花王の「ビオレ(BIORE)」が日本のスキンケア市場で確固たる地位を築いている。洗顔料や日焼け止め、ボディーウォッシュなど幅広い製品群を展開し、主要5カテゴリー「洗顔料(セルフ)」「メイク落とし(セルフ)」「全身洗浄料」「日焼け止め」「制汗防臭剤」で売り上げ首位(インテージ SRI+、2023年10月~24年9月)を堅持し、他社の追随を許さない。
その「ビオレ」の屋台骨でありブランドを象徴する“洗浄”領域の中でも、ボディーウォッシュは圧倒的な存在感を放っている。国内で1000億円超のマーケットへと拡大しているボディーウォッシュ市場において「ビオレ」は、30年連続で首位(インテージ SRI+ ボディー石っけん市場 1995年1月~2024年12月“ビオレu”シリーズ累計販売金額)を独走。その座を不動のものとしている背景には、生活者や時代の変化に合わせた新しい洗浄価値の提案に他ならない。
ボディーウォッシュの申し子
6年ぶりの新提案は「ととのい肌」
「ビオレ」のボディーウォッシュは1984年に誕生した。当時の固形石けん主流の時代に、液体の全身洗浄料“ビオレU”を発売し、「石けんに代わる新習慣」を創出した。以降、「素肌と同じ弱酸性」への改良(99年)、「泡タイプ」(2014年)、「摩擦レス洗浄」(19年)と進化を続け、40年にわたり市場をリードしてきた。
そして25年、「ビオレ」が打ち出すのは「肌をととのえる」という新たな洗浄価値だ。現代人の肌悩みの一つである、ベタつきとカサつきが部位で異なる「脂性と乾燥が混在している肌」にアプローチする“ザ ボディ ととのい肌”(2種、480mL、各1300円/レフィル440mL、各880円※編集部調べ)を4月12日に発売する。
効果実感ある仕様で満足度向上
“ザ ボディ ととのい肌”は、肌の潤いを保つ皮脂膜のバリア機能に着目した。肌の潤いに必要な皮脂を残しながら不要な皮脂を洗い流す皮脂選択洗浄成分(オレフィンC16スルホン酸Na)を世界で初めて配合(同社調べ)。泡の濃密さと、洗い流す際に水膜を形成し肌に“水艶”が表れるのが特徴だ。
同商品は生後半年から使用可能だが、メインターゲットは30代後半から40代の女性層とした。花王の石井嗣人ビオレu・石けんブランドマネジャーは、「ボディーウォッシュはヘアケアなどと異なり、即時に効果実感が得られにくいカテゴリーである。しかし、同商品は水ですすいだ瞬間から『肌がととのった』と感じられる」と自信を見せ、25年は「日本のからだ洗いが変わる」と意気込む。
高価格帯市場への本格参入
ボディーウォッシュ市場は近年、敏感肌向けやデオドランド機能を備えた1000円以上(1mL単価が1.5円以上)のハイエンド製品が成長し、市場全体の約3割を占める。その顔ぶれは乾燥性敏感肌に着目したスキンケアブランド「キュレル(CUREL)」をはじめ、第一三共ヘルスケアの敏感肌ブランド「ミノン(MINON)」やロート製薬のオトナ臭にアプローチする「デオコ(DEOCO)」、I-neの「ヨル(YOLU)」やヴィークレアの「アンドハニー(&HONEY)」などが名を連ねるが、各社がハイエンド製品を投入し競争が激化している。
ハイエンド製品には感性に訴える情緒軸と機能軸の両方が存在しているが、リピート率が高いのは「機能軸」だという。市場分析によると、「情緒軸は流行の影響を受けやすく、消費者のし好が変わりやすいことがデータからも明らかになっている」。こうした中、“ザ ボディ ととのい肌”は機能面に加え泡の気持ち良さや香りにもこだわり、「肌と心を両方ととのえる」という独自の市場ポジションを確立することを目指す。
これまで1000円未満のバリュー製品(1mL単価が0.7円未満)と、ミドル製品(1mL単価が0.7円以上)で圧倒的なシェアを独占してきた「ビオレ」も、“ザ ボディ ととのい肌”の発売を機にハイエンド市場へ本格参入する。ただし、「競合商品はない」と強調し「新しい肌悩みに対応することで、新たな市場を創出する」と意気込む。価格はブランド内でチャレンジングな設定ながら「自信を持って送り出す」と胸を張る。
8月には“ザ ボディ”の“摩擦レス”シリーズの改良版も投入する予定。ブランド全体で27年までに市場シェア25%を目指し、トップブランドとしての地位を盤石にする構えだ。
21年に新語・流行語大賞にもノミネートされた「ととのう」は、サウナブームとともに広まった概念だが、「ビオレ」はこれを「心身の調和」として再定義する。「体を洗うことは、人生そのものを“ととのえる”ことにつながる。肌を通じて、世界平和を目指す」と勇往邁進の姿勢を貫く。