ミッシェル・オバマ米大統領婦人が2期目の大統領就任祝賀パーティで再び「ジェイソン・ウー」のドレスを選んだり、春のキャンペーンモデルに40代モデル、ステファニー・シーモアを起用して話題になったりと、30歳のジェイソン・ウーが作るラグジュアリーな服は、成功を収めたアメリカ女性たちの間で明確な評価を得ている。ニューヨークで一番技術が高いと言われるアトリエで作るメイド・イン・アメリカの服のクオリティは、パリのクチュールサロンの仕事に匹敵するといっても過言ではないだろう。ただし、成熟した年代の女性たちがウーの服を支持する理由は、クオリティの高さだけでない。「ジェイソン・ウー」が持つ“可憐さ”が、成功したパワーウーマンの心に響いているのだろう。
2013-14年秋冬コレクションのショー会場には、大きくて繊細なシャンデリアが飾られた。冒頭は複数の上質素材を組み合わせて作るカジュアルなアイテム群。いずれもウエストをきゅっと締めて、丸みのある腰のラインを出している。クールになりがちなブラックサテンのトレンチコートは部分的にツイルやベルベットで切り替えることで表情を豊かにして、さらにポケットだけ毛足の長いフォックスファーとすることで愛らしさをプラス。同じ素材のジャケットとコートドレスには、禁欲的な小さな白襟のコットンシャツを併せることで少女の一面をのぞかせる。
真っ白なミンク・フォックスのファーコートはともすれば“成り金風”に陥るが、ウーの手にかかると、愛らしいぬいぐるみのような仕上がりとなる。身体にぴったりとしたニットは背中にジッパーを付けるなど、フィット感と着心地への細かな配慮は着る人には伝わるものだ。
中盤のフェルトやダッチェスサテンのミリタリーコートやジャケットは、鮮やかな赤や明るいカーキといった色を選択。米国での主力アイテムであるドレスは、スネークスキンとスネークプリントのシフォンを併せたミニドレスや、真っ白なアコーディオンプリーツのドレス、スキニ—パンツに合わせる真っ赤なシルクジョーゼットのロングドレスなどいずれもドラマティック。黒革のベルトやグローブ、でフェティッシュなアクセントをプラスしている。