「ユニクロ(UNIQLO)」は、東京・二子玉川の玉川高島屋S・C南館4階に20日にオープンする“地域密着型の大型店舗”「ユニクロ タマタカ店」を公開した。近隣の二子玉川ライズ ドッグウッドプラザ内にあった店舗を移転・増床するもので、オープンを記念した「ロンハーマン(RON HERMAN)」とのコラボレーションは開業前から話題になっている。丸々ワンフロアを使っており、売り場面積はドッグウッドプラザ時代の約1780平方メートルから、1.4倍の約2500平方メートル超へと拡張する。
「ユニクロ タマタカ店」には、いくつかの実験ポイントがある。高感度セレクトショップやインポートブランドなどが軒を並べる玉川高島屋S・C低層階の上質な雰囲気ともリンクするように、“スペシャリティストア”をテーマに店作りを行った。歴史ある施設ならではの天井高の低さをカバーするような工夫も随所に施している。
ベビーカーを押すファミリー層の来店も多いため、通路幅を通常以上にゆったりと確保。カテゴリーや商品の特徴、機能ごとに明確な配置にするとともに、何があるのかわかるキューブ型のサインを新たに導入。通常よりも棚の高さを控えたり透明のスケルトン什器を使うことで視認性を高めるとともに圧迫感を削減。「ユニクロ ユー(UNIQLO U)」や「ユニクロ:シー(UNIQLO:C)」などのコーナーは白の内装意匠を用いて、より主役である商品が見やすくクリーンなイメージを訴求している。スポットライトや細くて明るくてシャープなイメージを与えるLEDライトなど照明にも工夫の跡が見える。店内マップも多く掲出。これらの仕様により、長方形のフロアを1周200m程度でぐるりと回ると、ほぼほぼどこに何が配置されているのか把握できる、分かりやすく買いやすい店となっている。
770個の店舗受取ロッカー設置
店内で使用するマネキンはなんと300体!ユニクロの通常店舗では80体程度、大型旗艦店でも200体程度といわれる中で、圧倒的な体数を展開。スタイリング提案を強化するとともに、商品カテゴリーを分かりやすくアピールすることにつなげている。マネキンは直立型だけでなくさまざまなポージングのものもあり、空間に変化をもたらしている。
ファミリー層に加えて高齢客も多いこともあり、店内にはベンチなど休憩スペースも用意。レジ前のスペースや屋外テラス部分ではワークショップなども行う予定だ。オープン時には「UT」でコラボしている画家アンリ・マティス(Henri Matisse)のアートで窓ガラスを彩った。セルフレジも15台近く設置。ゆったりしたスペースで、会計時のストレスを軽減する試みになっている。
サービス面でのトライアルは、商品の店舗受取ロッカーだ。一部店舗では導入しているが、本格的な展開は川崎市民プラザ店、大森北店、越谷ヴァリエ店に続く4店舗目。ロッカーの数は770もあり、EC購入商品を店舗で受け取る場合に、店員を介した受取サービスと、ロッカーでのセルフ受取とを選べるようになっている。二子玉川駅前という立地もあり、ドッグウッドプラザ時代から店舗受取のオーダー数は多かったという。この店舗受取ロッカーは3月以降、国内30店舗に広げる計画もある。
タマタカ歴15年の「ロンハーマン」とタッグ
商品では地域コラボに力を入れている。その一つがセレクトショップ「ロンハーマン」とのコラボだ。同店は09年8月に東京・千駄ヶ谷に日本1号店をオープンし、10年3月に玉川高島屋S・C南館1階に2号店、かつ、初の商業施設内店舗として出店。14年3月に現在の玉川高島屋S・Cアイビープレイス内に単独路面店風の4層でカフェ併設型のストアに移転オープンした経緯がある。「ロンハーマン」のタマタカ進出15周年の節目の年に「ユニクロ」と協業。ともに地域を盛り上げようと意気投合した。
今回、「ユニクロ」と「ロンハーマン」のコラボ商品として、“エアリズムコットンクルーネックTシャツ”を販売する。ネックのリブ部分を通常よりも細くし、身頃のシルエットはストレートにするとともに着丈も長めにして、リラックス感のあるカリフォルニアテイストにアジャストした。白と黒の2色展開で、キッズ(110~150サイズ、990円)とメンズ(XS~XXL、1990円)と「ユニクロ」ならではの10を超えるサイズ展開を行うことで、自分の好みのフィット感を選ぶことができるようにしている。さらに、オープン記念で、1万円以上購入者には非売品の「ユニクロ」「ロンハーマン」コラボバンダナと、同じ柄の包み紙を使用したユニクロフラワーの花束をプレゼントする。
高島屋の「ローズちゃん」とも奇跡のコラボ!?
もう一つのコラボの目玉が、高島屋のシンボルであるバラをモチーフにしたマスコット人形&イラストのキャラクター「ローズちゃん」とのコラボだ。高島屋のショッパーに使用するバラの花輪にローズちゃんが寄り添うプリントのトートバッグなどに加えて、「ユニクロ」のショッパーを持つという“禁断”のデザインのTシャツなども登場している。
また、愛着のある服を大切に着続けるためのリペアやリメイク、自分だけのカスタマイズなどを施す「リ・ユニクロ スタジオ(RE.UNIQLO STUDIO)」も国内6店舗目、世界57店舗目として登場。プリントのカスタマイズ“UTme!”や刺しゅうサービスなどを提供するとともに、サステナビリティの取り組みを推進する。
他にも、スーツやシャツで豊富なサイズバリエーションの中から、⾝幅や袖丈、着丈を選べる“ユニクロ カスタムオーダー”や、グループの「プラステ」「コントワー・デ・コトニエ」のショップ・イン・ショップなども展開する。
地域と連携し継続的な成長を実現
上質空間でサービスも充実
海原和弘ユニクロ タマタカ店長は、「『地域密着』と『新しいユニクロを体現する店舗』という2つをコンセプトに店を作った。地域の皆様と連携して盛り上げながら継続的に成長を実現していく店舗を作っていくという意味合いを地域密着という言葉に込めた」と説明。
その象徴の一つが、「タマタカ ガイドブック」の発行だ。街で生きる人々や店舗や企業などを紹介していくもの。また、高島屋のローズちゃんや、地域でも人気の「ロンハーマン」、地元リコーのラグビーチーム『リコーブラックラムズ』やロイヤルホストやシェーキーズ、シズラーなどを展開しているロイヤルホールディングス、大正8年(1919年)に創業した紙器工房で二子玉川で貼箱専門店を営む「ボックス&ニードル(BOX&NEEDLE)」などとも“UTme!”で協業。売上げの一部を緑化支援を行う世田谷緑のトラスト基金に寄付する予定だ。
さらに、新しいユニクロの体現としては、「上質な空間を提供する。ゆったり買い物できるラウンジのような休憩スペースや、ベビーカーでもゆったり回れる幅広い通路、二子玉川地区で初めて導入するユニクロフラワーで生活に彩りと豊かな暮らしを提供していく」「愛着のある商品を大切に長く着ていただきたいという思いから生まれたリ・ユニクロのサービスを新たに展開する」と述べた。
デベロッパーである東神開発の玉川高島屋S・C事業本部の土屋久美氏は「皆様に支えられて24年に開業55周年を迎えた。55年前、何もなかったこの場所に地域のインフラとしてショッピングセンター作ったときには、対都心をテーマに、都心に行かなくても二子玉川で買い物が全部そろうというような買い物の場を提供できるように街づくりを行ってきた。それがコロナでお客さまのライフスタイルが大きく変わった。われわれもショッピングセンターの役割やあり方を見直すことが求められた。55周年を迎えるにあたり原点回帰し、地域の方々が愛着を持って楽しめる場、過ごす場を提供できるように街づくりを進めている」とコメント。
そうした街づくりの中で、「ユニクロのワンフロアでの出店は大きなプロジェクトの一つ」と続ける。「ユニクロは街になくてはならない存在。このタマタカ店はスペシャリティストアとしてゆったりした空間でさまざまなコンテンツをそろえている。ユニクロと地域の方々と今まで以上に二子玉川を盛り上げて行きたい」と意気込みを語った。