セレクトショップのパリゴを手掛けるアクセ(広島県尾道市、髙垣孝久社長)が力を入れる「ジャパンデニム(JAPAN DENIM)」 が好調だ。2023年3月にギンザシックス4階に開いた旗艦店は売り場面積が11.6坪ながら年間約2億円を売り上げる。店頭には常時約10ブランドと協業したアイテムが20型程度並び、価格帯はジーンズが2万円台中盤~3万円台前半、デザインスカートが3~5万円、デザインジャケットが4~8万円。客単価は約6万円、月坪売上高は150~200万円と好調だ。特に訪日外国人の来店が多くその比率は65~80%で、中でも中国からが最も多く訪日外国人全体の35~40%を占める。中国向けには中国版インスタグラム「REDBOOK」にオフィシャルアカウントを作り情報を配信している。
「ジャパンデニム」は広島県福山市が16年に「備中備後はデニムの産地」をPRするために始動した「備中備後ジャパンデニムプロジェクト」の一環で、同産地を拠点にするアクセが2018年に始動。福山市と岡山県井原市を中心とする備中備後地域で生産されるデニム生地を用い、同地域の縫製・加工業者と国内外のデザイナーとを組み合わせて世界に発信するもの。製品には各工程の工場名を明記してトレーサビリティを担保するほか、環境に配慮した素材や染色方法などにもこだわる。
現在の販路はギンザシックス店を除くパリゴ店頭とアクセのECサイトでギンザシックスの旗艦店と合わせると年間約3億円を売り上げる。好調の理由を「ジャパンデニム」のディレクターを務める高垣道夫アクセ専務取締役は「海外のお客さまは日本製デニムの付加価値を感じている。また、ブランドとのものづくりを進める中でブランド側にフィードバックを重ねて試行錯誤しながら、売れるデザインデニムづくりを目指している。結果的に1シーズンで消費されないデザインになり、シーズンを超えて売れ続けている」と胸を張る。パリゴはラグジュアリーからデザイナーズまで国内外のブランドを30年以上扱ってきており、デザイナーとのネットワークや店頭で動くアイテムなどのノウハウがある。
下げ札に事業者名を書いたことで新たな商売が始まっているという。「ブランドから直接生地や縫製工場にオーダーが入ったり、外国人からの問い合わせが増えていたりと聞く」と髙垣ディレクター。「プロジェクトを始めた理由は世界に誇れるデニム産地“備中備後エリア”の認知度を高めること。実は僕自身も詳しくは知らなかった。バイヤーとして各国のラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドを買い付ける中で、デニムの多くが日本製であることを知った。さらにその多くが備中備後産地で作られていた。生産者は守秘義務で訴求できない理由を知り、直接世界に誇れる技術を訴求したいと始めて、少しずつ成果が出てきた」と手ごたえを話す。
今後は「国内の複数の商業施設から出店オファーがあるので、積極的に出店する。立ち上げ間もなくコロナ禍に入り海外への卸を止めていたが再開する。越境ECも計画中だ」と意気込む。