ニュージーランドを拠点に、ライフスタイル系のコンセプトストア「アン アスチュート アッセンブリー(AN ASTUTE ASSEMBLY)」を手掛けるのが、由華オシャネシー(Yuka O'Shannessy)さんだ。
日本への留学経験もあるグラフィックデザイナーの夫と、2人の娘と暮らす由華さんは、1979年千葉県生まれ。小学生からマラソン選手として活躍し、高校卒業後はオリンピックを目指して実業団(三井海上陸上部)に進んだ元アスリートだ。同期には渋井陽子がおり、オリンピックメダリストの高橋尚子も同世代。国内外の大会に出場し、ハーフマラソンで日本最高記録(当時)を打ち立てたこともある。しかし、足を故障し手術した後、22歳の若さで引退せざるを得なかった。新たな人生をスタートするに当たり、「現役時代、記録を出したリスボン(ポルトガル)をはじめ、多くの国際大会に出ていた際、英語が母国語ではない方々も普通に英語を話していました。コミュニケーションの幅が広がるだろうと思い、まずは英語を学ぶために、友人のいたニュージーランドに留学することを決めました」。その後、AUT(オークランド・ユニバーシティ・オブ・テクノロジー)でファッションデザインを専攻。「ニュージーランドには歴史がない分、トレンドを追ったり、真似をするよりも、いかに自身のオリジナルを追求するかを大切にすることを学んだ」という。
2011年には、ウィメンズブランド「ユカ&トリスタン(YUKA & TRISTAN)」をスタートした。きっかけは、東日本大震災だった。2歳の長女を育てながら、「自分の手で義援金を集められたら」という想いを込め、ファーストコレクションでは"ジャパンエイド"をコンセプトに、モダンな日の丸モチーフのドレスなどを作成した。その後も、国産(ニュージーランド産)と、天然素材にこだわりながら、ドレープ感の美しいシャツやワンピースなどを中心にコレクションを作成。ミニマルで洗練されていながらも、左右アシメトリーのデザインや、前後や上下など、一枚で何通りにも着られるような遊び心も持ち合わせており、「ワードローブとして活躍する、10年たっても着られる服」を丁寧に作り上げている。デザインはもちろん、自らパターンを引き、縫製し、クリエイターの友人・知人などに声を掛けて、自らディレクションしてカタログ撮影まで手掛けているのも特徴だ。7シーズンを経て、現在は小休止中。
代わって力を入れているのが、「アン アスチュート アッセンブリー」だ。"手のかかった仕事を重ね合わせる"という意味を込めつつ、日本の職人ものやハイクオリティーなものをライフスタイルとともに提案するキュレーションストアで、友人の下山陽子さんと共に2013年に設立。南部鉄瓶や波佐見焼、豆皿などを中心に、ウェブストアで商品を販売。さらには、オークランドのショールームと、ポップアップストアでのイベント・プロモーションを中心に、日本の良品やライフスタイルへの理解を深める活動している。
「ニュージーランドは小さな国で、やりたことがやれる場所。外国人やヒッピー、LGBTの人々も多く、ダイバーシティも進んでいる。エシカル先進国で、オーガニックも当たり前のように定着しているし、クオリティー・オブ・ライフの意識も高く、アートに投資をする人々も多い。クリエイターなどモノ作りをする人々のコミュニティーも発達しているし、美味しい食材や日本でも支持されそうなオシャレなパッケージのアイテムもたくさんある。今後は日本の職人技や良品をニュージーランドに紹介する一方で、ヒツジや自然だけでない本物のニュージーランドを日本の人々に知ってもらえるような架け橋になりたい」と話す。早速、今春日本に帰国した際には、東北や瀬戸内なども回り、新しい取引先などの開拓も積極的に行うとともに、日本の優良百貨店やセレクトショップやライフスタイルストアなどを視察。「次に来日するときには、『ニュージーランドフェア』の企画書を持ってきます(笑)。また、ニュージーランドにいらっしゃる際には、クリエイターの友人、知人なども紹介できるので、声を掛けてもらえれば」とニッコリ。