米国の相互関税、いわゆる「トランプ関税」が本日、発動した。米国へ製品を輸出している企業やブランドは対応を迫られている。相互関税率は繊維・アパレル関連の主要国だと日本が24%、EU20%、ベトナムが46%、ミャンマーが44%、カンボジアが49%、インドネシアが32%、タイが36%になる。中国に対しては報復関税の発動を言及しているが、現時点では84%になる。化学品などのごく一部で免除される品目はあるものの、繊維・アパレル製品はこれらの関税が適用される。
北米で1350億円、全体の約2割を売り上げるアシックスは、米国販売向けのシューズ生産比率はインドネシアで60%、ベトナム25% カンボジア15%。販売への影響や価格改定など「詳細な影響と対策については精査中」とする。米国に71店舗の「ユニクロ」を出店するファーストリテイリングも「調査中」という。
デニム生地の輸出先として8〜9割、全体の売り上げ全体の4割近くを米国向けが占めるカイハラは、「現時点での影響はわかりかねる」としながらも、「直接米国へ生地輸出している数量はそんなに大きくないが、(出荷先の)ベトナム・カンボジアなど縫製国への関税も高い。今後影響が出てくると思われる」という。
一方、日本製のシャツとして人気のある鎌倉シャツは「アメリカとのビジネスは越境ECで対応しているため800ドル(約11万6800円)まで関税がかかっていないが、今後はそのバーが下げられる可能性もある。一方、オーダースーツでは800ドルのバーを超えているが、現時点での上代の設定が安いと感じているので、関税分を乗せる値上げ路線も検討している」。
今は米国企業の出方を注視
今後はどうなるのか。米国市場に直接製品を輸出している日本企業はそう多くはない。日本繊維輸出組合によると、2024年の衣料品の米国輸出額は6158万ドル(約89億円)に過ぎない。テキスタイル輸出や第三国で縫製し、米国に輸出しているグローバル企業も存在するものの、現段階では様子を見るという段階だ。
スタイレム瀧定大阪の瀧隆太社長は、「当社の場合、米国市場のビジネスは輸出全体の10%ほど、全体だと数%に過ぎず、会社全体として大きな影響があるわけではない。ただ、今回の”トランプ関税”ではベトナムやカンボジアなどのアパレルの輸入元の地域が軒並み高関税が適用されることになるが、アパレル製品の場合、米国生産を増やすというのは現実的ではなく、仮にそのまま適用すれば物価への影響がかなり大きい。現時点では米国ブランドからは当社に直接のリアクションはなく、動向を注視しているという段階だ」との見方を示す。
アパレルの場合、米国生産を増やすことが現実的でない以上、”トランプ関税”の影響を最も大きく受けるのは、米国のアパレル企業や小売店になる。カイハラも「米国内でインフレが加速し消費が冷え込むことによる影響が出ないかを懸念している」と消費の冷え込みへの懸念を示す。
中国発の越境ECにも関税
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