サステナビリティ
連載 エディターズレター:SUSTAINABILITY 第43回

ケリングのアワードが日本で開催された意義 受賞者と来場者のユニークな傾向

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ケリング(KERING)は第1回「ケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパン(KERING GENERATION AWARD X JAPAN)」の授賞式を13 日に東京・虎ノ門の TOKYO NODEで開催しました。ファーメンステーションが最優秀賞を、アンフィコが第2位、アルガルバイオが第3位を受賞し、マイクロバイオファクトリーが特別賞を受賞しました。本レターの読者の多くの方が初めて聞く会社名だと思いますがぜひ、踏み込んでその事業や理念をチェックしてください。なぜケリング彼らを讃えたのか?そこには、モノづくり、ファッション、ラグジュアリーがこの先どこへ向かうかのヒントがあります。

本アワードの大前提がサステナビリティです。持続可能な未来のためのイノベーションを発掘、支援するのが狙いです。そのイノベーションは従来のビジネスの延長線上ではなく、全く新しい発想で「新しい」を創造しています。

ファーメンステーションは、発酵技術を用いて食品廃棄物のような未利用資源から天然由来の芳香エッセンスなどのバイオ原料を生産しています。アンフィコは6色の糸から独自染色アルゴリズムにより1000種以上もの色を表現する技術が「産業用繊維染色の環境への影響を低減する可能性がある」と評価されました。アルガルバイオは日本の海洋資源である藻類の研究を20年以上行っておりその研究はヘルスケア領域に止まらず、ビューティ、 ファッションへの活用にも期待が寄せられています。化学記号を理解することは難しくてもスタートアップの方たちがどんな未来を描いているのか、は話を聞くと共感できます。

パーティには競合企業の関係者も

授賞式の後は、ファイナリストたちの展示を見ながらカクテルパーティが開催されました。このパーティの来場者がまたユニークでした。企業やブランドが主催するパーティには従来、お取引先やメディア、顧客などその企業とビジネス的なつながりがある人たちが招待されることがほとんどです。しかしこの会場にはケリングの競合とも言えるブランドや投資家、行政自治体、学生など多彩な顔触れが集まっていました。共通しているのは一点、サステナビリティやイノベーションに可能性を見出している人たちであるということ。その熱量たるや、閉会後まで多くの人が残り、つながりを楽しんでおり、まさにオープンイノベーションを地で行く光景でした。ビジネス拡大だけを狙ったイベントならこうはいかないでしょう。

東コレとイノベーションはもっと近づいていい

ところで、東京では今週「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が絶賛進行中です。ランウエイや展示会で発表されるファッションデザイナーたちの仕事やその仕事を支える産地のモノづくりと「ケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパン」で見られるようなイノベーションはもっと近づき合流したらよいな、と思います。なかなか交わる機会がない3者ですが、最終的には洋服や化粧品といった製品となり生活者の手に届くわけで、「創造」のプロセスにおいてはデザインとクラフト、イノベーションのすべてが大切です。マリー=クレール・ダヴー(Marie-Claire Daveu)ケリング チーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者は「日本のスタートアップ企業は新しいテクノロジーと日本のクラフツマンシップが、同じ組織の中に存在できる点が大変ユニーク。日本には洗練されたマーケットがあり、 スタンダードのクオリティが世界でもトップクラスである点も日本のスタートアップの特徴」とコメントしていますが、東コレを見ても同じように「スタンダートのクオリティが高い」と感じます。ファッションデザイナーと産地とスタートアップによるイノベーションの合流、進めたいですね。いや、進めましょう!

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