
毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年3月31日号からの抜粋です)
利川:2025-26年秋冬の東コレは成熟期に突入したブランドが、新たなエレガンスを提案したり、ファンに刺さりそうなものだけでなく、コマーシャルを意識したアイテムを発表したりなど、広がりを感じたシーズンでした。
鴨井:かつて「WWDJAPAN」の編集部員としてNYとミラノのコレクション取材をしていましたが、東コレ取材はほぼ初めて。デザイナーがやりたいことを貫く、かつての「どう着るの?」と思わせる非日常的なクリエイションではなく、「着たいな」「はやりそう」と購買意欲がわく幅広い提案が面白くて、素直に楽しめました。暖冬対策で軽やかな素材を多用するアイデアにも感心しました。印象的なブランドはどれでした?
「ハトラ」の初ショーがあたたかかった
利川:チュールなどを多用したかわいらしさに宿るパンク精神が魅力の「チカ キサダ(CHIKA KISADA)」が、ガーリーやスポーティーといった要素を盛り込んでいて、「どんな人にもなっていいんだ」というメッセージを受けました。彼女のパンクな部分を知らない人にも刺さるような、分かりやすくかわいいコレクションだったのがすごく印象的でした。「ハトラ」の15年目にして初のショーも、暗い空間に彩雲のようなグラフィックが浮かび上がってきて美しかった。静ひつで知的な世界観で観客を魅了していました。全てが終了したのは22時過ぎで、通常であれば会場から疲労のムードを感じることも少なくないのですが、フィナーレでも囲み取材でも拍手が鳴りやまず、あたたかな雰囲気でとても良かったです。鴨井さんはどうでしたか?
鴨井:私は事前号でインタビューした「ピリングス」かな。村上亮太デザイナーはニット工房を持ちたいという夢を抱いていて、「LVMHプライズ」グランプリをとればそれをかなえたいと話しているほど、手編みを大事に思っています。今回、全国のニットアトリエと協業する作り手のおばさまたちもショーに来ていて、何だかとってもほほ笑ましかったですね。ブランドを支えてくれる人たちとコレクションを発表するアットホームなムードも個人的にはうれしい東コレのシーンでした。