otta)」という複合施設の奥に位置する。「オッタ」には、福井県の各名店、飲食店などが並び、中央には子どもが遊べる芝生広場も。駅前の新しいランドマークになっているのだが、なかでも象徴的なのがブックストアであり、カフェでもあり、ライブラリーのような「ちえなみき」だろう。ディスプレーされている本は閲覧も購入も可能。宝物を探し当てるようなワクワクした気持ちで、自分だけの一冊を探せる。各所には読書コーナーがあり、カウンターには試験勉強に励む学生たちの背中も。洗練された観光名所でありながら、ローカルの寄り合い場所のような役目も果たしている「オッタ」の一部であるこのホテルはとにかく便利だ。

嫌味のない洗練と心地よさは
無駄を省いたミニマムさゆえ

今回宿泊したのが一番コンパクトであろう「アコード(シングル)」だが、それでも16.8㎡と余裕の広さ。ベッドも1400ワイドのスランバーランド社製だ。同じシングルでも「ビジネス」だと19.5㎡。独立したライティングデスクと衣類リフレッシュ機「LGスタイラー」も備えている。ダブルは19.5㎡~ツインは22.9㎡とかなりゆとりがある。

驚くのが機能として必要な部分のノイズを感じない収まりだ。大抵このクラスのホテルだと、ちょっと違和感のある出っ張りがあったり、惜しい!と感じるデザインの収納家具や食器だったりする。ところがここの空間は黒やグレーで統一したデスク周りや、空気清浄機、ゴミ箱までもが邪魔にならないさりげなさ。ティーパックやそれを置くためのトレイも機能的であり、嫌味じゃないデザイン。なんだろうか、この既視感・・・。「無印良品」に初めて出合った時のような、「ユニクロ(UNIQLO)」のフリースに初めて袖を通した時のような、そんなこころの心地よさがあるのだ。タオルに入ったロゴの刺しゅうも裾にさりげなくグレーで……憎い!ドライヤーもベッド周りの照明も、決してこだわりのあるブランドではないのだが、うまく調和する大手メーカーなどを採用している。センスのいい人が力まずに、フツーのものをフツーに選んだらチープシックなのにかっこいい部屋になった感じ……憎い!

1階フロントも決して華美ではなく、むしろ機能性を重視したレイアウトなのだが、正面に北陸をモチーフにしたアートが飾られていたり、チェックインカウンターとはまた別にコンシェルジュデスクがあったり、単なるビジネスホテルでは終わらせない何かを提供しようという気概を感じる。地図や観光案内のパンフレットの棚には、福井県が誇る工芸品などを無造作に並べているのもよかった。全てがこれ見よがしではないのだ。

ロビーの片隅には化粧水や靴磨き用ペーパーなどを必要に応じてピックアップするアメニティーBARが。その隣には新聞を提供するスタンドもあり、ビジネスホテルとしての機能も追及。アメニティーも新聞も、欲しい人だけが持っていくようにすれば、人件費などのコストダウンも図れるのだろう。そういったシステムに無駄がなく、だから手が届く価格帯でこの快適さが可能になるのかと感動した。

朝から色とりどりの海鮮丼!
敦賀湾の「旬」を味わう喜びも

特筆すべきなのが敦賀ならではの朝ごはんだ。和食、洋食、そして海鮮丼という選択肢があるのがうれしい。海鮮丼には日本海の旬の魚で色とりどり。お好みでどうぞという揚げ玉も気が利いている。自宅でも試してみよう。お椀はあら汁。といっても魚を具材として入れず、出汁だけをとっている。魚のあぶらがじわっと優しく広がり、朝ならではのあら汁だなあと感動する。この海鮮丼はおさかな通りの名店「うお吟」が監修。季節ごとの日本海の魚が、朝6時からホテルの朝食で食べられるというのは私も初めて。海鮮丼には茶わん蒸しや小鉢もつき、揚げたての厚揚げにも感動した。ちらりと盗み見した和食や洋食もかなりの充実ぶりだ。魚や野菜など、地元の食材を使っているという。

ちなみに朝ご飯会場になっているレストラン「いざり火」は夜も越前沖の本ズワイガニやウニ、いくらを贅沢に合わせた数量限定の「越前蟹極み丼」や「越前甘えび丼」「若狭名物イカ丼」などの各種海鮮丼を提供。こちらも「うお吟」による監修で、獲れたての旬魚を吟味し、秘伝の熟成法により極限まで旨味を引き出している。仕事で遅い到着になった場合でも、敦賀らしい味覚を施設内で味わえるのはうれしい。夏はビアテラスもオープンするという。

北陸の温泉旅館やウェディング…
おもてなしをビジネスホテルでも

調べてみると「ホテルグランビナリオ」は石川県の小松、大阪府の梅田や京都府の嵐山などでも展開。いずれも機能的ながらゆったりとした間取りやきめ細やかなサービスを売りとしている。例えば梅田にはレディースフロアを設け、鍵がないと入れないオートドアによりセキュリティーを強化したり、「リファ(REFA)」のシャワーヘッドやナイトスチーマー、メイク専用ミラーも完備。マガジンラックから雑誌を選び、部屋で読めるなどのサービスもうれしい。

山陰湯村の温泉旅館「ゆあむ」や石川県のレストラン、ウェディングプロデュース会社など、北陸を中心としビジネスを展開している。そこに共通するのはこころをつくしたおもてなし。業種は違えども、そんな気持ちが伝わる駅前ホテルだった。

「ホテルグランビナリオ」のサイト内にはこんな一行も。

「主張しすぎない、しかしいつまでもあきない 五感にそっとささやくような客室を目指しました」

なるほど、納得!五感に響く、五感をフルに楽しめる感度の高いホテルはたくさんある。でもささやくような心づかいというのが優しい。この条件でこれだけ満足できるのか!と驚くサティパ(造語・サティスファイドパフォーマンス)ホテルにふさわしく、ハコ推し確定!今度は違う施設にも訪れてみようと思う。

唯一の欠点は名前が覚えにくいこと(笑)。イタリア語のgrande + binarioからできた造語で、大きなプラットフォームという意味があり、いつもより素敵な旅の拠点をイメージしているそうだが、私はいまだにホテル名を正しく覚えられていない。

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