
ここからは、今季のパリで感じられた3つのムードを掘り下げる。最も目を引いたのは、ビンテージや歴史の断片からヒントを得て、現代的に落とし込むアプローチの広がりだ。トレンドをけん引する「クロエ(CHLOE)」は、象徴的な1970年代調のボヘミアン・ロマンチックなスタイルを新たな視点で解釈。「ミュウミュウ(MIU MIU)」も、今季はクラシックな淑女スタイルにひねりを効かせた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年3月24日号からの抜粋です)
「ヴァレンティノ(VALENTINO)」
ミケーレの美学を今回はミニマルに
舞台は公衆トイレ。個室と共有スペースが同居する空間に送り出したのは、肌をあらわにするレースやチュールのボディーコンシャスなウエアを内に秘めた、ジャケットやコート、デニムのスタイル。二面性を物語るバイカラーの色使いが目立つ。オートクチュールから一転して、(まだまだ華やかだが)ミケーレ(Alessandro Michele)流のミニマルなムード。フリルやラッフル、リボンを使うロマンチックなムードが確立してきた。
「クロエ(CHLOE)」
過去と今が溶け合うロマンチックスタイル
「いかに過去をロマンチックに表現するかを考えた」というシェミナ・カマリ(Chemena Kamali)は、かつて愛したものと今日愛するものを融合。ギャザーやフリルを配したドレスやキャミソール、ブラウスに、コンパクトなビクトリアンジャケット、人工ファーやキルティングの暖かなアウター、シアーなロングスカートなどを合わせ、ボヘミアン・ロマンチックなスタイルを進化させている。20年前にヒットした“パディントン”バッグ(こちらの記事参照)も復活。ファーのしっぽ型チャームやストールをアクセントにした。
「ミュウミュウ(MIU MIU)」
古き良きレディーライクに違和感をプラス
ガーリーなスタイルを見せた半年前から一転し、古き良きレディーライクな着こなしに「ミュウミュウ」らしい違和感を加えた。「この困難な時代には、私たちの気分を上げてくれるフェミニニティーが必要」と語るミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)は、マスキュリンなウールコートやジャケットに柔らかなカーブを形作り、タイトなセーターには尖ったブラを合わせて胸を強調。腕にかけたファーストールやハンドバッグ、大ぶりのブローチとジュエリー、クローシュハット、ランジェリーなど女性らしさを象徴するようなアイテムが、スタイルのカギになる。
「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」
遊び心あるビンテージレイヤード
シフォンやレース、チュールなどの素材と、ドレープやパフ、フリル、垂れ下がるコードなどのディテールを多用するスタイルコードをプレイフルなレイヤードでモダンに再定義。今シーズンはビンテージライクなモヘアのニットやレザーブルゾン、グランジムードなネルシャツ、洗いをかけたジーンズなどを加えて、若い世代の期待に応えるとともにスタイルの普遍性を強調した。コンチョベルトなどカウボーイのムードがスパイス。