まるでカフェの店員が身につける短いエプロン"サロン"のように、パンツの腰周りにあるのは、スーツの裾!「メゾン マルタン マルジェラ」は、こんな風に、ある洋服に別の洋服の一部を加え、レイヤードのトロンプルイユ(だまし絵)に挑戦した。
"スーツの裾"は、きっとそれ単体で見てしまうと、かなり違和感のあるアイテムだ。しかし、それをレザーベルトでパンツにくっつけてしまうと、不思議とその違和感は薄れ、なんだか「アリ」な気持ちにさえなってくる。確かにスーツは窮屈だ。そして、その上にレザーのステンカラーコートなどを羽織ってしまうなら、スーツなんて裾さえチラリと覗かせることができれば、暑苦しくなくていいのかもしれない。そんな雰囲気さえ感じさせる。そして、この丈の短いラップスカートのようなアイテムは、「もしかしたら『マルジェラ』流の、女子化するメンズ服というトレンド」の具体例なのでは?という気分にさえなってくる。不思議なアイテムだ。
後半になると、"サロン"のようなエプロンは、ほかの洋服に比べ随分"くたびれた"印象に。実は、この"くたびれた"が、今シーズンの「マルジェラ」のキーワード。裾に手の込んだビーズをあしらったオーガンジーを加えたジレは、目を凝らして見ると、"くたびれた"ジャケットの袖がもげ、ボタンもいつのまにか無くなってしまったようなアイテム。Tシャツには、長年、安っぽいハンガーにかけっぱなしにしてしまったせいでくっついた"ハンガーのサビ"をトロンプルイユでプリントしている。"くたびれた"というテイストを盛り込むことで、「マルジェラ」らしい男クサさは維持しながら、ラップスカートのようなフェミニニティさえ感じさせるアイテムを同居させた。
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