個人的な話で恐縮だが、子どものころから周囲のモノが不思議だった。道路はなぜアスファルトで覆われているのか、このアスファルトはどう作って敷き詰めているのか。窓ガラスはいつからこの形状になったのか、などの謎にとらわれていた。そうした疑問は大人になったら自然と解けると思っていたが、大半のことは今も分からないままだ。だが、幸いなことに、人間にとって最も身近な「着ること装うこと」に関しては仕事柄、少し理解できるようになった(気がする)。それがとても嬉しい。
ファッション&ビューティ業界を志望し、4月から足を踏み入れたニューカマーの人たちも、実は私みたいな人が多いのではないだろうか。業界に入る、とはつまりビジネスとして関わること。ビジネスとは、とにかく答えを出し続けることでもある。服は誰もが着るから、誰にでも売れる可能性があるわけで、可能性はものすごく大きい。そして可能性が大きい分だけ、謎も多い。今回の特集は謎に答えるわけではないが、謎を解く最初の手がかりになるはずだ。フレッシャーズの皆さん、謎だらけで可能性と魅力に満ちたファッション&ビューティ業界にようこそ。(この記事は「WWDJAPAN」2025年4月7日号からの抜粋です)
1. 知っておきたい日本の繊維産地

日本の繊維製造業を特徴付けるものの一つが分業体制だ。中小企業が多く、合繊やコットン、ウールなど素材によって使用する機械や染料、工程が細かく異なるため、素材やアイテムのカテゴリーなどでそうした中小企業が集まって産地を形成してきた。中小企業の集積体である産地は合理化を阻む要因ともいわれるが、細かなノウハウをすり合わせることで最終的に大きな差別化商品の開発につながることも多い。合繊テキスタイルの産地である北陸は、産地全体で今も世界トップ水準のレベルを保持しており、海外の大手スポーツやラグジュアリー企業へのテキスタイルの供給元になっている。海外で高い知名度を持つ福山と倉敷のデニム、ブランド確立に成功したタオルの今治も要チェックだ。
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