ヘアサロン「ダブ」やヘアメイク・スタイリストのマネジメント、キャスティング、デザインオフィス「ビタミンズ」を経営する八木岡聡・代表。1日30人以上の予約をこなし、多くの著名人を顧客に持つ。経営哲学やこれからの経営について聞いた。
WWD Beauty(以下、WWD):ヘアサロンを経営するうえで大切にしていることは?
八木岡聡(以下、八木岡):「ダブ」の強みはデザイナー系ブランド サロンであること。そのためには、業界内外問わず憧れられる存在でなければいけない。発信するヘアデザインやサロンの立地、内装、スタッフのファッション、客層などトータルのブランディングが求められる。多店舗化しながら、そのブランド力を維持していくより、目の届く範囲で店舗を展開し、「ダブ」のDNAを濃くスタッフに伝えていく。ブランドをより拡大していく以上にいつの時代でも進化し、その時代にフィットする経営が重要だと考えている。ただ、多店舗展開を否定しているわけではなく、そこには多くの問題や課題があるのは理解している。何店舗も出店して成功しているヘアサロンは素直にすごいと思う。僕にはできないこと。
WWD:「ダブ」の経営的な課題は?
八木岡:新規客の獲得にはSNS対策をさらに強化していく。今は、SNS を見て来店するお客さまが 増えている中で、新規客、顧客 のためにもしっかりと取り組む必要性が高くなっている。具体的にはSNSで作品を発信しやすいように、サロン内に撮影スペースを設ける予定だ。個人的には、SNSなどのデジタルな部分が発展しているからこそ、より専門的な技術や知識、それを生かしたプレゼンテーション技術や接客、その場でのコミュニケーションの重要性がさらに高まってくると考えている。
WWD:最近の面貸しサロンの台頭についてはどう考えている?
八木岡:日本のヘア業界は海外と比べて教育制度がしっかりとしていたからこそ、世界に誇れるほど美容の技術が高まってきた。面貸しサロンが一般的になると技術の継承が途切れてしまうので、日本のヘア 業界にとっては大きな損失になる。そこへの人材流出の対策としては撮影やヘアショーなどの、「ダブ」に いるからこそできるクリエイティブ活動を通して 、刺激を与え、面貸しサロンへの人材流出を防いでいくつもりだ。
WWD:今後のヘアサロンの経営は、どうなっていくと思う?
八木岡:日本のヘアサロンは今までクラス化がなかったため 、画一化している 。 ジャンルと料金のグレードによる個々のヘアサロンの違いがさらに進み、多様化すべき。似たような ヘアサロンだと安い方に流れていき、価格競争に陥り業界自体が疲弊してしまう。もっとヘアスタイルによるジャンルの違いや、料金によるグレードの違いが明確になれば、お客さまも選択の幅が広がり、ヘア業界全体も活性化していくはずだ。