1990年代後半から2000年代前半にかけて起こった“カリスマ美容師ブーム”の影響もあって78〜84年生まれの美容学生が大幅に増加した。その世代が今ではサロンの中心的な存在となり、業界誌の撮影やヘアショー、セミナーの講師、コンテストの審査員などを多くこなし、ヘア業界を活性化させる存在となっている。
美容学生が大幅に増加したのが98〜04年。一般への美容師の認知度を高めた90年代後半〜00年代前半にかけての“カリスマ美容師ブーム”の影響が大きい。美容専門誌「コワフュール・ド・パリ・ジャポン」の森京都・編集企画部長は「カリスマ美容師ブームは美容師の地位向上に貢献し、彼らに憧れて美容師の志望者が増えたのは事実」と分析する。一時はなりたい職業でも上位にランクインしていた美容師だが、最近は労働環境の問題や離職率の高さ、将来への不安などが取り上げられ、敬遠する若者も多い。以前のようにカリスマ美容師への憧れよりは、現実的に判断する人が増えてきている。
今は目指す美容師像も多様化していて、かつてのように「売り上げを上げて独立する」といった1つの美容師像を追い求めるのではなく、自分に合った美容師像を追い求める時代になってきている。業界の枠を超えてファッションやカルチャーとの関わりを強める人もいれば、純粋に技術やデザインを追求する人、海外で美容師をしていた人など、さまざまな美容師人生を歩んでいる。美容師人生には正解はなく、彼らのように自由な発想で美容を楽しむ美容師が増えれば、さらにおもしろい業界になるはずだ。
美容師は技術職でもあり、デザイナーでもあり、接客業でもある。そのため、アシスタント時代に求められることは多い。つらいことが多かったが、それを乗り越えられたのは「美容が好き」という強い気持ちがあったからだという美容師も多い。
近年は業界内では「働き方」への注目が高まっている。特に女性美容師は結婚、出産を機に辞める人が多く、今回取材した美容師はそういった現状に問題意識を持っていて、「女性が長く働ける職場作り」を目指している。その発想がスタンダードになってくると、働き方の幅が広がっていき、美容師を志す人も増えてくるだろう。