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台北ファッションウイーク2025年秋冬、大手繊維企業が参加し環境配慮型素材をアピール

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  • グローバルなトレンド感で存在感を発揮した若手も
  • 台北ファッションウイークは革新的技術のショーケースに

台湾の文化部が主催する「台北ファッションウイーク」2025-26年秋冬シーズンが、3月26~30日に松山文創園区で開催された。今シーズンのテーマは、「ファッション・無限」。台湾のトップ繊維メーカーが開発した環境配慮型素材にスポットライトを当て、サステナビリティ分野での存在感を世界のバイヤーやメディアにアピールした。

文化部の王時思次長は、「台湾の強みである繊維企業においては、環境負荷を低減させる技術革新が進んでいる。国際的なサステナビリティの潮流の中で、その独自性をより強く発信していきたい。また、国内のデザイナーにも地元のすばらしい生地に目を向けてもらいたいという思いもあった」とコメントした。

初日のメインイベントでは、台湾の繊維メーカー6社と地元ファッションブランド6組がコラボレーションした合同ショーが実施された。それぞれのブランドが、パートナー企業の環境配慮型素材を用いたコレクションを披露した。

なかでも印象的だったのは、伝統文化とコンテンポラリーな感覚を融合したコレクションを見せた「ユーユーアイエヌ(UUIN)」。17年に始動した同ブランドは、参加ブランドの中でも期待の若手として注目を集めている。今回は、2024年パリオリンピック・パラリンピックで台湾の公式ユニホームも製作したニューワイドエンタープライズ(NEW WIDE ENTERPRISE)とタッグを組んだ。

デザイナーの劉子超(リウ・ズチャオ)は故郷の港町、基隆(キーロン)の歴史に着想を得た。劉は、「基隆港のユニークな風景への敬意を込めると同時に、アートとファッションを融合させた新しいビジュアル言語を提案したかった」と話す。ペットボトル由来のリサイクル生地を使用したワンピースには、台湾の水彩画家・倪蔣懷(ニ・ジャンファイ)によるやわらかなパステル調の風景絵画をプリントした。そこに重ねたダブルブレストジャケットは、優しいミントグリーンでルック全体を幻想的なムードにまとめつつ、強調したショルダーラインが現代的なエッジを加えている。

白シャツに合わせたロングコートとパンツのセットアップは、台湾で回収した古着をマテリアルリサイクルした生地を用いた。再生繊維特有の色とりどりの細かな粒が散りばめられた素材は上質感を演出するのに技がいるが、落ち感のある柔らかな生地とワイドシルエットの設計で上品な印象に仕上げた。

劉は、「この大舞台を通じて、ブランドの美学とデザインの価値を届けられることに魅力を感じている。今後も台湾のローカル文化とアートを軸に、モダンさと実用性を兼ね備えたデザインを世界の消費者に広めたい」と展望を語った。

ブランド設立13年目を迎えた中堅「ディーワイシーティーム(DYCTEAM)」は、大手繊維メーカーの遠東新世紀(Far Eastern New Century)が開発した、排気ガスを原料に活用したポリエステル生地といった革新的な素材を取り入れた。ニット素材の特性を生かした、流れるようなしなやかなシルエットのアウターが目を引いた。キルティングジャケットには、「強さ」や「希望」の花言葉を持つアイリスの花のモチーフをプリントし、未来に向かって力強く進んでいこうとするブランドの姿勢を表現。また、厚手のスポーティーなジャケットに、透け感のあるブラックのロングスカートでコントラストを効かせたルックや、深みのあるブルーとグレーの糸を織り交ぜたジャケットを主役にしたリラックスシルエットのルックなど、「都市生活者のためのファッション性の高い日常着」という持ち味を際立たせた。

デザイナーの趙之逸(ヂャオ・ヂーイー)は、「台北ファッションウイークは、服飾デザインのみならず観光資源や食、ライフスタイル、文化全般といった多面的な台湾の魅力を発信する重要な場だと信じている。私たちはここに毎シーズン参加することで、より多くの人々にこの島で生まれる創造の力を感じてもらいたい」と話した。

グローバルなトレンド感で存在感を発揮した若手も

最も若い熱気で包まれていたのは、初参加で単独ショーを開催した若手「インモーリス(INMORIES)」。会場には地元で人気のセブントゥーエイト(SEVENTOEIGHT)といったアーティストやインフルエンサーらも多く来場し、盛り上がりを見せた。デザイナーの蔡嘉桐(ツァィ・ジャトン)は参加を決めた理由について、「これまでファッション関連のイベントやコンテストなどには参加してきたが、ショーを通してブランドの世界観を表現することに挑戦してみたかった」と話す。

コレクションは芝生を敷いたランウエイや巨大なスクリーンに自然の風景を映す演出で、いやしや休息のメッセージを発信。オリーブグリーンを基調にしたデニムを中心とした、肩の力が抜けたストリートスタイルを披露した。メンズモデルが着るデニムのロングスカートや無骨な印象のオーバーサイズのドレスなどジェンダーレスな感覚が今っぽい。ゴーグルのようなアイウエアやブロック型のバッグなど、キャッチーなアクセサリーの提案も豊富だった。

台北ファッションウイークは革新的技術のショーケースに

「台北ファッションウイーク」は今年で6年目を迎えた。王文化部次長に手応えについて聞くと、「まだ成長のカーブを描けるほどの歴史はないが、徐々に右肩上がりに盛り上がっていると感じる。特に若い世代の間では、ECモールでの買い物が普及している。今後国内のファッション消費を支える層に向けて、実際にショーに足を運びファッションの楽しさを体感する機会を提供できている点は大きい」と話した。

今後については、「台湾では古着やコーヒーの豆かす、魚のうろこといった食料廃棄物などを回収して繊維に生かす技術が進んでおり、商業レベルで生産できるようになっている。加えて、デジタルパターンや3D試着といった製造工程におけるITテクノロジーの発展も台湾の強みだ。そうした最新テクノロジーのショーケースとしての機能も持たせていきたい」と展望を語った。

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