前回は母親と、彼女に反発しながらも心からは憎むことができない少年の本質を描いた「J.W.アンダーソン」。母親のチープなブラウスを借りてきてしまったような少年像を描き、ロンドンメンズのフロントランナーに輝いた。
このブランドの、性差を超えるスタイルは今シーズンも健在。今回描いた男性&女性像は、変態貴族と強情な御婦人。ファーストルックは、ハリのあるフランネルを用いた、プルオーバータイプのトップスとショートパンツ。ただ、どちらにもたっぷりのフリルが加えられ、シルエットはかなりガーリー。ショートパンツはバブル期のギャルが履いていたようなマイクロミニ丈だし、トップスは次第にチューブトップへと変わっていく。素材は伝統のサヴィル・ロー。プロポーションは、夢見る乙女のようにフワフワ。マイクロミニという丈の長さやぺプラムなど、スタイルの女性的な部分を強情なまでに貫くと、結果、見る者を「ギョッ」っとさせる変態チックなスタイルが完成する。テーマを説明すれば、きっとこんなカンジなのだろう。よくよく眼を凝らせば、ほとんどのトップスには、胸元にV字のタックが刻まれている。きっと、女性の“谷間”に相当する膨らみを描こうとしたものだ。
もちろん、これは万人にウケるスタイルではない。でも、ノースリーブのコートの下に、切りこみポケットを加えたチューブトップをコーディネイトし、手を突っ込んで闊歩するモデルは、不思議と新たなドレスコードを自信満々に着こなしている男性のようにも見える。新たなドレスコードに挑戦する姿勢は、他のどのデザイナーよりも積極的なものだ。